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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
マラリア-合併症なし-
Plasmodium vivax
(
2024/08/27 更新
)
臨床状況
Plasmodium vivax
よるマラリアで,合併症のない場合の治療.
米国では通常の旅行者のマラリアはまれであり,多くの症例は移民,友人や親類に会うために帰郷した移民,流行地への一時的滞在を延長しているにもかかわらず長期の予防を遵守していない例である.
米国でみられるマラリアの90%以上は
P. falciparum
または
P. vivax
によるものである.
複数の
Plasmodium
種による重複感染の可能性もある.
ほとんどの地域でChloroquine感受性
Chloroquine耐性(パプアニューギニア,インドネシア)
他の国々でも散発的な耐性が報告されているが,治療法は変更せず,Chloroquine感受性と同様に治療する
合併症のないマラリア(Chloroquine耐性マラリアを含むすべてのマラリア)に対し,米国CDCはアルテメテル・ルメファントリンなどのArtemisinin併用治療(ACT)を推奨している.
WHO強化ガイドラインGRADEは,成人および小児の合併症のないP. vivaxマラリアの治療に,経口ACT(すべての妊婦,妊娠第1期も含む)を,ACT使用が必要となるようなChloroquine耐性がない場合にはChloroquineを強く推奨している.
P. vivax
によるマラリアは重症化することがあり,
P. falciparumによる重症マラリア
と同様に治療する.
診断/病原体
診断
マラリア迅速診断検査が承認されている:
BinaxNOW
.今後多くの医療施設で迅速診断検査のみが行われ,血液塗抹検査は行われなくなるだろう.
通常のケースである低度の非falciparum寄生虫血症については感度50%
特異度は高い:陽性例を治療する
種の決定には顕微鏡検査が必要
治療が奏功しても1ヵ月以上は陽性が続くことがある
血液フィルムは,適切な訓練を受けた検査者が評価しなければならない.
民間の検査会社からのPCRが利用可能であり,ゴールドスタンダードである.
血清検査は限られた価値しかない.
病原体
P. vivax
(三日熱マラリア原虫)
第一選択
Chloroquine感受性(パプアニューギニア,インドネシア以外)
妊婦でのプリマキン使用については,下記コメントを参照.
Chloroquine
1g(600mg塩基)経口,その後6時間以内に0.5g,その後0.5g24時間,48時間.合計2500mg(全コース500mg錠×5)+
プリマキン
52.6mg(30mg塩基=2錠)経口1日1回・14日,または
Tafenoquine
300mg経口1回(G6PD>70%の場合に
Tafenoquine
).体重≧70kgの患者では,
プリマキン
総投与量は6mg/kgに調整する必要があり,この総投与量に達するまで30mg/日・1日1回を投与する.
成人
ヒドロキシクロロキン
800mg塩(620mg塩基)経口,その後400mg塩(=310mg塩基)経口6,24,48時間後.合計2000mg塩(=1550mg塩基)+
プリマキン
52.6mg(30mg塩基=2錠)経口1日1回・14日,または
Tafenoquine
300mg経口1回(G6PD正常の場合のみ).体重≧70kgの患者では,
プリマキン
総投与量は6mg/kgに調整する必要があり,この総投与量に達するまで30mg/日・1日1回を投与する.
アルテメテル・ルメファントリン
4錠(1錠中20mg/120mg)1回,8時間後に再び4錠,その後4錠を12時間ごと・2日(食事とともに)+
プリマキン
52.6mg(30mg塩基=2錠)経口1日1回・14日,注:CDCはChloroquine感受性
P. vivax
に対してACTを推奨していない.
Tafenoquine
は
アルテメテル・ルメファントリン
およびどのACTとも併用できない.体重≧70kgの患者では,
プリマキン
総投与量は6mg/kgに調整する必要があり,この総投与量に達するまで30mg/日・1日1回を投与する.
小児
Chloroquine
10mg/kg塩基経口,その後5mg/kg塩基6,24,48時間後.合計25mg/kg塩基(成人用量を超えないこと)+
プリマキン
0.5mg/kg塩基経口1日1回・14日
ヒドロキシクロロキン
10mg/kg塩基経口ただちに,その後5mg/kg塩基経口6,24,48時間後.合計25m/kg塩基+
プリマキン
0.5mg/kg塩基経口1日1回・14日
アルテメテル・ルメファントリン
(20mg/120mg錠)(体重に基づく用量:下記参照)+
プリマキン
0.5mg/kg塩基経口1日1回・14日.注:CDCはChloroquine感受性
P. vivax
に対してACTを推奨していない.
5~<15 kg:1錠1回,8時間後さらに1錠,その後1錠を12時間ごと・2日
15~<25 kg:2錠1回,8時間後さらに2錠,その後2錠を12時間ごと・2日
25~<35 kg:3錠1回,8時間後さらに3錠,その後3錠を12時間ごと・2日
≧35 kg:成人と同様
Chloroquine耐性(パプアニューギニア,インドネシア,他の地域の
P. vivax
でChloroquine治療が奏効しなかった場合)
アトバコン・プログアニル
成人用4錠(1錠中250mg/100mg)経口1日1回・3日(食事とともに,患者が30分以内に嘔吐したら再投与)+
プリマキン
52.6mg(30mg塩基=2錠)経口1日1回・14日(G6PD正常の場合),または
成人
アルテメテル・ルメファントリン
4錠(1錠中20mg/120mg)1回,8時間後さらに4錠,その後4錠を12時間ごと・2日(食事とともに)+
プリマキン
52.6mg(30mg塩基=2錠)経口1日1回・14日(G6PD正常の場合),または
Quinine
650mg経口1日3回・3日(東南アジアでは7日)+(
DOXY
100mg経口1日2回または
TC
250mg経口1日4回)+
プリマキン
52.6mg(30mg塩基=2錠)経口1日1回・14日
小児
アルテメテル・ルメファントリン
(20mg/120mg錠):体重に基づく用量(上記参照)+
プリマキン
0.5mg/kg塩基経口1日1回・14日
アトバコン・プログアニル
(小児用錠は62.5mg/25mg)(体重に基づく用量:下記参照)+
プリマキン
0.5mg/kg塩基経口1日1回・14日
<5kg:こうした乳児および授乳している母親には推奨されない
5~8 kg:小児用2錠 1日1回・3日
9~10 kg:小児用3錠 1日1回・3日
11~20 kg:成人用1錠 1日1回・3日
21~30 kg:成人用2錠 1日1回・3日
31~40 kg:成人用3錠 1日1回・3日
>40 kg:成人用量
妊婦
アルテメテル・ルメファントリン
(全妊娠期)または
Quinine
/
CLDM
プリマキン使用については下記コメント参照
Quinine
10mg/kg経口1日3回・3日(東南アジアでは7日)+
DOXY
2.2mg/kg1日2回・7日+
プリマキン
0.5mg/kg塩基経口1日1回・14日.現在米国小児科学会は,すべての年齢で
DOXY
の使用を21日まで可としている.
第二選択
小児:
Quinine
10m/kg経口1日3回・3日(東南アジアなら7日)+
CLDM
20mg/kg/日1日3回に分割+
プリマキン
0.5mg/kg塩基経口1日1回・14日
コメント
肥満(WHO警告):過体重または身体が大きい成人での用量,薬物動態,治療効果の間の関連に関するエビデンスは限られており,代替処方用量は治療試験での評価を受けているわけではない.
データがないため,治療者は身体が大きい成人での治療効果を,可能な限りつねにフォローアップしなければならない.
妊婦
アルテメテル・ルメファントリンは現在,WHOとCDCより,全妊娠期間での使用が推奨されている.
有用性がリスクを上回る場合には,DOXYやTCを用いてもよい.
妊婦ではプリマキンまたはTafenoquineは避ける.
P. vivax
感染の妊婦は,妊娠期間中Chloroquineによる予防(300mg塩基週1回)を続ける.出産後は,G6PD欠損がなければプリマキンまたはTafenoquineで治療する.
プリマキン
プリマキンまたはTafenoquineは
P. ovale
治療において,肝臓内に潜伏する寄生虫を除去するために追加される.Tafenoquineは初期治療でChloroquineが使われた場合にのみ使用する.プリマキン投与を開始する前にG6PD欠損の有無を確認すること.軽度G6PD欠損の場合は,プリマキンの用量を45mg経口週1回(WHO用量は0.75mg/kg)・8週とすること.注:重症反応はまれ.
WHO:プリマキン14日は,実行可能な選択肢としてはもはや推奨されない.
Tafenoquine
TafenoquineはChloroquineとの併用でのみ用いる.もとの添付文書では他の抗マラリア薬(アルテメテル・ルメファントリン,アトバコン・プログアニル,Quinine,DOXY)との併用が可とされていたが,変更された.
Tafenoquine succinate
定量検査で正常G6PD活性>70%が必要.迅速検査または定性的検査を用いないこと.
16歳未満での使用は承認されていない.
G6PD検査結果の解釈は難しい.総説
J Travel Med 26: taz023, 2019
参照.プリマキンとはG6PD基準が異なる.
G6PD迅速検査ポイントオブケアが先行開発されている(
PLoS Negl Trop Dis 17: e0011652, 2023
)
G6PD欠損に関するWHOの新しい(2024年)分類システム:
Bull World Health Organ 102: 615, 2024
.
Tafenoquineは2018年にFDAにより承認された.現在ではArakoda(米国)およびKodatef(オーストラリア)として市販されている.
P. vivax
の根治には100mg錠3錠1回を使用すること.
WHOガイドライン:ほとんどの流行地域では定量的G6PD検査が利用できないため,Tafenoquineは,
P. vivaxの
根治治療としては認められない.
米国でのACT:アルテメテル・ルメファントリンがFDAの承認した唯一のACTである.
米国の病院や小売薬局のどこでも在庫があるわけではない.
通常は,地域の薬物物流倉庫に在庫があるが,緊急の場合でも治療開始から入手に24時間遅れる.
他の第一選択薬が容易に入手できる場合は,Coartem(アルテメテル・ルメファントリン)を入手するために治療開始を遅らせてはならない.
迅速に入手するための情報は,1855-COARTEMに連絡.
ACT治療薬であるDihydroartemisinin/Piperaquineはヨーロッパで承認され入手可能となっている.
Artesunate/メフロキンは耐性
P. vivax
に対して有効(
Clin Infect Dis 62: 1403, 2016
).
P. vivax
感染におけるPyronaridine/Artesunateのデータは少ないが,有効と考えられる.
予防が失敗した同じ薬物を治療に用いないこと
Chloroquineは半減期が長く,QTc延長を引き起こす.わずかな用量超過あるいは数日間の投与回数超過により,毒性が発現したり死亡することもある.
【日本の情報】
熱帯病・寄生虫症治療のための国内未承認薬については,
熱帯病治療薬研究班オーファンドラッグ中央保管機関
のサイトを参照.
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2024/08/26