日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

エールリヒア症,アナプラスマ症  (2025/08/26 更新)
エールリヒア症,アナプラスマ症


臨床状況

  • Ehrlichia属およびAnaplasma phgocytophilumは偏性細胞内細菌であり,ヒト細胞質および動物の白血球内で増殖する.
  • 病原性Ehrlichia,疫学と発疹発症率
病原体
ダニ(媒介動物)
ダニ咬傷
発疹(%)
地理的分布
Ehrlichia chaffeensis,ヒト単球性エールリヒア症(HME)の原因であり,30州で確認されているダニ媒介性疾患:主にニュージャージーからイリノイを結ぶ線の南西,ミズーリ,オクラホマ,テキサス.さらなる詳細はCDCウェブサイトを参照
ひとつ星ダニ(Lone Star)
患者の68%
成人23%,小児60%
米国中北部,南部および中部大西洋地域
Anaplasma phagocytopiliumはヒト顆粒球アナプラスマ症(HGA)の原因であり,全身性の発熱症状を伴うダニ媒介性疾患であり米国(北中西部,北東部,西海岸)およびヨーロッパで確認されている.CDC統計マップ参照
マダニ(Ixodes)属
患者の67%
まれ
米国ニューイングランド,中北部,大平洋岸
Ehrlichia ewingii (HGEのイヌ型(HGAと混同されることがある:顆粒球中の封入体)(Emerg Infect Dis 31: 222, 2025
ひとつ星ダニ(Lone Star)
?
まれ
米国大西洋岸南部,中南部

  • 一般的な初期症状:発熱,頭痛,悪心,嘔吐,筋肉痛.
    3つの病原体に共通の臨床検査所見:
  • 血小板減少症
  • 白血球減少
  • ASTおよびALT上昇
  • 本症が疑われる場合には,臨床検査による確認を待たずに特異的治療を行う.
  • HGAの場合は,つねに他のマダニ媒介性病原体の重複感染を念頭におくこと:

病原体/診断

病原体
  • Ehrlichia chaffeensis:HMEの病原体
  • Ehrlichia ewingii,HGEの原因となりうるイヌ型病原体
  • Anaplasma phagocytopilium :HGAの病原体
診断
  • 診断方法
  • PCRが望ましく,現在ではCDC,一部の州の公衆衛生検査機関や商業的な検査機関で入手可能.
  • 間接蛍光抗体アッセイ.それぞれのEhrlichia属に対して別々にアッセイを行う必要がある.確定診断には抗体力価の4倍上昇が必要.
  • 末梢血細胞質内の菌(封入体)を顕微鏡により確認.HGAの20~80%,HMEの1~20%で認められる.
  • 米国におけるダニ媒介疾患診断のための検査方法についての概説としては,Clin Chem 66: 537, 2020参照.

第一選択

  • 成人:DOXY 100mg静注†または経口1日2回
  • 妊婦:DOXY 100mg静注†または経口1日2回
  • 小児:DOXY 2.2mg/kg1日2回,最大100mg1日2回静注†/経口

(†:日本にない剤形)

第二選択

  • 成人:
  • RFP 10mg/kg経口1日2回(最大300mg1日2回)
  • 小児:
  • RFP:10mg/kg経口1日2回(最大300mg)
  • 妊婦:
  • RFP 10mg/kg経口1日2回(最大300mg1日2回)

コメント

  • 治療期間は7~10日,より重症な感染の場合には14日まで
  • CPFXOFLXCP はin vitroで活性があるが,臨床的有効性は証明されていない.
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2025/08/25