ドキシサイクリン (2024/03/26 更新)
DOXY 主な商品名:ビブラマイシン
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「サンフォード感染症治療ガイド」の中で推奨されている薬剤の適応および用量は,日本で認可されているものとは異なっている場合がありますので,薬剤選択を考慮する場合には,必ず日本での添付文書および最新安全性情報に基づいて行って下さい. →日本の添付文書情報検索サイト
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Contents
1. 用法および用量
1. 使用
2. 成人用量
3. 小児用量
4. 腎障害時の用量調整
5. 肝障害時の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
5. 主要な薬物相互作用
1. 用法および用量
1. 使用
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DOXYはさまざまな感染症に対して幅広く使用されるテトラサイクリン系抗菌薬である:Borrelia (回帰熱),ブルセラ症,Yersinia pestis,Francisella tularensis,Vibrio cholerae,Campylobacter fetus,Haemophilus ducreyi,Anaplsma phagocytophilum, Ureaplasma urealyticum,Q熱,ライム病,炭疽(吸入)その他
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DOXYはMRSA市中感染に有効.
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主にRickettsia,他のダニ媒介性疾患,Chlamydia,Mycoplasma感染症,またマラリア予防に対する第二選択薬として使用される.
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耐性機構は複数:標的であるリボソームの変異(高度耐性),排出ポンプ(低度耐性),ポーリンの閉鎖(まれ),酵素の変異.
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2つの剤形:hyclate,一水和物.どちらも効果は同等.一水和物は食道での溶解が緩徐なためhyclateに比べて消化器系の副作用が少ない可能性がある.しかし,pHが高い環境では他の剤形ほど生物学的利用能は高くないと考えられる(これは長期に酸抑制状態にある患者では問題となりうる).
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小児での使用:小児患者に対するテトラサイクリン系薬の使用について,8歳未満の小児では,薬剤およびその着色分解物がエナメル質に沈着することにより歯の永久的な変色が起こることが報告されていたため,従来は制限されていた.ドキシサイクリンは,他のテトラサイクリン系薬にくらべカルシウムとの結合力が弱く,最近の比較データでは,8歳未満の小児で目に見える歯の変色やエナメル質形成不全を引き起こす可能性は低いことが示唆されている.米国小児科学会は現在,ドキシサイクリンは,短期間(≦21日)なら患者の年齢にかかわらず安全に投与できると推奨している(AAP Red Book 2021-2024 Section 4;J Pediatr 166: 1246, 2015).
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アレルギー:ドキシサイクリンの脱感作のプロトコール.
2. 成人用量
3. 小児用量
用量(生後>28日)
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2.2~4.4mg/kg/日(12時間ごとに分割)
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最大/日
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200mg
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4. 腎障害時の用量調整
半減期(時間)(腎機能正常
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18
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半減期(時間)(ESRD)
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変化なし
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用量(腎機能正常)
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100mg経口/静注12時間ごと
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CrClまたはeGFR
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腎障害時の用量調整不要
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血液透析
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用量調整不要
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CAPD
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用量調整不要
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CRRT
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用量調整不要
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SLED
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データなし
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5. 肝障害時の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
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他のテトラサイクリン系と同様.空腹時に悪心増加.特に就寝前の投与ではびらん性食道炎.十分な量の水で服用すること.
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光線過敏症と光線による爪甲離床症が起こるが,他のテトラサイクリン系にくらべ少ない.熱帯地域では光線過敏症反応が増加する.
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歯への沈着は他のテトラサイクリン系にくらべ少ない(J Antimicrob Chemother 72: 2887, 2017).妊娠最終期での胎児への曝露,幼児,8歳までの小児では起こることもある(上記,用法および用量参照).
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爪下が青色に変色:Cureus 12: e7810, 2020.
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腎不全患者にも使用可.
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テトラサイクリン塩酸塩より異化効果は少ない
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その他のまれな副作用
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好酸球増加と全身症状を伴う薬疹(DRESS)
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中枢神経系:立ちくらみ,ふらつき,めまい
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C. difficile感染による下痢
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頭蓋内圧亢進
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FDAリスク区分(新):妊娠第2~3期では,不可逆的な歯の変色と骨成長障害のために避ける.第1期での使用で重大な催奇形性のエビデンスはないが,リスクなしと結論付けるだけの十分なデータはない.
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授乳中の使用:短期の使用なら安全,乳児の消化器毒性をモニター
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
PK/PD指標
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24時間AUC/MIC
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剤形
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一水和物:カプセル(50,75,100,150mg),錠(100,150mg),徐放カプセル(40mg),経口懸濁液(25mg/5mL) Hyclate:カプセル(100mg),錠(20,50,75,100,150mg),徐放錠(50,60,75,80,100,120,150,200mg) 注射
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食事に関する推奨(経口薬)1
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錠/カプセル/溶液:しょくじとともに
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経口吸収率(%)
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90
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Tmax(時間)
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2(徐放製剤以外)
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最高血清濃度3(μg/mL)
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1.5~2.1(100m経口,g SD)
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最高尿中濃度(μg/mL)
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データなし
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蛋白結合(%)
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>90
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分布容積3(Vd)
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0.7 L/kg
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平均血清半減期4(T1/2, 時間)
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18~24
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排泄
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胆汁,腎
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胆汁移行性5(%)
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200~3200
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脳脊髄液/血液6(%)
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26
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治療が可能になるだけの脳脊髄移行性7
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なし
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AUC9(μg・時間/mL)
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31.7(AUC0-∝) (100mg経口,0~inf)
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†:日本にない剤形
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注記のない場合は成人用製剤
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SD:単回投与後,SS:複数回投与後の定常状態
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V/F:(Vd)÷(経口生物学的利用能),Vss:定常状態におけるVd,Vss/F:(定常状態におけるVd)÷(経口生物学的利用能)
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CrCl>80 mL/分と想定
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(胆汁中の最高濃度)÷(血清中の最高濃度)×100
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炎症時における脳脊髄液濃度
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薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定.脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
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AUC:血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve,0~inf=AUC0-inf;0~x時間=AUC0-x
5. 主要な薬物相互作用
薬剤
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濃度への影響(その他)
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推奨される対応
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アルミニウム,Bismuth,鉄,マグネシウム塩
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DOXYの吸収↓
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併用を避ける
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バルビツレート
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DOXY↓
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併用を避ける
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カルバマゼピン
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DOXY↓
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併用を避ける
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ジゴキシン
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ジゴキシン↑
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モニター,用量調整
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フェニトイン
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DOXY↓
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併用を避ける
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リファンピシン
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DOXY↓ (Antimicrob Agents Chemother 38: 2798, 1994)
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用量調整または避ける
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ワルファリン
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INR↑
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INRをモニター,用量調整
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