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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
回帰熱
(
2023/08/22 更新
)
Borrelia
属による回帰熱
臨床状況
回帰熱の原因菌の
Borrelia
スピロヘータは節足動物により媒介される.回帰熱にはシラミが媒介するものと,ダニ(マダニ)が媒介するものの2つがある.
シラミが媒介する回帰熱はスピロヘータ
B. recurrentis
による.媒介動物はコロモジラミ
Pediculus humanus
であり,ヒトが唯一の保有宿主.
ダニが媒介する回帰熱の原因となる
Borrelia
は8種以上ある.
■北アメリカ
西部山岳地帯では
B. hermsii
米国北東部および中西部では
B. miyamotoi
,
米国南西部および中南部では
B. tunicatel
■アフリカでは
B. hispanica
,
B. crocidurae
,
B. duttonii
■ロシアでは
B. miyamotoi
(コメント参照)
■ダニによる回帰熱の保有宿主/媒介動物はほとんどが柔らかい体のダニで,動物および/またはヒトの生息域の近くにいる.
B. miyamotoi
はIxodes tickが媒介.
●感染したヒメダニ(
Ornithodoros tick
)に咬まれた後,発熱,頭痛,筋肉痛および/または関節痛が起こる.
●まれには,急性呼吸促迫症候群(ARDS),肝不全,脳症に至ることもある.
●妊婦
より重症でより長期にわたる
中絶や死産のリスク増大と関連
10回まで再発することがある.
日本の情報
:ライム病との共感染の
B. miyamotoi
感染2症例の報告(
Emerg Infect Dis 20: 1391, 2014
).北海道の調査ではマダニの数%で
B. miyamotoi
保有が認められた(
PLos One 9: e104532, 2014
).
診断/病原体
診断
発熱時の末梢血塗抹標本でスピロヘータを検査.
陰性の場合は,より感度が高い血液PCRが使用可能.
病原体
北アメリカ
Borrelia hermsii
,
Borrelia turicata
(写真は
Borrelia turicata
を媒介する
Ornithodoros turicatae
)
アフリカ
Borrelia duttonii
Borrelia crocidurae
Borrelia duttonii
(
Ornithodoros moubata
)(上の写真)
ロシア
Borrelia miyamotoi
第一選択
シラミが媒介:
TC
500mg経口または静注†1回
ダニが媒介
成人
■水性
PCG
500万単位静注6時間ごと7~10日,または
■
DOXY
100mg経口または静注†1日2回・7~10日
小児
■
DOXY
4.4mg/kg/日1日2回に分割(最大200mg/日)(コメント参照)
予防についてはコメント参照
(†:日本にない剤形)
第二選択
シラミが媒介:
EM
500mg経口または静注1回
ダニが媒介:
EM
500mg経口または静注1日4回・7~10日
Borelia属にはアミノグリコシド系,フルオロキノロン系,スルホンアミドに対する相対的耐性はない.
抗微生物薬適正使用
B. miyamotoi
について,in vitroでのDOXY,AZM,CTRX感性とAMPC耐性が報告されている(
Antimicrob Agents Chemother 62: e00419, 2018
).
コメント
DOXYは,21日までならば患者の年齢にかかわらず安全に投与できる(
AAP Red Book 2018, Section 4
;
J Pediatr 166: 1246, 2015
).
注:有効な抗菌薬初回投与から1~4時間後にJarisch-Herxheimer反応(発熱,心拍↑,呼吸↑,血圧↓)が起こることがある.発熱,血圧低下,悪寒,頻脈が発現する.あらかじめステロイドを投与しても予防できない.
予防:曝露後のDOXYによるPre-emptive therapyは,曝露後72時間までなら(
Clin Infect Dis 71: 1768, 2020
)有効性が高い(
N Engl J Med 355: 148, 2006
).
Borrelia miyamotoi
:
日本で最初に発見され,ロシアで多くみられる.米国北東部および中西部北部で検出例が増えている.
臨床症状は非特異的:発熱,頭痛,血小板減少症が多くみられる.少数だが「再燃」が起こることがある.
診断:専門施設での血清PCR.
DOXY,AMPC,CTRXに感受性:
Ann Intern Med 163: 91, 2015
;
Ann Intern Med 163: 141, 2015
.
文献:
Am J Med 132: 136, 2019
;
Pathogens 12: 553, 2023
.
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2023/08/21