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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
Francisella tularensis
,ツラレミア
(
2025/11/11 更新
)
野兎病
臨床状況
Francisella tularensis
は以下の結果として,さまざまな感染症を引き起こす.
感染動物の感染組織との直接接触(猟師,農夫,獣医,造園家,肉取扱者)
感染性のエアロゾルの吸引(臨床微生物学者でのリスク)
感染した刺咬昆虫への曝露(マダニ,蚊,メクラアブおよびウシアブ,ノミ)
ツラレミア:臨床症状は無症候性から敗血症性ショックおよび死亡までさまざま.
エアロゾルではバイオテロの可能性がある.
ツラレミアのバイオテロに関する文献:
N Engl J Med 372: 954, 2015
.
F. tularensis
は,いくつかの臨床症候群を引き起こしうる:
潰瘍腺型:もっとも多い症状
眼リンパ節腺型
腺型
咽頭(口腔咽頭)
肺炎型
チフス型(発熱および血圧低下)
髄膜炎
合併症についてはコメントを参照
文献:
CDC後援の補遺:ツラレミア,臨床所見と治療の最新情報:
Clin Infect Dis 78: S1, 2024
.
診断/分類
診断
臨床検査での診断は困難:
染色はかすか,厳密に好気性,球桿菌
グラム染色で検出されることはまれ:培養が難しく,特殊な培地が必要な場合がある.コロニーが培養プレート上でみえるようになるまで3日かかる.
臨床検査施設に特殊な培養媒体が必要であることと検査技師の病原体感染予防を通知しておくこと
抗体価4倍で確定診断となるが,血清学検査は臨床で使用するには時宜にかなった方法ではない
PCRが最も良い.民間の検査施設や州の公衆衛生検査部門にPCRが可能か問い合わせること
病原体
好気性グラム陰性球桿菌
第一選択
重症例
GM
または
TOB
5.1mg/kg/日静注8時間ごとに分割,または
SM
10mg/kg/日静注12時間ごとに分割・7~10日
重篤な場合,あるいは単剤治療に反応しない場合は,以下を加えるのが合理的
CPFX
成人:400mg静注12時間ごと(または750mg経口)1日2回
小児:20~40mg/kg/日経口(最大1.5g/日)1日2回に分割
CPFX単剤治療(上記)は,アミノグリコシド系薬の毒性に関する問題あるいは懸念がある場合には,合理的な第二選択
髄膜炎または心内膜炎(まれな合併症):
アミノグリコシド系薬
+[
DOXY
100mg静注†/経口1日2回(成人),4mg/kg/日 12時間ごとに分割静注†/経口(最大200mg/日)(小児)],または
アミノグリコシド系薬
+[
CPFX
400mg静注(または750mg経口)12時間ごと(成人),20~40mg/kg/日経口(最大1.5g/日)1日2回に分割(小児)]
14~21日治療
(†:日本にない剤形)
第二選択
それほど重症でない場合:
成人:
CPFX
400mg静注12時間ごと(または750mg経口)1日2回・7~10日,または
DOXY
100mg静注†/経口1日2回・14~21日
小児:
CPFX
20~40mg/kg/日経口(最大1.5g/日)1日2回に分割・7~10日,またはDOXY 4mg/kg/日静注†/経口12時間ごとに分割(最大200mg/日)・14~21日
妊婦:治療推奨は不確定,しかし,上記と同様の妊婦以外の成人に対する処方を最低14日行うことが推奨される.
エアロゾル曝露の予防(自然曝露ではない):
DOXY
100mg経口1日2回・14日,または
CPFX
500mg経口1日2回・14日
(†:日本にない剤形)
治療期間
上記処方参照.再発のリスクがあるため,DOXYでは治療期間が長くなる.
コメント
対照比較臨床試験はない.
推奨した治療は,in vitro活性,感染動物モデル,観察研究データのシステマティックレビューの組み合わせに基づく.
軽症例および外来治療では単剤治療が有効との報告がある;CPFXまたはDOXY
βラクタム抗菌薬は無効.
DOXYおよびCPは静菌的であり,DOXY単剤治療では再発を起こすことがある.
多様な合併症が起こりうる:
感染した局所リンパ節の化膿
急性腎障害
横紋筋融解症
肝炎
膿胸
その他:心膜炎,髄膜炎,骨髄炎,人工関節感染,さらに心内膜炎.
野兎病(ツラレミア)バイオテロリズムについての文献:
N Engl J Med 372: 954, 2015
【日本の情報】
野兎病は四類感染症に定められており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る(厚生労働省「
感染症法に基づく医師の届出について
」参照.
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2025/11/10