日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

妊娠時のリスク/授乳中の安全性  (2024/10/29 更新)

妊娠時のリスク

A-妊婦において十分な研究が行われており,危険性なし

B-動物の生殖試験では胎児への危険性はないが,妊婦での比較試験はない

C-動物の生殖試験で胎児に対する副作用が認められた.ヒトでの比較試験はない.有用性が危険性を上回る可能性がある場合に使用されうる

D-ヒト胎児への危険性のエビデンスがある.有用性が危険性を上回る可能性がある場合に使用されうる

X-動物実験でもヒトでも胎児の異常が示されている.妊婦での危険性は明らかに有用性を上回る

授乳

薬剤
FDAリスク区分(アルファベット表示は旧区分)
授乳中の使用
抗菌薬
アミカシン
D
おそらく安全,乳児の消化管毒性をモニターする
アモキシシリン
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
アモキシシリン・クラブラン酸
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
アンピシリン
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
アンピシリン・スルバクタム
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
アジスロマイシン
B
安全,乳児の消化管毒性をモニターする
アズトレオナム
B
安全,乳児の消化管毒性をモニターする
セファクロル
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
Cefadroxil
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セファゾリン
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフジニル
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
データはないが,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフジトレンピボキシル
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
データはないが,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフェピム
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフェピム/Enmetazobactam
セフェピム:ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
Enmetazobactam:データなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフィデロコル
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフィキシム
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフメタゾール
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
データなし
セフォペラゾン
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフォペラゾン・スルバクタム
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフォタキシム
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
Cefotetan
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
Cefoxitin
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフピロム
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
データなし
セフポドキシムプロキセチル
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
Cefprozil
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
Ceftaroline
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
データはないが,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフタジジム
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフタジジム/Avibactam
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
Ceftibuten
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
Ceftbiprole medocaril
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
データはないが,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフチゾキシム
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフトロザン・タゾバクタム
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフトリアキソン
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフロキシム
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セフロキシムアキセチル
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
セファレキシン
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
クロラムフェニコール
C
使用を避ける
シプロフロキサシン
C
投与後3~4時間は授乳を避ける,乳児の消化管毒性をモニターする
クラリスロマイシン
C
安全,消化管毒性をモニターする
クリンダマイシン
ヒト:妊娠第2/3期での使用で毒性のエビデンスなし.第1期の使用についてはデータが不十分.
動物:毒性のエビデンスなし.
可能なら使用を避ける,用いる場合は乳児の消化管毒性をモニターする
Cloxacillin
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
コリスチン(ポリミキシンE)
C
おそらく安全だが,モニターは必要.データは少ない.
Dalbavancin
ヒトでのデータなし,ヒト曝露の3.5倍でラットに毒性
おそらく安全だが,モニターは必要.参照できるデータはない.
ダプトマイシン
B
おそらく安全だが,モニターは必要.データは少ない.
Delafloxacin
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
データなし,使用を避ける
Dicloxacillin
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
ドリペネム
B
おそらく安全だが,モニターは必要.参照できるデータはない.
ドキシサイクリン
妊娠第2/3期では,永久歯の変色や骨成長阻害のリスクのため避ける.第1期に使用した場合に実際に催奇形性があるかどうかについてはエビデンスがないが,リスクがないと結論付けるのに十分なデータはない.
短期間の使用なら安全,乳児の消化管毒性をモニターする
Eravacycline
 妊娠第2/3期では避ける
治療中および最終投与から4日は授乳を避ける.
Ertapenem
ヒト:データ不十分
動物:毒性なし
安全,乳児の消化管毒性をモニターする
エリスロマイシン
B
安全,乳児の消化管毒性をモニターする
フィダキソマイシン
ヒト:データ不十分
動物:毒性なし
おそらく安全だが参照できるデータはない
Flucloxacillin
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
安全,乳児では消化器毒性をモニター
ホスホマイシン(経口)
【注】ホスホマイシン 経口は米国ではFosfomycin tromethamineであり,日本のホスホマイシンカルシウムとは異なる.
B
おそらく安全だが,モニターは必要.データは少ない.
ホスホマイシン(静注)
ヒトでのデータなし.動物での毒性エビデンスなし
乳汁中への分泌は低量.おそらく安全だが乳児の消化管毒性をモニターする,ただしデータは少ない.
フシジン酸

安全性は確立されていない,使用を避ける
ガチフロキサシン
C
乳児の消化管毒性をモニターしたうえで,短期間の使用なら安全だが,可能なら避ける
Gemifloxacin
C
乳児の消化管毒性をモニターしたうえで,短期間の使用なら安全だが,可能なら避ける
ゲンタマイシン
D
おそらく安全,乳児の消化管毒性をモニターする
イミペネム・シラスタチン
C
安全,乳児の消化管毒性をモニターする
イミペネム/シラスタチン/レレバクタム
ヒトでの十分なデータはない:動物では胎芽胎児毒性のエビデンスがある
安全性は確立されていない.使用を避ける
イセパマイシン
D
安全性は確立されていない,使用を避ける
Lefamulin
胎児障害を起こしうる(動物研究での毒性に基づく)
使用を避ける:治療期間およびその後2日は搾乳し廃棄する
レボフロキサシン
C
投与後4~6時間は授乳を避ける,乳児の消化管毒性をモニターする
リンコマイシン
C
安全性は確立されていない.使用を避ける.
リネゾリド
ヒト:毒性のエビデンスなし
動物:マウスでヒトの6.5倍の曝露で胎芽・胎児死亡.
おそらく安全だが消化管毒性モニターは必要.乳児で授乳を通じて吸収された薬剤の血清中濃度は非常に低いと考えられる.
Loracarbef
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
データはないが,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
メロペネム
ヒト:リスクを確定するだけの十分なデータはない
動物:毒性のエビデンスなし
おそらく安全だが,モニターは必要.参照できるデータはない.
メロペネム/Vaborbactam
ヒトでのデータなし,動物で毒性
おそらく安全だが,モニターは必要.参照できるデータはない.
Methenamine
妊娠初期での安全性は確立されていないが,第3期では安全であろう.動物での毒性のエビデンスはない
おそらく安全だが,モニターは必要,ただしデータは限られている
メトロニダゾール
ヒトでの研究はリスクなしを示唆している(ただし最終的に確定はできない).動物での毒性エビデンスなし
※ACOGは,
G. duodenalisおよびE. histolyticaによる重症疾患の妊婦での使用を許可している
データも意見も一貫していない.静注/経口治療は避けたほうがよい.局所/膣内の治療は安全だろう.
ミノサイクリン
D
短期間の使用なら安全,乳児の消化管毒性をモニターする
モキシフロキサシン
C
乳児の消化管毒性をモニターし,短期間の使用なら安全だが,可能なら避ける
Nafcillin
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
データはないが,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
Netilmicin
D
安全性は確立されていない,使用を避ける
Nitrofurantoin
妊娠38~42週,分娩中または分娩の急激な開始および生後<1ヵ月の新生児では禁忌
乳児が<8日齢またはG6PD欠損(いずれの年齢でも)の場合は避ける
オフロキサシン
C
投与後4~6時間は授乳を避ける,乳児の消化管毒性をモニターする
Omadacycline
妊娠第2/3期では避ける
治療中および最終投与から4日間は授乳を避ける
Oritavancin
ヒトでのデータなし,動物での毒性のエビデンスなし
おそらく安全だが,モニターは必要.参照できるデータはない.可能なら避ける.
Oxacillin
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
ペニシリンG
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
ピペラシリン
十分なヒトでのデータなし.動物では胎児毒性のエビデンスあり.
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
ピペラシリン/タゾバクタム
十分なヒトでのデータなし.動物では胎児毒性のエビデンスあり.
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
Penicillin VK
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
Pivmecillinam
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.乳児の消化管毒性をモニターする.
Plazomicin
アミノグリコシド系薬は胎児の障害に関連する.この薬に関するデータはない.
おそらくは安全だが,乳児の消化管毒性をモニターする
ポリミキシンB
C
局所投与なら安全(全身投与に関するデータはない)
Quinupristin/Dalfopristin
B
おそらく安全だが,モニターは必要.参照できるデータはない.可能なら避ける
Rifamycin SV
ヒトでのデータなし,動物では毒性
データはないが,おそらく安全(経口投与後の全身性吸収がほとんどないため)
リファキシミン
C
おそらく安全だが,モニターは必要.参照できるデータはない.可能なら避ける.
Sarecycline
使用しない(胎児障害,歯牙変色,骨成長障害)
データなし,使用を避ける
テジゾリド
十分なヒトでのデータなし.マウスおよびラットで胎児成長毒性
おそらく安全だが,モニターは必要.参照できるデータはない.可能なら避ける.
Sulbactam-Durlobactam
Sul:ヒトまたは動物での毒性のエビデンスなし
Dur:ヒトでのデータなし.マウスでの骨格変形のエビデンスがある.
授乳中の乳児あるいは乳汁分泌に対する影響についてのデータなし.Sulbactamは低濃度で乳汁中に移行するが,Durlobactamについてのデータはない.
Temocillin
ヒトおよび動物での毒性のエビデンスなし
データなし
Telavancin
C
おそらく安全だが,モニターは必要.参照できるデータはない.可能なら避ける
Telithromycin
C
おそらく安全だが,モニターは必要.参照できるデータはない.可能なら避ける
テトラサイクリン
D
短期間の使用なら安全,乳児の消化管毒性をモニターする
チゲサイクリン
ヒト:胎児毒性の可能性
動物:胎児毒性
安全性は確立されていない,使用を避ける
スルファメトキサゾール・トリメトプリム
C
未熟児で核黄疸のリスクがある.乳児がG6PD欠損なら避ける.
トブラマイシン
D
おそらく安全,乳児の消化管毒性をモニターする
バンコマイシン
C
モニターすれば安全
抗菌薬(その他)
Bezlotoxumab
ヒトまたは動物でのデータなし
データなし.ただし乳汁中濃度はおそらく非常に低く副作用は予想されない.授乳中の母親での使用は許容される.
抗菌薬(配合剤)(H.pylori
Pylera
禁忌
安全性は確立されていない,使用は避ける
Talicia
推奨されない
安全性は確立されていない,使用は避ける
ボノプラザン/アモキシシリン/クラリスロマイシン
トリプルパック:推奨されない
デュアルパック:データなし
安全性は確立されていない,使用は避ける
抗真菌薬
アムホテリシンB
B
おそらく安全だが,参照できるデータはない
Anidulafungin
ヒトでのデータなし;動物では胎児毒性-
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.
カスポファンギン
ヒトでのデータは不十分.動物でのデータは胎児毒性の可能性を示唆する
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.
Efinaconazole
ヒトでのデータなし.ラットでは通常用量以上の皮下投与でのみ毒性,
データなし.乳汁中で検出可能な濃度になる可能性はない.
フルコナゾール(1回投与)
可能なら避ける,特に妊娠第1期で高用量(6~12mg/kg/日)を長期に使用することは避ける.
低用量(たとえば,150mg1回)での流産や先天性異常のリスクは不明.CDCはカンジダ外陰腟炎に対する局所アゾール薬を推奨している.

安全だが,モニターは必要
フルシトシン
C
安全性は確立されていない,使用を避ける
Griseofulvin
X
安全性は確立されていない,使用を避ける
Ibrexafungerp
禁忌(動物で胎児障害)
データなし
イサブコナゾール
ヒトでのデータなし;動物で胎児障害
使用を避ける
イトラコナゾール
ヒトでのデータなし;動物で胎児障害
参照できるデータはほとんどない,可能なら避ける
ケトコナゾール
C
参照できるデータはほとんどない,可能なら避ける
ミカファンギン
C
安全性は確立されていない,使用を避ける
Oteseconazole
禁忌
禁忌
ポサコナゾール
動物でのデータでは胎児障害の可能性がある.ヒトでのデータは不十分
安全性は確立されていない,使用を避ける
Rezafungin
ヒトでのデータなし,動物での毒性のエビデンスなし
ヒトでのデータなし,ラットでは乳汁中に存在,可能なら避ける
テルビナフィン
B
参照できるデータはほとんどない,可能なら避ける
ボリコナゾール
胎児障害を引き起こす可能性あり.妊婦でのボリコナゾール使用について参照可能なデータはない.治療中は有効な避妊を行うよう指導する.動物では胎芽死亡,胎児毒性,催奇形性のエビデンスがある.
参照できるデータはない.母親にボリコナゾールを望まれたら,授乳を中止する理由にはならない.代替薬の方が望ましいかもしれない.
Mycobacterium
ベダキリン
ヒトでのデータは不十分,動物では毒性のエビデンスなし
安全性は確立されていない,使用を避ける
Capreomycin
C
おそらく安全,乳児の消化管毒性をモニターする
クロファジミン
C
母乳がピンクに着色する場合がある.おそらく安全だが可能なら避ける.
サイクロセリン
C
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
ジアフェニルスルホン
C
安全だが乳児がG6PD欠損なら避ける
デラマニド
ヒトでのデータはない.動物では毒性
安全性は確立されていない,使用を避ける
エタンブトール
'安全'
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
エチオナミド
C
おそらく安全だが,モニターは必要.データは少ない.可能なら避ける.
イソニアジド
C
安全だが,母子ともにピリドキシンを併用する
パラアミノサリチル酸
C
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
Pretomanid
ヒトでのデータなし,ラットで着床後流産が増加
データなし
ピラジナミド
C
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
リファブチン
B
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
リファンピシン
ヒト:良質な対照研究はないが,催奇形性はなさそうだ.
動物:げっ歯類で催奇形性,ウサギで胎芽毒性
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする.母乳が黄,オレンジ色,赤,茶色に染まることがある.
Rifapentine
C
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
ストレプトマイシン
D
おそらく安全,乳児の消化器毒性をモニターする
サリドマイド
X
安全性は確立されていない,使用を避ける
抗寄生虫薬
アルベンダゾール
C
データは限られる.WHOによれば1回投与は安全と考えられる.
アルテメテル・ルメファントリン
CDCとWHOは全妊娠期間で推奨している.重大な先天性欠損,流産,妊婦または胎児への有害作用の増加はない.Malar J 19: 144, 2020Lancet Infect Dis 20: 943, 2020
ヒトでの乳汁中分泌のデータはないが,ラットではアルテメテルおよびルメファントリンの移行があるところから,ヒト乳汁への移行もあると考えられる.
Antimony, pantavalent
スチボグルコン酸ナトリウムのヒト妊婦での安全性に関する研究はない
  
Artesunate静注
妊娠のどの時期でも使用可(救命の可能性)
安全性は確立されていない
アトバコン
ヒトではデータ不十分.動物では毒性のエビデンスなし
データは限られる.特に乳児の体重5kgならおそらく安全.
アトバコン・プログアニル
C
データは限られる.特に乳児の体重≧5kgならおそらく安全.
Benznidazole
動物研究では胎児障害リスクが示唆される.妊娠可能性のある女性には妊娠検査が推奨される.
乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.授乳中の母親での使用は許容される.
Chloroquine phosphate
C
おそらく安全だが,モニターは必要.データは少ない.可能なら避ける.
Dihydroartemisinin/Piperaquine
ヒトでのデータは不十分,使用を避ける
データなし.使用を避ける. 
Eflornithine
C
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
Fexinidazole
ヒトでのデータなし.ラットおよびウサギで通常用量以上で毒性のエビデンスがある.
データなし,可能なら避ける
イベルメクチン
リスク区分C.参照できるデータ(限られている)では,集団予防キャンペーンで偶然に投与を受けた妊婦からの産児で,非投与の妊婦からの産児との比較で先天的異常に差はなかった.WHOは,イベルメクチンを使用する集団予防キャンペーンでは妊婦を除外している.しかし,感染のある妊婦での治療のリスクは,治療しない場合の重症化リスクとのバランスで考慮されるべきである.
乳汁中への分泌される濃度は低い.母親の重症化リスク(無治療の場合の)が乳児のリスクより上回る場合にのみ使用する.
メベンダゾール
WHOは妊娠第2,3期でのメベンダゾールの使用を認めている.CDCは,感染により妊娠が損なわれる場合に第3期での使用の考慮を示唆している.
乳汁中分泌に関するデータなし.WHOはメベンダゾールを授乳中にも使用してよい薬剤に分類しており,授乳中の女性での使用を認めている.
メフロキン
B
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
Miltefosine
D
安全性は確立されていない,使用を避ける
Moxidectin
ヒト:データ不十分
動物:胎芽/胎児毒性なし
安全性は確立されていない.可能なら使用を避ける.
Nifurtimox
禁忌だが,レスキュー治療としてHATへの使用が必要な場合もある
HAT治療中も授乳を続ける
Nitazoxanide
B
妊婦での使用のデータは限られており,胚・胎児へのリスクは不明. ベネフィットがリスクを上回る場合に使用すること
母乳中への排泄は不明.使用には注意が必要
パロモマイシン
データは限られている.吸収されないので,胎児リスクは低い.
データはないが,乳汁中への移行の可能性は低い.妊婦のジアルジア症に広く使用されている.
ペンタミジン
妊婦でのデータは限られている.予想される有用性が胎児に対するリスクを上回る場合にのみ使用する.
乳汁中への移行は不明.WHOはペンタミジンを授乳中に使用してもよい薬剤に分類している.
プラジカンテル
B
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
プリマキン
妊婦では避ける(胎児がG6PD欠損の場合は溶血の危険がある)
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
Pyrantel pamoate
ヒトでのデータは限られている.動物での毒性のエビデンスはない.一部の専門家は使用を許容している.
安全性は確立されていない.一部の専門家は使用を許容している.
Pyrimethamine
C
安全だがモニターは必要
Pyronaridine/Artesunate
可能なら,妊娠第1期での使用は避ける(データなし)
安全性は確立されていない
Quinacrine
ヒトでのデータなし;ラットでは胎児死亡リスクが増大
データなし.使用を避ける.
キニジン
C
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
Quinine
X
おそらく安全だが,乳児がG6PD欠損なら避ける
Secnidazole
ヒトでのデータはない.動物では安全.
安全性は確立されていない,投与後96時間は授乳を避ける
スピラマイシン
ヒトでの毒性エビデンスなし
データなし
Sulfadoxine/Pyrimethamine
妊娠第1期では禁忌
参照できるデータはほとんどない,可能なら使用を避ける
Suramin
ヒトでの十分なデータなし,一部の動物では催奇形性.可能なら妊婦での使用は避ける
データなし,使用を避ける
Tafenoquine
推奨されない(胎児がG6PD欠損の場合は溶血性貧血のリスク)
乳児がG6PD欠損または不明なら,投与後3ヵ月は授乳を避ける
チニダゾール
ヒトでのデータは限られているが,動物での毒性のエビデンスがある.一部の専門家は妊娠第1期では禁忌としている
安全性は確立されていない,使用を避ける
Triclabendazole
ヒトでのデータなし,ラット,ラビットでの胎児毒性のエビデンスなし
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
抗ウイルス薬(コロナウイルス)
Bamlanivimab+Etesevimab
ヒトでのデータなし
データなし.乳児のCOVID-19曝露を避けるため臨床診療ガイドラインに従う.
バリシチニブ
ヒトでの十分なデータなし.動物で毒性
データなし.乳児のCOVID-19曝露を避けるため臨床診療ガイドラインに従う.
Bebtelovimab
ヒトまたは動物でのデータなし
データなし.乳児のCOVID-19曝露を避けるため臨床診療ガイドラインに従う.
カシリビマブ・イムデビマブ
ヒトでのデータなし
データなし.乳児のCOVID-19曝露を避けるため臨床診療ガイドラインに従う.
モルヌピラビル
妊婦には推奨されない(動物での胎芽/胎児毒性,ヒトでのデータなし)
データなし.乳児のCOVID-19曝露を避けるため臨床診療ガイドラインに従う.
Nirmatrelvir/リトナビル
Nirmatrelvir:ヒトでのデータなし.動物での胎芽/胎児毒性のエビデンス.
リトナビル:ヒトおよび動物で毒性のエビデンスなし.
Nirmatrevir,リトナビルの乳汁中濃度は低く,副作用は予想されない.NIHは授乳中の使用を認めている.
Pemivibart
リスク評価するための十分なデータがない
データなし
レムデシビル
妊娠第2,3期のヒトでの毒性のエビデンスはなく,第1期のデータは不十分,動物での毒性のエビデンスはない.
親薬物と代謝物が乳汁中に存在するが,乳児に対する有害作用のエビデンスはない.乳児のCOVID-19曝露を避けるため臨床診療ガイドラインに従う.
ソトロビマブ
ヒト,動物でのデータなし
データなし.乳児のCOVID-19曝露を避けるため臨床診療ガイドラインに従う.
Tixagevimab+Cilgavimab
ヒトでのデータなし
データなし.乳児のCOVID-19曝露を避けるため臨床診療ガイドラインに従う.
トシリズマブ
動物データでは胎児毒性の可能性が示唆される.ヒトでのデータは不十分
データなし.乳児のCOVID-19曝露を避けるため臨床診療ガイドラインに従う.
トファシチニブ
ヒトでの十分なデータなし.動物で毒性
データなし.乳児のCOVID-19曝露を避けるため臨床診療ガイドラインに従う.
Vilobelimab
ヒトでのデータなし,動物での毒性のエビデンスなし
データなし.乳児のCOVID-19曝露を避けるため臨床診療ガイドラインに従う.
抗ウイルス薬(エボラウイルス)
Ansuvimab-zykl
リスク評価のための十分なデータがない
ザイールエボラウイルスに感染した患者は授乳しないこと(伝播の可能性あり)
Inmazeb
ヒト,動物:安全性データなし
ザイールエボラウイルスに感染した患者は授乳しないこと(伝播の可能性あり)
抗ウイルス薬(B型肝炎)
アデホビル
ヒトでの十分なデータなし.
動物:ラットでの23倍,ウサギでの40倍の全身曝露でも発達毒性は観察されなかった(ヒト用量での曝露と比較).
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
エンテカビル
ヒトでの十分なデータなし.
動物:ラットでの25倍,ウサギでの200倍の全身曝露でも発達毒性は観察されなかった(ヒト用量での曝露と比較).
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
インターフェロン類
C
おそらく安全,乳児への毒性をモニターする
Telbivudine
B
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
テノホビルアラフェナミド(TAF)
ヒトあるいは動物での毒性のエビデンスなし
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
抗ウイルス薬(C型肝炎)
Daclatasvir
ヒトでのデータはない
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
リバビリン
禁忌(催奇形性および/または胎児死亡)
データはないがおそらく安全.モニターは必要
Simeprevir
C (リバビリンとの併用ではX)
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
ソホスブビル
B (リバビリンとの併用ではX)
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
HCV合剤
エプクルーサ
(ソホスブビル・ベルパタスビル)
ヒトでのデータはない.動物では安全.
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
ハーボニー (レジパスビル・ソホスブビル)
B
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
マヴィレット(グレカプレビル・ピブレンタスビル)
ヒトでのデータはない.動物では安全.
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
Technivie(Ombitasvir/Paritaprevir/リトナビル)
B
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
Viekira Pak (Paritaprevir/リトナビル/Ombitasvir/Dasabuvir)
B
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
Vosevi(ソホスブビル/Velpatasvir/Voxilaprevir)
ヒトでのデータはない.動物では安全.
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
Zepatier
(Elbatasvir/Grazoprevir)
ヒトでのデータはない.動物では安全.
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
抗ウイルス薬(ヘルペスウイルス)
アシクロビル
B
安全だがモニターは必要
Cidofovir
C
使用を避ける
ファムシクロビル
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
安全性は確立されていない,使用を避ける
ホスカルネット
C
安全性は確立されていない,使用を避ける
ガンシクロビル
C
安全性は確立されていない,使用を避ける
レテルモビル
ヒトでのデータは不十分.ラットにおいて高曝露で毒性あり
安全性は確立されていない,使用を避ける
Maribavir
ヒトでのデータは不十分.ラットでは胎芽・胎児生存率が減少
データなし,可能なら使用を避ける
バラシクロビル
ヒト:重大な先天性欠損の薬物関連リスクなし.
動物:毒性のエビデンスなし
 
安全だがモニターは必要
バルガンシクロビル
ヒトでのデータはない.動物での胎芽・胎児毒性
安全性は確立されていない,使用を避ける
抗ウイルス薬(インフルエンザ)
アマンタジン
C
使用を避ける
バロキサビル
ヒトでのデータはない,動物では安全
おそらく安全だがデータはない
ファビピラビル
催奇形性あり,投与しない
使用を避ける
オセルタミビル
ヒトでの限られたデータからは胎芽・胎児毒性は示唆されない.動物での毒性のエビデンスはない
おそらく安全(低濃度の親薬剤とカルボキシレートが含まれるが,市販後調査で毒性のエビデンスはない)
ペラミビル
ヒトでのデータは不十分,動物では高曝露で毒性あり
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
リマンタジン
C
使用を避ける
ザナミビル
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
おそらく安全だがデータはない 
抗ウイルス薬(ポックスウイルス)
Brincidfovir
動物でのデータから胎児障害の危険性あり.ヒトでのデータなし
天然痘患者では授乳は推奨されない
Tecovirimat
ヒトでのデータなし,動物では安全
安全性は確立されていない,可能なら使用を避ける
抗レトロウイルス薬
アバカビル(ABC)
C





ARTを受けていて,妊娠期間を通じてウイルス量が抑制されていれば,リスクと有用性についてのカウンセリングを行った上での乳児哺乳は合理的な選択肢となる.
アタザナビル(ATV)
B
Cabotegravir(CAB)
ヒトでのデータは不十分
ダルナビル(DRV)
C
Didanosine(ddI)
B
ドルテグラビル(DTG)
好ましい薬剤(妊娠のどの時期でも)
Doravirine(DOR)
ヒトでのデータなし,動物では安全
Efavirenz(EFV)
FDA:妊娠第1期では避ける
DHHS, WHO:すべての妊娠期間で安全
エムトリシタビン(FTC)
ヒト,動物:毒性のエビデンスなし
Enfuvirtide(ENF,T20)
B
エトラビリン(ETR)
B
ホスアンプレナビル(FPV)
C
Fostemsavir
ヒトでのデータなし,動物では安全
Ibalizumab-uiyk
ヒトでのデータなし.動物のデータでは子宮内で曝露された乳児での免疫抑制が示唆されている
インジナビル(IDV)
C
ラミブジン(3TC)
C
Lenacapavir(LEN)
ヒトでのデータは不十分.動物での毒性のエビデンスはない
マラビロク(MVC)
B
Nelfinavir(NFV)
B
ネビラピン(NVP)
B
ラルテグラビル(RAL)
ヒトでは安全(400mg1日2回のデータのみ)
リルピビリン(RPV)
ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
リトナビル(RTV)
B
サキナビル(SQV)
B
サニルブジン(d4T)
C
テノホビルジソプロキシル (TDF)
動物,ヒトともに毒性なし
Tipranavir(TPV)
C
ジドブジン(AZT,ZDV)
C
抗レトロウイルス薬(合剤)
Atripla(EFV/FTC/TDF)
D





ARTを受けていて,妊娠期間を通じてウイルス量が抑制されていれば,リスクと有用性についてのカウンセリングを行った上での乳児哺乳は合理的な選択肢となる.
ビクタルビ(BIC/FTC/TAF)
ヒトでのデータなし,動物では安全
Cabenuva(CAB/RPV)
ヒト:データ不十分
Cimduo,Temixys(3TC/TDF)
ヒト:3TC安全,TDF安全
動物:3TC胎芽毒性,TDF安全
コンビビル(3TC/ZDV)
C
Complera(RPV/FTC/TDF)
B
デシコビ(FTC/TAF)
ヒトでのデータなし,動物では毒性なし
ドウベイト(DTG/3TC)
DTG:好ましい薬剤;3TC:ヒトでの毒性なし
エプジコム(3TC/ABC)
ヒトでの毒性なし,動物で毒性
Evotaz(ATV/Cobi)
推奨されない(ATV/Cobi曝露↓)
ゲンボイヤ(EVG/Cobi/FTC/TAF)
推奨されない(EVG/Cobi曝露↓)
ジャルカ(DTG/RPV)
DTG:好ましい薬剤;RPV:ヒトでの毒性なし
カレトラ(LPV/RTV)
ヒトでの毒性なし,ラットで毒性
オデフシィ(RPV/FTC/TAF)
ヒト:データ不十分
動物:毒性なし
プレジコビックス(DRV/Cobi)
推奨されない(DRV/Cobi曝露↓)
Stribild(EVG/Cobi/FTC/TDF)
推奨されない(EVG/Cobi曝露↓)
Symfi, Symfi Lo(EFV/3TC/TDF)
EFVによる胎児障害の可能性,妊娠第1期では避ける
シムツーザ(DRV/Cobi/FTC/TAF)
推奨されない(DRV/Cobi曝露↓)
Temixys(3TC/TDF)
ヒト:3TC安全,TDF安全
動物:3TC胎芽毒性,TDF安全
トリーメク(DTG/3TC/ABC)
好ましい合剤
Trizivir(ABC/3TC/ZDV)
ヒトでは毒性なし,動物で毒性
ツルバダ(FTC/TDF)
B
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2024/10/29