日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Brucella属,ブルセラ症,発熱性疾患  (2023/11/07 更新)
ブルセラ症,マルタ熱,地中海熱,波状熱


臨床状況

臨床状況
  • ブルセラ症は小児と成人でみられる人獣共通の発熱性疾患である.
  • 低温殺菌されていない牛乳,ウシ,ヤギ,ブタ,ヒツジへの曝露,または検査室での,Brucella感染組織や培養物の取り扱いでの不注意による曝露と関連している.
  • まれだが,海洋哺乳類(たとえば,ネズミイルカ)が保菌しているBrucella属への曝露によることもある(MMWR 61: 461, 2012).
  • マルタ熱,地中海熱,波状熱と呼ばれることもある.
  • 臨床症状:
  • 多彩な症状を示す:発熱,骨関節疾患(20~30%,特に仙腸骨炎),まれに髄膜炎や心内膜炎.
  • 身体のどの組織にも感染しうる.
  • 発熱は90%で起こる.
  • 悪臭を伴う発汗があればほとんど診断がつくが,みられないことも多い.
  • 治療後再発率は10%.
  • 臨床検査所見:軽症肝炎,白血球減少および相対的リンパ球増加.
  • 治療に関する一般原則
  • 細胞内の酸性の環境でも活性のある抗菌薬を使う:たとえば,DOXYまたはRFP
  • 再発リスクを低下させるために併用治療を行う
  • 長期治療が必要となることが多い
診断
  • 成長の遅い微小球桿菌
  • 血清学的,骨髄培養,可能ならリアルタイムPCRまたは16s rRNA解析.
  • 職業的曝露のリスクを下げるために,検査室(施設)にブルセラ症の可能性があることを伝えること.
  • 発展途上国では,現在でも血清学的検査が有用
  • 迅速血清学的検査で陽性でも,全例でBrucella特異的凝集反応での確認が必要
  • プロゾーン現象のために擬陰性となることがある
  • NAAT(PCR)および16S rRNA遺伝子解析が適切に利用できるなら,感度・特異度とももっとも高い.

病原体

  • B. abortus(ウシ)
  • B. suis(ブタ)
  • B. melitensis(ヤギ,ラクダ:中東)
  • B. canis(イヌ)

第一選択

  • 非局所性疾患を示す,成人(妊婦を除く)および年齢>8歳の小児:
  • DOXY 100mg経口1日2回・6週+GM 5mg/kg静注1日1回・7日
  • DOXY 100mg経口1日2回・6週+RFP 600~900mg経口1日1回・6週
  • 非局所性疾患を示す年齢<8歳の小児:
  • ST(トリメトプリムとして)5mg/kg経口12時間ごと・6週+RFP 15~20mg/kg(最大900mg/日)経口を1~2回に分割
  • 成人および年齢>8歳の小児の,脊椎炎/仙腸骨炎/関節炎:
  • DOXY 100mg経口1日2回+RFP 600~900mg経口24時間ごと)・3カ月+最初の7日間はGM静注1日1回
  • CPFX 750mg経口1日2回+RFP 600~900mg経口1日1回:ともに最低3カ月
  • 妊婦のブルセラ症(妊娠<36週):
  • ST(トリメトプリムとして)5mg/kg経口1日2回+RFP 600~900mg経口24時間ごと]・4週.
  • 妊娠≧36週ならば,出産までRFP単独治療を行う.
  • 神経性ブルセラ症:
  • DOXY 100mg静注†または経口1日2回+RFP 600~900mg経口1日1回+CTRX 2g静注12時間ごと.脳脊髄液が正常となるまで継続.
  • 心内膜炎:
  • ほぼ必ず手術+抗菌薬を要する.GM 5mg/kg静注1日1回・2~4週+(RFPDOXYSTの併用療法・6週~6カ月).
  • 脊椎炎:
  • 成人:DOXY 100mg経口1日2回・最低でも12週+RFP 600~900mg経口1日1回少なくとも12週+GM 5mg/kg筋注/静注1日1回最初の7~14日
  • 小児・年齢8歳以上:DOXY 4.4mg/kg/日(最大200mg/日)2回に分轄投与・12週またはそれ以上+RFP 15~20mg/kg/日(最大900mg/日)経口1日1回・少なくとも12週+GM 5mg/kg静注/筋注1日1回・最初の7~14日
  • 小児・年齢8歳未満:ST 10mg/kg/日トリメトプリム(最大320mg/日)+スルファメトキサゾール50mg/kg/日(最大1.6mg/日)2回に分轄投与・12週またはそれ以上+RFP 15~20mg/kg/日(最大900mg/日)経口1日1回・12週またはそれ以上+GM 5mg/kg静注/筋注1日1回・最初の7~14日
  • 検査室での曝露後の予防.データが限られており処方は忍容性が低いことが多い.
  • DOXY 100mg経口1日2回+RFP 600mg経口1日1回・3週.
  • B. abortus株RB51(RFPに耐性)の場合:DOXY単独で3週.
  • DOXYに不耐の場合,または妊娠している場合はST 2錠経口1日2回±RFP 600mg経口1日1回・3週.

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • 非局所疾患でGMを避ける必要がある場合は,CPFX 500mg経口1日2回+(DOXYまたはRFPのどちらか)・6週を試みてもよい.

抗微生物薬適正使用

  • 骨髄炎や脊椎炎は3カ月治療.

コメント

  • 曝露を受けた個人の抗体検査は2,4,6,24週後に州の臨床検査施設かCDCを通じて行う.注:B. abortus RB51株の抗体反応性は乏しい.
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2023/11/06