日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

マラリア-自己治療  (2023/09/26 更新)
旅行者の緊急時の自己治療


臨床状況

  • マラリアの自己治療は,海外滞在中に信頼できる医療が受けられない状況にあり,かつ検査によりマラリアと診断された場合にのみ行われる.
  • 地域の医師の管理下,またはかかりつけ医による遠隔からの指導のもと服用する
  • 偽薬品への曝露を避ける
  • 高リスクでありながら継続的な予防をしない人や(多くの場合,目的地が低リスクの旅行者),費用の関係から次善の予防しかできない人に対し,現地で信頼できる薬剤供給がなされていない場合に行われることもある。
  • マラリアのリスクが非常に低くても,現地で信頼できる薬剤供給がなされていない場合には,予防をしようとしない旅行者について,自己治療が考慮される.
  • 医療がすぐに受けられない場合には,薬剤を自己判断で服用することは可能であるが,あくまで適切な医学的処方を受けるまでの一時的な処置である.
  • 旅行用に支給されるマラリア迅速診断検査(RDT)で適切に自己診断できるかどうかについては,十分なエビデンスがない.

病原体

  • Plasmodium

第一選択

成人
  • 4錠(80mg/480mg)1回
  • さらに8時間後に4錠
  • その後,4錠を12時間ごと・2日(食事とともに)
小児
  • 体重<5 kg:これらの乳幼児や授乳中の母親には推奨されない
  • 体重5~<15 kg:1錠(20mg/120mg)1回,さらに8時間後に1錠,その後1錠を12時間ごと・2日
  • 15~<25 kg:2錠(40mg/240mg)1回,さらに8時間後に2錠,その後2錠を12時間ごと・2日
  • 25~<35 kg:3錠(60mg/360mg)1回,さらに8時間後に3錠,その後3錠を12時間ごと・2日
  • ≧35 kg:成人と同様.
成人
小児
  • 体重<5 kgでは推奨されない.
  • 5~8 kg:小児用2錠 1日1回・3日
  • 9~10 kg:小児用3錠 1日1回・3日
  • 11~20 kg:成人用1錠 1日1回・3日
  • 21~30 kg:成人用2錠 1日1回・3日
  • 31~40 kg:成人用3錠 1日1回・3日
  • >40 kg:成人と同様
成人
  • 体重<75kgなら成人用3錠経口1日1回・3日
  • 体重≧75kgなら成人用4錠経口1日1回・3日
小児
  • 体重5~<7kg:小児用(20mg/160mg)1/2錠1日1回・3日
  • 7~<13kg:小児用(20mg/160mg)1錠1日1回・3日
  • 13~<24kg:成人用(40mg/320mg)1錠1日1回・3日
  • 24~<36kg:成人用(40mg/320mg)2錠1日1回・3日
  • >36kg:成人と同様

第二選択

  • なし

コメント

  • アトバコン・プログアニル:
  • アトバコン・プログアニルの予防が行われている場合には用いない.
  • CrCl<30mL/分の場合には用いない.
  • 妊婦や授乳中の乳児が<5kgの場合には用いない.
  • アルテメテル・ルメファントリンはヨーロッパではリアメット,米国その他ではCoartemとして販売されている.
  • メフロキンの予防が行われている場合には用いない.
  • 米国の病院や小売薬局のどこでも在庫があるわけではない.
  • 通常は,地域の薬物物流倉庫に在庫があり,緊急の場合でも治療開始から入手は24時間遅れる.
  • 他の第一選択薬が容易に入手できる場合は,Coartem(アルテメテル・ルメファントリン)を入手するために治療開始を遅らせてはならない.
  • 迅速に入手するための情報は,855-COARTEMに連絡.
  • アルテミシニン耐性だけで治療失敗になることはほとんどないが,アルテミシニン誘導体とACTでの併用薬(メコン圏のみ)の両方に耐性の場合は治療失敗となる.
  • メコン圏ではACTでの自己治療は許可されていないが,アフリカではACTは依然として有効性が高い.
  • メフロキン,Quinineとも自己治療に用いるには副作用が多すぎる.
  • Dihydroartemisinin/Piperaquine(Eurartesim)はヨーロッパの一部の国で入手可能,ジェネリック品は一部のマラリア流行国で入手可能.
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2023/09/25