Oritavancin (2024/10/22 更新)
|
Contents
1. 用法および用量
1. 使用
2. 成人用量
3. 小児用量
4. 腎障害時の用量調整
5. その他の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
5. 酵素・トランスポーター媒介相互作用
6. 主要な薬物相互作用
7. コメント
1. 用法および用量
1. 使用
-
Oritavancinは長時間作用性のリポグリコペプチド系静注剤(VCMに類似)であり,感受性のあるグラム陽性菌による成人の急性皮膚および軟部組織感染に対し,1回投与による治療が承認されている.
-
抗菌薬の他の選択肢については,抗菌薬耐性の遺伝子型参照
-
2種類の静注製剤がある
-
Orbactiv(400mgバイアル):2014年承認,3時間以上かけて静注する.
-
Kimyrsa(1200mgバイアル):2021年承認,1時間以上かけて静注する.
-
その他の相違点:バイアルサイズ,再構成・希釈方法,希釈液
-
in vitroで事実上すべてのグラム陽性球菌に活性がある.in vitroでの活性と臨床試験に基づき,添付文書では以下に活性があるとされている:
-
Staphylococcus aureus(MSSAおよびMRSA)
-
Streptococcus pyogenes
-
Streptococcus agalactiae
-
Streptococcus dysgalactiae
-
Streptococcus anginosusグループ
-
VCM感受性Enterococcus faecalis
-
FDAが承認した添付文書には,原因菌がin vitroでOritavancinに感受性でも骨髄炎の治療には使用しないよう記載されている.第III相試験では,Oritavancin群では対照群よりも骨髄炎の発症率が高かった.下記コメント参照.
-
臨床試験結果はないが,in vitroでVCM耐性Enterococcus(VRE),VCM中等度耐性S. aureus(VISA),VCM耐性S. aureus(VRSA)に活性.
-
終末相血清半減期が245時間と非常に長いため,1回投与による治療が可能である.
-
1回投与の処方は,非経口治療が必要だが入院は必要でない患者に有用である可能性がある.
-
注:1回投与は凝固に関する一部の臨床検査値を実際よりも上昇させることがある.詳細は副作用の項参照.
2. 成人用量
-
用量:1200mg3時間以上かけて静注1回
-
調製:
-
400mgバイアル3本にそれぞれ40mLの滅菌水を加え,泡立たないようゆっくりと回す
-
5% ブドウ糖溶液1000mLバックから120mLを抜き取り,薬剤を加える
-
室温で保管し6時間以内に使用する.冷蔵なら12時間以内.
-
生食は使用不可(薬剤が凝固沈殿)
-
用量:1200mg1時間以上かけて静注1回
-
調製:
-
1200mgバイアル1本に40mLの滅菌水を加え,泡立たないようゆっくりと回す
-
5% ブドウ糖溶液または生食の250mLバックから40mLを抜き取り,薬剤を加える
-
室温で保管し4時間以内に使用する.冷蔵なら12時間以内.
-
Orbactivと異なり,Kimyrsaは生食が使用可.
3. 小児用量
用量(生後>28日)
|
安全性・有効性は確立されていない
|
最大/日
|
-
|
4. 腎障害時の用量調整
半減期(時間)(腎機能正常)
|
245(終末相半減期)
|
半減期(時間)(ESRD)
|
データなし
|
用量(腎機能正常)
|
1200mg静注1回
|
CrClまたはeGFR
|
軽度~中等度の腎障害患者では用量調整の必要なし 重症腎障害患者に関する研究は行われていない.
|
血液透析
|
血液透析によっては血中から除去されない
|
CAPD
|
データなし
|
CRRT
|
データなし
|
SLED
|
データなし
|
5. その他の用量調整
-
軽症~中等症の肝障害患者では用量調整の必要なし.
-
重症肝障害患者における薬物動態の評価は行われていない.
2. 副作用/妊娠時のリスク
副作用
-
最も多く,≧3%で報告あり:悪心,嘔吐,下痢,頭痛.
-
急性じんましん/紅潮/掻痒感が起こったことがある.
-
VCMと同様にヒスタミン放出症候群に似た症状が報告されている.反応が起こったら投与中止.多くの患者でVCMと同様の反応がみられたが,注入速度を落とすことで治療再開が可能だった.
-
C. difficile腸炎.
-
Oritavancinは,凝固試験で用いられるリン酸試薬に結合し,その作用を阻害することがある.薬剤投与後のaPTTの120時間(5日間)にわたる延長,PT-INRの12時間にわたる延長のため,静注未分画ヘパリン投与は禁忌である.D-ダイマー濃度は最大72時間人為的に上昇する.注:Oritavancinはin vivoでは凝固系に影響を与えない.
妊娠時のリスク
-
FDAリスク区分(新):ヒトでのデータなし,動物での毒性のエビデンスなし
-
授乳中の使用:おそらくは安全だが,モニターする,ただしデータはない;可能なら避ける
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
PK/PD指標
|
24時間AUC/MIC
|
剤形
|
注射剤
|
食事に関する推奨(経口薬)1
|
-
|
経口吸収率(%)
|
-
|
Tmax(時間)
|
-
|
最高血清濃度2(μg/mL)
|
148(1200mg1時間以上かけて静注,SD)
|
最高尿中濃度(μg/mL)
|
データなし
|
蛋白結合(%)
|
85
|
分布容積3(Vd)
|
87.6 L
|
平均血清半減期4(時間)
|
245(終末相半減期)
|
排泄
|
腎,糞便
|
胆汁移行性5(%)
|
データなし
|
脳脊髄液/血液6(%)
|
データなし
|
治療が可能になるだけの脳脊髄移行性7
|
なし
|
AUC8(μg・時間/mL)
|
1460(1200mg1時間以上かけて静注,0~72時間)
|
-
注記のない場合は成人用経口製剤
-
SD:単回投与後,SS:複数回投与後の定常状態
-
V/F:(Vd)÷(経口生物学的利用能),Vss:定常状態におけるVd,Vss/F:(定常状態におけるVd)÷(経口生物学的利用能)
-
CrCl>80 mL/分と想定
-
(胆汁中の最高濃度)÷(血清中の最高濃度)×100
-
炎症時における脳脊髄液濃度
-
薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定.脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
-
AUC:血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the plasma concentration-time curve.0~inf=AUC0-inf,0~x時間=AUC0-x
5. 酵素・トランスポーター媒介相互作用
CYP450の基質
|
|
トランスポーターの基質
|
|
CYP450の阻害
|
2C9(弱い),2C19(弱い)
|
トランスポーターの阻害
|
|
CYP450誘導
|
2D6(弱い),3A4(弱い)
|
トランスポーターの誘導
|
|
血清中薬物濃度への影響
|
軽度↑,または↓
|
血清中薬物濃度への影響は,当該抗微生物薬により影響を受ける併用薬の血清中濃度である.↑:上昇,↓:低下
6. 主要な薬物相互作用
薬剤
|
濃度への影響(その他)
|
推奨される対応
|
未分画ヘパリン
|
aPTT結果が5日間まで実際よりも上昇する
|
Oritavancin投与後120時間は禁忌
|
7. コメント
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing↑ page top