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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
Francisella tularensis
,ツラレミア
(
2024/07/30 更新
)
野兎病
臨床状況
Francisella tularensis
は以下の結果として,さまざまな感染症を引き起こす.
感染動物の感染組織との直接接触(猟師,農夫,獣医,造園家,肉取扱者)
感染性のエアロゾルの吸引(臨床微生物学者でのリスク)
感染した刺咬昆虫への曝露(マダニ,蚊,メクラアブおよびウシアブ,ノミ)
ツラレミア:臨床症状は無症候性から敗血症性ショックおよび死亡までさまざま.エアロゾルではバイオテロの可能性がある.
F. tularensis
は,いくつかの臨床症候群を引き起こしうる:
潰瘍腺型:もっとも多い症状
眼リンパ節腺型
腺型
咽頭(口腔咽頭)
肺炎型(
Infect Dis Clin North Am 24: 43, 2010
)
チフス型(発熱および血圧低下)
髄膜炎
合併症についてはコメントを参照
文献:
CDC後援の総説:
Clin Infect Dis 78: S1, 2024
.
スウェーデンから300例以上の患者の臨床的予後に関する後ろ向きの概要:
Clin Infect Dis 78: 1222, 2024
.
診断/分類
診断
臨床検査での診断は困難:
グラム染色で検出されることはまれ:培養が難しく,特殊な培地が必要な場合がある.検査部には,特殊な培地が必要であることと,検査技師への感染を防ぐ必要があることを知らせる
抗体価4倍で確定診断となるが,臨床で使用するには時宜を得ない
PCRが最も良い.民間の検査施設や州の公衆衛生検査部門にPCRが可能か問い合わせること
病原体
グラム陰性球桿菌
第一選択
βラクタム薬とCLDMは活性がない.
CPFX
成人:400mg静注(または750mg経口)1日2回・14~21日
小児:20~40mg/kg/日経口(最大1.5g/日)2回に分割・14~21日治療
注:LVFXは有効なはずだが,非常にわずかな観察データしかない
重症でCPFX単剤治療に反応しない場合には,アミノグリコシド系薬を追加するのが合理的:
GM
または
TOB
5.1mg/kg/日静注8時間ごと,または
SM
10mg/kg静注12時間ごと
成人:10日治療
小児:5~7日治療
髄膜炎はまれな合併症:
報告のある経験的治療
■
アミノグリコシド系薬
+[
DOXY
100mg静注†/経口1日2回(成人),4mg/kg/日 12時間ごとに分割静注†/経口(最大200mg/日)(小児)]
■
アミノグリコシド系薬
+[
CPFX
400mg静注(または750mg経口)12時間ごと(成人),20~40mg/kg/日経口(最大1.5g/日)1日2回に分割(小児)]
■14~21日治療
(†:日本にない剤形)
第二選択
それほど重症でない場合:
成人:
DOXY
100mg静注†/経口1日2回・14~21日,または
CPFX
400mg静注12時間ごと(または750mg経口)1日2回・14~21日
小児:
CPFX
20~40mg/kg/日経口(最大1.5g/日)1日2回に分割・10~14日
妊婦:治療推奨は不確定,しかし,
SM
または
CP
が推奨される:15mg/kg1日4回最低14日
エアロゾル曝露の予防(自然曝露ではない):
DOXY
100mg経口1日2回・14日,または
CPFX
500mg経口1日2回・14日
(†:日本にない剤形)
コメント
対照比較臨床試験はない.
推奨した治療は,in vitro活性,感染動物モデル,観察研究データのシステマティックレビューの組み合わせに基づく.
軽症例および外来治療では単剤治療が有効との報告がある;入院患者は併用治療が必要だろう.
推奨される治療は,単剤治療としてフルオロキノロン系薬,アミノグリコシド系薬,DOXY,重症例には併用治療
βラクタム抗菌薬は無効.
DOXYおよびCPは静菌的であり,再発を起こすことがある.
多様な合併症が起こりうる:
感染したリンパ節の化膿
急性腎障害
横紋筋融解症
肝炎
膿胸
その他:心膜炎,髄膜炎,骨髄炎,人工関節感染,さらに心内膜炎.
野兎病(ツラレミア)バイオテロリズムについての文献:
N Engl J Med 372: 954, 2015
【日本の情報】
野兎病は四類感染症に定められており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る(厚生労働省「
感染症法に基づく医師の届出について
」参照.
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2024/07/29