腎障害時の用量計算-概説 (2024/11/05 更新)
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概説
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ここでは推定クレアチニンクリアランス(CrCl)および糸球体濾過率(GFR)の計算方法について述べる.
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腎機能が変動する患者では正確なCrCl推定は困難であることに注意.
CrClによる計算-理想体重
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男性:50kg+[身長60インチ(150cm)以上なら,それを1インチ(2.5cm)超すごとに2.3kg加算]
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女性:45.5kg+[身長60インチ(150cm)以上なら,それを1インチ(2.5cm)超すごとに2.3kg加算]
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文献:Drug Intell Clin Pharm 8: 650, 1974
CrClによる計算-調整体重
CrClによる計算-CrClの推定
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サンフォードガイドでは,推定CrCl値(mL/分)の計算にCockcroft-Gault式(Nephron 16: 31, 1976)を用いる(年齢:歳,Scr:血清クレアチニン濃度[mg/dL]).
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男性:(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)
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女性:([140-年齢]×体重[kg]/[72×Scr])×0.85
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低体重患者(BMI<18.5kg/m2):実際の体重を用いる
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正常体重患者(BMI 18.5~24.9kg/m2):IBWを用いる
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過剰体重患者(BMI 25~29.9kg/m2):調整体重を用いる
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肥満患者,肥満の3クラスのすべて(BMI≧30kg/m2):調整体重を用いる
糸球体濾過率(GFR)による計算-小児:Bedside Schwartz式
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小児(年齢1~18歳)で用いられる計算式:推定GFR(mL/分/1.73m2)=(0.413)×(身長/Scr)
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身長(cm)
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Scr:血清クレアチニン(mg/dL).血清クレアチニンをμmol/Lで測定している場合の換算変数は88.4,すなわちmg/dLをμmol/Lに換算するには88.4を掛ければよい.
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この計算式(Bedside Schwarz equationとして知られている)は,小児のGFRを血清クレアチニンから推定するための,現時点で最良の計算式である.この式は,IDSM(同位体希釈質量分析)が可能になるようなクレアチニン測定で用いるために作成されたものである.すべての臨床検査施設はIDSMが可能になるクレアチニン測定法を用いなければならない.
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文献:J Am Sci Nephrol 20: 629, 2009.
GFRによる計算-成人:2021CKD-EPIクレアチニン式
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NKF(National Kidney Foundation)は,成人でのGFR推計にCKD-EPI(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)のGFR推定計算式を推奨している.
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2009年に最初に発表され(Ann Intern Med 150: 604, 2009),NKFおよびアメリカ腎臓病学会(ASN)により,人種の別なくGFRを推定できるよう改訂された.2021年版の計算式がサンフォードガイドでは用いられている.
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計算式:eGFR=142×min(Scr/k,1)α×max(Scr/k,1)1200×0.9938Age×1.012(女性の場合)
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Scr=血清クレアチニン(mg/dL)
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K=0.7(女性)または0.9(男性)
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α=0.241(女性)または0.302(男性)
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min(Scr/k,1)は,Scr/kか1.0のどちらか小さい方
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max(Scr/k,1)は,Scr/kか1.0のどちらか大きい方
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年齢(歳)
GFRによる計算-成人:CKD-EPI クレアチニン・シスタチンC式
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成人eGFRのためのCKD-EPI式では血清クレアチニン,シスタチンC,年齢,性を用いる.
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シスタチンCはすべての有核細胞で産生される.糸球体で自由にろ過され,尿細管細胞で再吸収・代謝される基本的なタンパク質であり,ごくわずかな量が尿中に排出される.比較的安定的に精製され,筋肉量の影響は受けない.
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式:eGFR=135×min(Scr/κ,1)α×max(Scr/κ,1)-0.544×min(Scys/0.8,1)-0.323×max(Scys/0.8,1)-0.778×0.9961年齢×0.963(女性の場合)
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Scr=標準化された血清クレアチニン(mg/mL)
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Scys=標準化されたシスタチンC(mg/mL)
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κ=0.7(女性)または0.9(男性)
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α=-0.219(女性)または-0.144(男性)
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min(Scr/κ,1)は,Scr/κまたは1の小さい方
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max(Scr/κ,1)は,Scr/κまたは1の大きい方
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min(Scys/0.8,1)は,Scys/0.8または1の小さい方
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max(Scys/0.8,1)は,Scys/0.8または1の大きい方
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年齢(歳)
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