日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Leptospira   (2024/02/13 更新)


臨床状況

  • 人獣共通感染症であり,スピロヘータLeptospira interrogansによって引き起こされる多臓器疾患である.
  • Leptospiraは,さまざまな飼い慣らされた動物や野生動物の尿中から検出される:家畜(ウシ,ブタ,ヤギ,ウマ,ヒツジ),イヌ,小型齧歯類.
  • 汚染の可能性のある淡水(水路,川,小川)あるいはLeptospiraに感染した齧歯類の尿への曝露について問診すること.
  • スピロヘータは皮膚,粘膜,結膜から宿主へ侵入する.
  • 非常に多様な症状を伴う全身性熱性症状が急性に現れる.
  • 頭痛および筋肉痛は75~100%
  • 結膜の充血は55%
  • 無菌性髄膜炎や,腎不全を伴う肝炎(ワイル病)を起こすこともある
  • ビリルビンは劇的に上昇することが多いが,AST/ALTは正常値の5倍までしか上昇しない.

診断/分類

診断
  • 以前は血清学的検査がゴールドスタンダードであり,CDCが行っている(抗体価の4倍の上昇).さまざまな市販の抗体検査がある.疫学研究にはよいが,遅延して抗体増加が起こることがあるので臨床的には有用でない.
  • 一般的に,感染から最初の10日間および抗菌薬の投与前に,血液または髄液から本菌を分離.疑いが濃厚であれば特殊な培地を用いて検査を行う.実際的ではない.
  • 血液,尿,髄液のPCRが利用可能になりつつある.州の公衆衛生検査施設および民間の検査施設に問い合わせること.
分類
  • スピロヘータ
  • Leptospira interrogans

第一選択

  • 軽症(外来患者)
  • DOXY 100mg経口1日2回・5~7日
  • AMPC 500mg経口1日3回・7日
  • AZM 1g経口1回,その後500mg経口1日1回・2日
  • 妊婦または生後<8ヵ月の小児:AMPC 25~50mg/kg・日経口3回に分轄・7日
  • 重症(入院患者)
  • PCG 150万単位静注6時間ごと
  • CTRX 2g静注1日1回・7日
  • 小児:PCG 25万~40万単位/kg/日4~6回に分轄静注・7日

第二選択

  • 軽症(外来患者)
  • 成人:AZM 500mg経口1日1回・3日
  • 8歳未満の小児または妊婦:AZM 10mg/kg(最大500mg)初日,その後5mg/kg/日(最大250mg)・3日
  • 重症(入院患者)
  • 成人:DOXY 100mg静注†・7日
  • 小児:
  • CTRX 80~100mg/kg静注1日1回・7日
  • DOXY 2~4mg/kg/日静注†12時間ごとに分割

(†:日本にない剤形)

コメント

  • 特にペニシリンでの治療を受けた患者ではJarisch-Herxheimer反応が起こり,重篤となることもある.
  • 小児患者に対するテトラサイクリン系薬の使用について,8歳未満の小児では歯の永久的な変色が起こることが報告されていたため,従来は制限されていた.
  • コルチコステロイドの役割は明確でなく,ルーチンには推奨されない.
  • βラクタム薬はRickettsiaには活性がないため,Rickettsia感染を除外できない場合にはペニシリン系薬およびセファロスポリン系薬は避けたほうがよい.
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2024/02/13