日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

ブルセラ症,Brucella属  (2026/05/12 更新)
ブルセラ症,マルタ熱,地中海熱,波状熱


臨床状況/診断

臨床状況
  • ブルセラ症は小児と成人でみられる人獣共通の発熱性疾患である.
  • マルタ熱,地中海熱,波状熱と呼ばれることもある.
  • 生乳の摂取,ウシ,ヤギ,ブタ,ヒツジとの接触,または検査室でのBrucella感染検体の取り扱い中の不注意による曝露あるいは職業的曝露と関連している.まれだが,海洋哺乳類(たとえば,ネズミイルカ)が保菌しているBrucella属への曝露によることもある(MMWR 61: 461, 2012).
  • 臨床症状
  • 多彩な症状を示す:発熱(発熱は90%で起こる),骨関節疾患(20~30%,特に仙腸関節炎),まれに髄膜炎や心内膜炎.
  • 身体のどの組織にも感染しうる.
  • 悪臭を伴う発汗があればほとんどこの疾患だが,みられないことも多い.
  • 臨床検査所見は非特異的:軽症肝炎,白血球減少および相対的リンパ球増加.
診断
  • Brucellaは増殖が遅く,通性嫌気性,非運動性,非芽胞形成の短小桿菌.
  • 血液,骨髄または他の無菌部位の培養で検出される.
  • 利用可能で正規のものであれば,NAAT(PCR)および16S rRNA遺伝子解析が,感度・特異度ともにもっとも高い.
  • 職業的曝露のリスクを下げるために,検査室(施設)にブルセラ症の可能性があることを伝えること.
  • 血清学的検査陽性
  • 迅速血清学的検査が陽性でも,全例でBrucella特異的凝集反応での確認が必要
  • プロゾーン現象のため偽陰性となることがある

病原体

  • ヒトへの感染が可能な13のBrucella種が同定されている.もっとも多いのは:
  • B. melitensis(ヤギ,ラクダ,ヒツジ)
  • B. canis(イヌ)
  • B. suis(ブタ)

第一選択

ブルセラ症のタイプ
患者
処方
コメント
非局所性感染
成人
DOXY 100mg経口1日2回・6週+GM 5mg/kg/日静注1日1回・最初の7~10日
治癒率が高く再発率が低いため,望ましい処方
小児,年齢≧8歳
DOXY 4.4mg/kg/日(最大200mg/日)2回に分割・6週+GM 5mg/kg/日静注1日1回・最初の7~10日
望ましい処方
小児,年齢<8歳
ST 10mg/kg/日(トリメトプリム成分)経口2回に分割+RFP 15~20mg/kg・日(最大900mg/日)経口1日1回,どちらも6週
  
妊婦
ST 800/160mg1日2回+RFP 600~900mg経口1日1回,どちらも6週+葉酸サプリメント4mg経口1日1回
妊娠36週以降も治療が続く場合は,36週目から出産までの間はRFP単剤治療を継続し、出産後にST投与を再開する.
脊椎炎,仙腸関節炎,関節炎
成人
DOXY 100mg経口1日2回+RFP 600~900mg経口1日1回)・最低12週+GM 5mg/kg/日静注1日1回・最初の7~10日
  
小児,年齢≧8歳
DOXY 4.4mg/kg/日[最大200mg/日]1日2回に分割+RFP 15~20mg/kg/日[最大900mg/日]1日1回)・最低12週+GM 5mg/kg/日静注1日1回・最初の7~10日
  
小児,年齢<8歳
ST 10mg/kg/日[トリメトプリム成分]経口1日2回に分割+RFP 15~20mg/kg/日[最大900mg/日]1日1回)・最低12週+GM 5mg/kg/日静注1日1回・最初の7~10日
  
妊婦
RFP 600~900mg経口1日1回+ST 800/160mg経口1日2回)最低12週+CTRX 2g静注1日1回・最初の6週.
CTRXRFPは分娩まで継続可能,STは妊娠36週から分娩まで中止.
葉酸サプリメント4mg経口1日1回をSTとともに投与
心内膜炎(ほとんどすべての場合,抗菌薬に加えて手術が必要となる)
成人
DOXY 100mg経口1日2回+RFP 600~900mg経口1日1回)最低12週+GM 5mg/kg/日1日1回・最初の4週
  
小児,年齢≧8歳
DOXY4.4mg/kg/日[最大200mg/日]経口1日2回に分割+RFP 15~20mg/kg/日[最大900mg/日]1日1回)最低12週+GM 5mg/kg/日1日1回・最初の4週

小児,年齢<8歳
ST 10mg/kg/日[トリメトプリム成分]1日2回に分割+RFP 15~20mg/kg/日[最大900mg/日]経口1日1回)最低12週+GM 5mg/kg/日静注1日1回・最初の4週
     
妊婦
CTRX 2g静注1日1回・最初の6週+(RFP 600~900mg経口1日1回+ST 800/160mg経口1日2回)最低12週
CTRXRFPは分娩まで継続可能.STは妊娠36週~分娩まで中止する.
  
神経ブルセラ症(脊椎炎および心内膜炎による局所病変なし)
成人
DOXY 100mg静注†/経口1日2回+RFP 600~900mg経口1日1回)最低12週+CTRX 2g静注12時間ごと・最初の6週
  
小児,年齢≧8歳
DOXY4.4mg/kg/日[最大200mg/日]経口1日2回に分割+RFP 15~20mg/kg/日[最大900mg/日]1日1回)最低12週+CTRX 100mg/kg/日(最大4g/日)1日2回に分割・最初の6週
  
小児,年齢<8歳
(ST 10mg/kg/日[トリメトプリム成分]1日2回に分割+RFP 15~20mg/kg/日[最大900mg/日]経口1日1回)最低12週+CTRX 100mg/kg/日(最大4g/日)1日2回に分割・最初の6週
妊婦
(RFP 600~900mg経口1日1回+ST 800/160mg経口1日2回)最低12週+CTRX 2g静注1日・最初の6週
CTRXとRFPは分娩まで継続可能
葉酸サプリメント4mg経口1日1回をSTとともに投与
STは妊娠36週で中止する(J Clin Med 13: 595, 2024).
検査室での曝露または職業的曝露後の予防
  
データが限られており処方は忍容性が低いことが多い.
DOXY 100mg経口1日2回+RFP 600mg経口1日1回・どちらも3週
B. abortus株RB51(RFPに耐性)の場合は,DOXY単独で3週
DOXYに対する忍容性が低い,または妊婦の場合:ST 800/160mg経口1日2回±RFP 600mg経口1日1回,どちらも3週
    

第二選択

  • GM 5mg/kg/日・7~10日投与に替えてSM 15mg/kg/日筋注/静注(最大1g/日)・14~21日投与を,GM 4週に替えてSM 4週を使用してもよい
  • 非局所性感染に対する特異的な第二選択
  • 成人
  • DOXY 100mg経口1日2回・6週+SM 1g筋注/静注1日1回・最初の14~21日
  • DOXY 100mg経口1日2回+RFP 600~900mg経口1日1回・どちらも6週
  • 小児,年齢≧8歳
  • DOXY 4.4mg/kg/日(最大200mg/日)1日2回に分割・6週+SM 15mg/kg/日(最大1g/日)静注/筋注1日回・最初の14~21日
  • DOXY 上記と同様+RFP 15~20mg/kg/日(最大900mg/日)経口1日1回・どちらも6週

治療期間

  • 詳細は上記処方参照.
  • 一般的には非局所性ブルセラ症では6週治療
  • 局所性ブルセラ症(仙腸関節炎,脊椎炎,心内膜炎,神経ブルセラ症)では,臨床反応に応じて最低12週またはそれ以上(6ヵ月まで).

コメント

  • 単盲検ランダム化対照比較試験(177例)では,DOXY/SM処方へのヒドロキシクロロキンの追加により治療有効性が増大,症状改善は加速,再発率は低下した(Int J Antimicrob Agents 51: 365, 2018).
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2026/05/12