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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
マラリア-合併症なし-
Plasmodium falciparum
(または種は不明)
(
2024/06/18 更新
)
臨床状況
マラリアで合併症なし(
Plasmodium falciparum
と判明または推測される,あるいは種は不明だが
P. falciparum
の可能性がある)
Chloroquine感受性
中米のパナマ運河西側,カリブ海沿岸,韓国,ほとんどの中東諸国では,
P. falciparum
を含むすべてのマラリア種はChloroquine感受性である.
Chloroquine耐性/耐性不明
WHOのガイドラインでは,Chloroquine感受性/耐性
P. falciparum
を区別せず,どちらにもArtemisinin併用治療(ACT)を推奨している.たとえば合併症のない
P. falciparum
マラリアにはアルテメテル・ルメファントリンが第一選択である.
マラリアに感染した地域を知ることが重要.東南アジアなら,耐性があるため推奨が異なり,メフロキンは使用しないこと.
寄生虫血症
≧
4%(予防接種していない旅行者なら
≧
2%)またはHct<20なら,臨床的には軽度でも重症マラリアとして治療.
重症マラリアのCDCカットオフ値5%.
診断/病原体
診断
マラリア迅速診断検査が承認されている:
BinaxNOW
.いまだ多くの医療施設で迅速診断検査のみが行われ,塗抹標本は行われていない.
警告
:HRP2/3欠損突然変異体が世界的に増加しているため,もはや迅速診断検査陰性で確実には
P.falciparum
感染を除外できない
迅速診断検査陰性となった場合は,ただちにマラリア血液塗抹標本検査を実施すること(
Malar J 21: 26, 2022
)
2000年早期のオリジナル臨床試験
臨床的に重大な
P. falciparum
寄生虫血症については感度>96%
通常のケースである低度の非
falciparum
寄生虫血症については感度50%
特異度は高い:陽性例を治療する
種の決定には顕微鏡検査が必要
治療が奏功しても1ヵ月以上は陽性が続くことがある
血液フィルムは,適切な訓練を受けた検査者が評価しなければならない.
民間の検査会社からのPCRが利用可能であり,ゴールドスタンダードである.
血清検査は限られた価値しかない.
病原体
Plasmodium falciparum
(熱帯熱マラリア原虫)
Plasmodium
の種は不明だが,
P. falciparum
の可能性がある場合
第一選択
Chloroquine耐性/耐性不明
成人
アトバコン・プログアニル
(250mg/100mg錠)成人用4錠経口1日1回・3日(食事とともに.患者が30分以内に嘔吐したら再投与),または
アルテメテル・ルメファントリン
(20mg/120mg錠)4錠1回,8時間後さらに4錠,その後4錠12時間ごと・2日(食事とともに),または
Quinine
650mg経口1日3回・3日(東南アジアでは7日)+(
DOXY
100mg経口1日2回または
TC
250mg経口1日4回)
Pyronaridine/Artesunate(180mg/60mg錠)体重≧65kgなら4錠1日1回・3日,45~<65kgなら3錠(米国では入手できない)
小児
アルテメテル・ルメファントリン
(20mg/120mg錠):体重に基づく用量(下記参照)
アトバコン・プログアニル
(小児用は62.5mg/25mg錠)
体重<5 kg:推奨されない
5~8 kg:小児用2錠 1日1回・3日
9~10 kg:小児用3錠 1日1回・3日
11~20 kg:成人用1錠 1日1回・3日
21~30 kg:成人用2錠 1日1回・3日
31~40 kg:成人用3錠 1日1回・3日
>40 kg:成人と同様,または
Quinine
10mg/kg経口1日3回・3日(東南アジアでは7日)+
DOXY
2.2mg/kg1日2回・7日(小児における
DOXY
についてはコメント参照)
Pyronaridine/Artesunate(180mg/60mg錠)体重24~45kgなら2錠1日1回・3日,20~<24kgなら1錠
経口懸濁液のための小児用顆粒(60mg/20mg包)
体重 5~<8 kg:1包1日1回・3日
体重8~<15 kg:2包1日1回・3日
体重15~<20 kg:3包1日1回・3日
Chloroquine感受性
成人
Chloroquine
1g(600mg塩基)経口,その後0.5gを6,24,48時間後.合計2500mg(全コース500mg錠×5回)
ヒドロキシクロロキン
800mg塩(=620mg塩基)経口,さらに400mg塩(=310mg塩基)経口・6,24,48時間後.合計2000mg塩(=1550mg塩基)
アルテメテル・ルメファントリン
(20mg/120mg錠)4錠1回,8時間後さらに4錠,その後4錠12時間ごと・2日(食事とともに)注:CDCはChloroquine感受性
P. falciparum
にはACTを推奨していない.
Pyronaridine/Artesunate体重≧65kgなら4錠(180mg/60mg錠)1日1回・3日,45~<65kgなら3錠(米国では入手できない)
小児
Chloroquine
10mg/kg塩基経口,その後5mg/kg塩基を6,24,48時間後.合計25mg/kg塩基(成人用量を超えてはならない)
ヒドロキシクロロキン
10mg/kg塩基経口ただちに,さらに5mg/kg塩基経口・6,24,48時間後.合計25mg/kg塩基
アルテメテル・ルメファントリン
(20mg/120mg錠)体重別用量:
体重<5 kg:こうした乳児および乳児に授乳する母親には推奨されない
5~<15 kg:1錠(20mg/120mg)1回,8時間後さらに1錠,その後1錠12時間ごと・2日
15~<25 kg:2錠(40mg/240mg)1回,8時間後さらに2錠,その後2錠12時間ごと・2日
25~<35 kg:3錠(60mg/360mg)1回,8時間後さらに3錠,その後3錠12時間ごと・2日
≧35 kg:成人と同様
CDCはChloroquine感受性
P. falciparum
にはACTを推奨していない.
Pyronaridine/Artesunate(180mg/60mg錠)体重24~<45kgなら2錠1日1回・3日,20~<24kgなら1錠
■経口懸濁液のための小児用顆粒(60mg/20mg包)
体重 5~<8 kg:1包1日1回・3日
8~<15 kg:2包1日1回・3日
15~<20 kg:3包1日1回・3日
第二選択
Chloroquine感受性
アトバコン・プログアニル
(250mg/100mg錠)成人用4錠経口1日1回・3日(食事とともに,患者が30分以内に嘔吐したら再投与),または
Quinine
650mg経口1日3回・3日(東南アジアでの感染なら7日)+(
DOXY
100mg経口1日2回または
TC
250mg経口1日4回)
Chloroquine耐性/耐性不明
メフロキン
750mg経口1回,その6~12時間後500mg経口1回
小児:13.7mg塩基/kg(15mg塩/kg)1回,その後9.1mg塩基/kg(10mg塩/kg)経口6~12時間後
他の選択肢がない場合にのみ用いる
P. falciparum
の東南アジアからの株に対しては有効でない.
妊婦
アルテメテル・ルメファントリン(20mg/120mg錠)4錠1回,8時間後さらに4錠,その後4錠12時間ごと・2日(食事とともに).現在では妊娠のどの時期でも選択薬となる(CDCの推奨).
アルテメテル・ルメファントリンは安全であり,第1期ではQuinineよりも安全である(
Clin Infect Dis 78: 245, 2024
).
Quinine 10mg/kg経口1日3回・3日(東南アジアでは7日)+
CLDM
20mg/kg/日1日3回に分割・7日.
Quinineが入手可能でアルテメテル・ルメファントリンが入手不可能な場合,治療開始を遅らせてはならない
PyramaxおよびACT(Sulfadoxine/Pyriethamineを含む場合)は,妊娠第1期には禁忌.
妊婦を対象としたアトバコン/プログアニルの比較試験はない.妊娠第2期,第3期はおそらく安全.妊婦に関する参考文献:
Lancet Infect Dis 7:118, 2007
;
Lancet Infect Dis 7:136, 200
7.
コメント
米国でのACT:アルテメテル・ルメファントリンがFDAの承認した唯一のACTだが,広く流通しているわけではない.入手するには1-855-COARTEMに連絡すること.
米国の病院や小売薬局のどこでも在庫があるわけではない.
通常は,地域の薬物物流倉庫に在庫があるが,緊急の場合でも治療開始から入手に最大24時間遅れる.
他の第一選択薬が容易に入手できる場合は,Coartem(アルテメテル・ルメファントリン)を入手するために治療開始を遅らせてはならない.
迅速に入手するための情報は,1855-COARTEMに連絡.
ACT治療薬であるDihydroartemisinin/Piperaquineはヨーロッパで承認され入手可能で,WHOは推奨している.
WHO 2022年改訂:小児・体重<25kgは少なくともDihydroartemisinin 2.5mg/kg/日およびPiperaquine 20mg/kg/日を3日受けなければならない.
WHOが推奨するACTにはArtesunate/メフロキン,Artesunate/Amodiaquine,Artesunate+Sulfadoxine/Pyrimethamine(地域でS/P耐性の場合には使用しないこと)があり,地域によっては使用可能.
予防で失敗した薬物を治療に用いないこと.
アルテミシニン耐性は,アジアの大メコン圏(
Antimicrob Agents Chemother 65: e0112121, 2021
),エリトリア,ルワンダ,ウガンダで発現している.
アルテミシニン耐性だけで治療失敗となることはほとんどないが,アルテミシニン誘導体とACTでの併用薬(大メコン圏のみ)の両方に耐性の場合は治療失敗となる.
肥満(WHO警告):過体重または体の大きい成人での経口治療の用量,薬物動態と治療効果の関連についてのエビデンスは限られているため,治療臨床試験では,別の用量選択肢は評価されてこなかった.
データがないため,治療を行う医師は,可能な限り体の大きい成人で治療効果をフォローアップしなければならない.
肥満:薬物動態についてのわずかなデータからは,成人での用量調整は不要であることが示唆される(
Int J Antimicrob Agents 59: 106482, 2022
).
2つの小規模臨床試験では,体重>65kgの非免疫患者で時として治療失敗が起こった(
Am J Trop Med Hyg 78: 241, 2008
;
Clin Infect Dis 64: 199, 2017
).
以下の症状・所見は通常同時に発現するが,どれか1つでもあれば(どの種によるものでも)重症マラリアであり,非経口治療が必要となる.
臨床所見:意識障害,ショック,肺水腫,急性呼吸促迫症候群(ARDS),DIC,けいれん
黄疸は少なくとも1つの他の基準項目が必要となる
検査所見:重症貧血(成人ではHct<20%),腎障害,ヘモグロブリン血症,乳酸アシドーシス(バイカーボネート<15),低血糖症(<40mg/dL),寄生虫血症>5%(CDC基準)のどれか1つが当てはまれば,他の基準を1つも満たさなくとも重症マラリアと定義され,静注治療が必要となる.
WHO重症マラリア基準では,免疫のない個人で寄生虫血症>4%.多くの米国の臨床医は,この境界値で静注Artesunateを用いる.
注:DOXYについて,米国小児科学会は,現在では短期間(≦21日)なら年齢に関わらず安全に投与できると推奨している.
マラリアに関するCLDMのデータは限られるため,可能なら妊婦以外では避ける.
Quinine:米国で入手可能な製剤は324mgカプセルのみのため,Quinineによる小児の治療は非常に難しい.
メフロキンは神経精神反応があるため明らかに第二選択である.
東南アジアで感染したマラリアには耐性のため使用しない.
FDAのメフロキンについての
警告(Black box warning)
では,神経精神科的副作用および前庭症状が薬剤中断後も消失することなく続くとされている.
調剤薬剤師は,この警告を含んだ説明書きおよびポケットカードを患者に渡さなければならない.
HIV:Trimoxazoleを使用している場合はArtesunate+SPを避けること,エファビレンツまたはジドブジンを使用している場合はArtesunate+Amodiaquineを避けること.
Chloroquineとメフロキンは半減期が長く,QTc間隔を延長する.わずかな用量超過あるいは数日間の投与回数超過により,毒性が発現したり死亡することもある.
伝播リスクが低い流行地域では,伝播を抑制するために
P. falciparum
感染者にプリマキン0.25mg/kg1回をACTと併用して投与しなければならない(ただし,妊婦,生後<6ヵ月の乳児,生後<6ヵ月の乳児に授乳している母親は例外)
G6PD検査の必要はない.
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2024/06/18