日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

野兎病(ツラレミア)  (2023/03/22 更新)


臨床状況

  • 細胞内好気性グラム陰性細菌であるFrancisella tularensisにより引き起こされる人獣共通感染症.
  • 曝露のタイプと侵される臓器によって臨床像が異なる.感染は無症候性から重症敗血症性ショックおよび死亡にまで及ぶ.
  • 臨床上6つの症候群があるが,たがいに重なり合っている:
  • 潰瘍リンパ節型:媒介動物(ダニ,ハエ,蚊)の咬傷による皮膚病変および局所リンパ節腫脹
  • リンパ節型:皮膚の咬傷はなく,痛みを伴う局所リンパ節腫脹
  • チフス型:血圧低下を伴う菌血症
  • 肺炎型:血行性の感染,感染粒子の吸入,咽頭感染からの誤嚥による
  • 口腔咽頭型:汚染した食物や水を摂取した結果
  • 眼リンパ節型:結膜に感染物質が飛散した結果.前耳介部の痛みを伴うリンパ節炎に関連する.
  • 媒介動物(ダニ,ハエ,蚊),創傷への直接接触,加熱不十分な感染した肉の摂取,汚染した水を飲む,咬傷,液体のしぶきや噴霧などによって感染する.
  • 野生や飼育されている脊椎動物(ウサギ,齧歯類,ボブキャットなど)や無脊椎動物にも感染する.
  • F. tularensis は100種以上の脊椎動物,100種以上の無脊椎動物に感染する
  • 血行性髄膜炎の合併の可能性がある.
  • バイオテロリズムに使用される可能性も考慮する.

病原体

病原体
  • Francisella tularensis
診断
  • システインを含む培地で培養する.検査室に通知すること:検査者の感染の危険がある.
  • 血液および他の体液のPCR:利用できるかはっきりしない.民間検査施設や州の衛生検査部門の業務一覧をチェック.
  • 確定診断には血清反応が利用できる.主に疫学研究用であり,急性および回復期血清が必要.

第一選択

  • 重度~中等度の感染:SM 1g/kg筋注または静注††12時間ごと・7~10日,または(GMまたはTOB)5.1mg/kg/日静注8時間ごとに分割・10日

(††:米国では処方される)

第二選択

  • 軽度の感染:CPFX(400mg静注または750mg経口)1日2回・14~21日,またはDOXY 100mg経口または静注†1日2回・14~21日
  • 妊婦:治療推奨は定まっていないが,SMまたはCP(15mg/kg1日4回・最低14日)が考えられる.
  • エアロゾル曝露(自然曝露ではない)に対する予防:DOXY 100mg経口1日2回・14日,またはCPFX 500mg経口1日2回・14日

(†:日本にない剤形)

コメント

  • Jarisch-Herxheimer反応が起きることがある.
  • 治療失敗:
  • フランスの症例シリーズでの,疫学,臨床症状,治療結果については Clin Infect Dis 53: e133, 2011参照.DOXYやフルオロキノロン系では再発率が高かった.
  • CTRXによる治療を受けた患者での治療失敗の症例報告がある.
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2023/03/20