Dihydroartemisinin/Piperaquine (2024/08/06 更新)

Contents

1.　用法および用量
　 1.　使用
　 2.　成人用量
　 3.　小児用量
　 4.　腎障害時の用量調整
　 5.　肝障害時の用量調整
2.　副作用/妊娠時のリスク
3.　薬理学
4.　酵素・トランスポーター媒介相互作用
5.　主要な薬物相互作用

1.　用法および用量

　1.　使用

合併症のないP. falciparumの治療にヨーロッパで承認された抗マラリア薬であり，東南アジアでは国家プログラムの一部となっている．

東南アジアの国家プログラムでは，耐性発現のため，もはや使用していない．

大メコン圏（Antimicrob Agents Chemother 65: e0112121, 2021），エリトリア，ルワンダ，ウガンダで，Artemisinin耐性が発現している．

Artemisinin耐性だけで治療失敗となることはほぼないが，Artemisinin誘導体とACTでの併用薬（メコン圏のみ）の両方に耐性の場合は治療失敗となる．
ACTはアフリカでは依然として有効性が高い．

Artemisinin併用治療における薬物相互作用に関する優れた総説：J Clin Pharmacol 62: 1197, 2022．下記の「主要な薬物相互作用」も参照．
小児での使用：錠剤は粉砕し，水と混ぜてただちに服用させてもよい
警告：薬物相互作用が多い（下記薬物相互作用の表を参照，ただしすべてをリストしたものではない）

　2.　成人用量

体重	用量
5～＜7kg	PPQ 80mg/DHA 10mg経口24時間ごと・3日
7～＜13kg	PPQ 160mg/DHA 20mg経口24時間ごと・3日
13～＜24kg	PPQ 320mg/DHA 40mg経口24時間ごと・3日
24～＜36kg	PPQ 640mg/DHA 80mg経口24時間ごと・3日
36～75kg	PPQ 960mg/DHA 120mg経口24時間ごと・3日
75～＜100kg	PPQ 1280mg/DHA 160mg経口24時間ごと・3日
＞100kg	データなし

用量は体重に基づく（PPQ：piperaquine，DHA：dihydroartemisinin）

　3.　小児用量

用量（生後＞28日）

生後＞6ヵ月：
体重5～＜7 kg: DHA 10mg/PPQ 80mg 24時間ごと・3日
体重7～＜13 kg: DHA 20mg/PPQ 160mg 24時間ごと・3日
体重13～＜24kg：DHA 40mg/PPQ 320mg 24時間ごと・3日
体重24～＜36kg：DHA 80mg/PPQ 640mg 24時間ごと・3日
体重36～＜75kg：DHA 120mg/PPQ 960mg 24時間ごと・3日
体重75～100kg：DHA 160mg/PPQ 1280mg 24時間ごと・3日
体重＞100kg：データなし

最大/日

－

　4.　腎障害時の用量調整

中等度から重度の腎障害患者でのデータなし

　5.　肝障害時の用量調整

中等度から重度の肝障害患者でのデータなし

2.　副作用/妊娠時のリスク

副作用

禁忌

重症マラリア
QTc延長

PPQの最高血中濃度が上がりすぎるのを防ぐため，DHA/PPQは食事の3時間以上後に服用し，また服用後3時間は食事をしないこと．DHA/PPQは不整脈既往歴のある患者，不整脈を起こしやすい心疾患のある患者，QT間隔延長作用のある薬剤投与を受けている患者では使用しないこと．心電図のモニターを行う．

不整脈，徐脈
低カリウム血症，低カルシウム血症，低マグネシウム血症

副作用（多くみられるもの）

貧血，頭痛，QTc延長による頻脈，無力症，発熱

副作用（まれなもの）

呼吸器感染，インフルエンザ，食欲不振，けいれん，めまい，不整脈，徐脈，咳，嘔吐，下痢，悪心，腹痛，肝炎，肝肥大，肝機能異常，掻痒感，関節痛，筋肉痛

妊娠時のリスク

FDAリスク区分（新）：ヒトでのデータは不十分，使用を避ける
授乳中の使用：データなし，使用を避ける

3.　薬理学

PK/PD指標	データなし
剤形	錠剤（DHA 20mg/PPQ 160mg）錠剤（DHA 40mg/PPQ 320mg）
食事に関する推奨（経口薬）1	錠：食事なし
経口吸収率（％）	データなし
Tmax（時間）	DHA：1～2 PPQ：5
最高血清濃度2（μg/mL）	DHA：0.75（用量は特定されていない） PPQ：0.18（用量は特定されていない）
最高尿中濃度（μg/mL）	データなし
蛋白結合（％）	DHA：44～93 PPQ：＞99
分布容積3（Vd）	DHA：0.8L/kg PPQ：730L/kg
平均血清半減期4（T1/2, 時間）	DHA：1 PPQ：22日
排泄	DHA：グルクロン酸抱合 PPQ：胆汁中
胆汁移行性5（％）	データなし
脳脊髄液/血液6（％）	データなし
治療が可能になるだけの脳脊髄移行性7	データなし
AUC８（μg・時間/mL）	DHA：2（用量は特定されない，0～inf） PPQ：1.7（用量は特定されない，0～inf）

注記のない場合は成人用製剤
SD：単回投与後，SS：複数回投与後の定常状態
V/F：（Vd）÷（経口生物学的利用能），Vss：定常状態におけるVd，Vss/F：（定常状態におけるVd）÷（経口生物学的利用能）
CrCl＞80 mL/分と想定
（胆汁中の最高濃度）÷（血清中の最高濃度）×100
炎症時における脳脊髄液濃度
薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定．脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
AUC：血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve．0～inf＝AUC0-inf，0～ｘ時間＝AUC0-x

4.　酵素・トランスポーター媒介相互作用

CYP450の基質	PPQ：3A4，弱い2C9
トランスポーターの基質
CYP450の阻害	DHA：1A9，2C19 PPQ：3A4，2C19
トランスポーターの阻害
CYP450誘導	PPQ：2E1？
トランスポーターの誘導
血清中薬物濃度への影響	↑または↓

血清中薬物濃度への影響は，当該抗微生物薬により影響を受ける併用薬の血清中濃度である．↑：上昇，↓：低下，空白：薬物への影響なし

5.　主要な薬物相互作用

薬剤	濃度への影響（その他）	推奨される対応
アセトアミノフェン	鎮痛効果↓	モニター，用量調整
カルバマゼピン	PPQ↓，DHA↓	併用を避ける
クラリスロマイシン	PPQ↑	モニター（心電図），用量調整
シクロスポリン	シクロスポリン↑	モニター，用量調整
Enflurane	Enflurane↓	モニター，用量調整
Halothane	Halothane↓	モニター，用量調整
HIVプロテアーゼ阻害薬	PPQ↑	モニター（心電図），用量調整
イソフルラン	イソフルラン↓	モニター，用量調整
ミダゾラム	ミダゾラム↑	モニター，用量調整
Nefazodone	PPQ↑	モニター（心電図），用量調整
オメプラゾール	オメプラゾール↑	モニター，用量調整
フェノバルビタール	PPQ↓，DHA↓	併用を避ける
フェニトイン	PPQ↓，DHA↓	併用を避ける
リファンピシン	PPQ↓，DHA↓	併用を避ける
セイヨウオトギリソウ	PPQ↓，DHA↓	併用を避ける
テオフィリン	テオフィリン↑↓	モニター，用量調整
ベラパミル	PPQ↑	モニター（心電図），用量調整