日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

マラリア-概説  (2024/06/18 更新)


概説

概説
  • 米国では通常の旅行者のマラリアはまれであり,多くの症例は移民,友人や親類に会うために帰郷した移民,流行地への一時的滞在を延長しているにもかかわらず長期の予防を遵守していない例である.
  • 米国でみられるマラリアの90%は P. falciparum(熱帯熱マラリア原虫)または P. vivax(三日熱マラリア原虫)によるものである.
  • 重複感染の可能性もある.
  • マラリア予防と治療の一般的情報
  • 770-488-7788(米国東部),通話無料:(1)855-856-4713
  • 時間外:770-488-7100,マラリア担当臨床医を呼び出す
  • 血液フィルムの画像をCDCの担当臨床医にメールで送ることで,しばしば有用な情報が得られる:malaria@cdc.gov.
予防
  • 薬剤および個人の防御:スクリーン,ネット,30~35%DEET皮膚用忌避剤(小児では95%製品は避ける),ピカリジン皮膚用忌避剤,服や蚊よけネットにPermethrinスプレー.昆虫忌避剤についての総説:JAMA 316: 766, 2016
  • 主な薬剤:アトバコン/プログアニル,DOXY,メフロキン,Tafenoquine(英国ではArakoda,オーストラリアではKodatef),
  • Chloroquineが有効な地域は世界でも非常に限られる.東南アジアではメフロキンを使用しないこと.
  • Tafenoquineを用いる場合は量的G6PD検査が必要で,その使用基準はプリマキンとは異なる.
診断
  • 通常診断は顕微鏡による.
  • CDCでは種の鑑別と薬剤耐性検査を行っている
  • 最初の臨床試験:臨床的に重大な熱帯熱マラリア(P. falciparum)の寄生虫血症では感度>96%.
  • 注意:世界的にHRP 2/3欠如変異が増加しているため,RDT陰性(米国:Binax;HRPによる)ではP. falciparumを確実に除外することはできない.
  • RDTが陰性の場合は,ただちにマラリア血液フィルム検査を行うべきである:Malar J 21: 26, 2022
  • 熱帯熱マラリア以外の軽度の寄生虫血症(よくみられる)では感度50%.
  • 特異度は高い.陽性なら治療すること.
  • 鑑別には顕微鏡検査が必要.
  • 治療が成功しても1カ月以上陽性が続くことがある.
  • PCRはゴールドスタンダードで種別も正確であり,民間の検査施設で実施できる.
治療
  • 米国の病院や小売薬局のどこでも在庫があるわけではない.
  • 通常は,地域の薬物物流倉庫に在庫があり,緊急の場合でも治療開始から入手は24時間遅れる.
  • 他の第一選択薬が容易に入手できる場合は,Coartem(アルテメテル・ルメファントリン)を入手するために治療開始を遅らせてはならない.
  • 迅速に入手するための情報は,855-COARTEMに連絡.
  • P. vivaxP. ovaleP. malariaeP. knowlesiによるマラリアで合併症のない成人および小児患者の治療として,WHOの強化ガイドラインGRADEでは,質の高いエビデンスに基づき,経口ACT(妊娠第1期も含めた全妊婦を含む)またはChloroquineによる治療が強く推奨されている.ただしChlorouquine耐性が明らかな場合はACTを用いる.
  • Artemisinin耐性だけで治療失敗となることはほとんどないが,Artemisinin誘導体とACTでの併用薬(大メコン圏のみ)の両方に耐性の場合は治療失敗となる.
  • 大メコン圏からのマラリアに対してACTを使用してはならない.
  • FDAは注射用Artesunateを承認し(静注Artesunate:Amivas),現在米国では主要な販売業者(Cardinal Health, Americsource Bergen, McKesson:アクセスの情報については https://ivartesunate.com/参照)から購入可能
  • 販売業者の24時間体制の連絡先についてはAMIVASの関連サイトを参照.電話をすると30分以内に対応してくれる.
  • 平均80kgの人では初日に6バイアル必要で,その後寄生虫血症が>1%なら毎日2バイアル必要である.
  • CDCは現在では抗マラリア薬の無料配布を行っていない.
  • 小児:現在米国小児科学会では,DOXYは短期間(≦21日)なら年齢に関わらず安全に使用できると推奨している.
  • Quinidine gluconate静注は,米国ではもはや生産されておらず,入手はできない.

関連項目

  • P. knowlesi はサルのマラリア原虫で,東南アジアでしばしばヒトに感染する.
  • P, inui, P. simiovale, P. coatneyiはサルのマラリア原虫で,東南アジアでは,ヒトに感染することは滅多にない.
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2024/06/18