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ホスホマイシン(経口) (2025/11/25 更新)
FOM 主な商品名:ホスミシン
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「サンフォード感染症治療ガイド」の中で推奨されている薬剤の適応および用量は,日本で認可されているものとは異なっている場合がありますので,薬剤選択を考慮する場合には,必ず日本での添付文書および最新安全性情報に基づいて行って下さい. →日本の添付文書情報検索サイト
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Contents
1. 用法および用量
1. 使用
2. 成人用量
3. 小児用量
4. 腎障害時の用量調整
5. 肝障害時の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
5. 主要な薬物相互作用
1. 用法および用量
1. 使用
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ホスホマイシン(FOM)は,ホスホン酸誘導体である
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経口製剤は1996年にFDAに承認されたトロメタミンプロドラッグである.3gのFOM顆粒を含んだ1回投与用分包として市販されてる.の静注製剤はホスホマイシン二ナトリウム,ホスホマイシン(静注)参照.
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【注】FOM 経口は米国ではFosfomycin tromethamineであり,日本のホスホマイシンカルシウムとは異なる.
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唯一の適応:E. coliおよびE. faecalisの感受性のある株による単純性膀胱炎の治療
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独自の作用機序.ホスホエノールピルビン酸の構造類似体であるFOMは,MurA(UDP-N-アセチルグルコサミン-エノールピルビン酸転移酵素)を阻害する.この酵素は、ペプチドグリカン合成における最初の反応段階を触媒する(Cold Spring Harb Perspect Med 7: a025262, 2017).
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時間依存性の殺菌作用をもつと考えられる.
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耐性は主として染色体性で,プラスミド媒介の耐性はまれ.
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機序:細胞壁を通しての薬剤輸送の減少,または酵素による薬剤の変化(たとえば,グルタチオン付加).
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他のカテゴリーの抗菌薬との交差耐性はまれ.
2. 成人用量
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単純性膀胱炎:3g経口1回(食事の影響なし)
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適応外使用
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ESBL産生E. coliによる複雑性尿路感染症
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慢性細菌性前立腺炎
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尿路感染症再発の予防
3. 小児用量
用量(生後>28日)
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年齢>12歳:3g経口1回 年齢≦12歳:安全性と有効性は未確立
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最大/日
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3g
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4. 腎障害時の用量調整
半減期(時間)(腎機能正常)
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5.7
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半減期(時間)(ESRD)
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50
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用量(腎機能正常)
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3g経口1回
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腎障害時の用量
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CrCl≧10:用量調整不要 CrCl<10:使用を避ける(尿中濃度が低い)
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血液透析
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データなし
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CAPD
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データなし
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CRRT
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データなし
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SLED
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データなし
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5. 肝障害時の用量調整
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軽症肝障害(Child-Pugh分類A):データなし
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中等症肝障害(Child-Pugh分類B):データなし
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重症肝障害(Child-Pugh分類C):データなし
2. 副作用/妊娠時のリスク
副作用
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下痢は,Nitrofurantoinでの6%,STでの2.3%と比べて,FOMは9%.
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4~10%の患者で頭痛が報告されている.
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まれに肝障害,特異体質または免疫の関与の可能性があり,通常は自然治癒するが完全に解消するまで数ヵ月かかることもある.症例報告と文献総説:Can Liver J 7: 377, 2024.
妊娠時のリスク
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FDAリスク区分(新):ヒトでの対照研究はない.動物での毒性のエビデンスなし
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授乳中の使用:乳汁中濃度は低く,乳汁中のカルシウムに結合するため吸収される可能性は低い.母乳育ちの乳児での副作用の可能性は低い1
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出典:Drugs and Lactation Database (LactMed)
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
PK/PD指標
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Time above MIC
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剤形
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3g顆粒(注:日本ではホスホマイシンカルシウム)
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食事に関する推奨(経口薬)1
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分包:食事の影響なし
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経口吸収率(%)
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37
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Tmax(時間)
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2
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最高血清濃度2(μg/mL)
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26.1(3g経口SD)
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最高尿中濃度(μg/mL)
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1053~4415(3g後4時間)3
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蛋白結合(%)
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ほとんどない
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分布容積4(Vd)
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136.1 L (Vss/F)
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平均血清半減期5(T1/2, 時間)
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5.7
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排泄
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腎
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胆汁移行性6(%)
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データなし
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脳脊髄液/血液7(%)
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データなし
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治療が可能になるだけの脳脊髄液移行性8
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なし
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AUC9(μg・時間/mL)
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145~193(3g経口,0~inf)
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†:日本にない剤形
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注記のない場合は成人用製剤
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SD:単回投与後,SS:複数回投与後の定常状態
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最高尿中濃度に関する文献:Can J Infect Dis Med Microbiol 2016: 2082693, 2016
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V/F:(Vd)÷(経口生物学的利用能);Vss:定常状態におけるVd;Vss/F:(定常状態におけるVd)÷(経口生物学的利用能)
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CrCl>80 mL/分と想定
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(胆汁中の最高濃度)÷(血清中の最高濃度)×100,ブランク=データなし
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炎症時における脳脊髄液濃度
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薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定.脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
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AUC:血中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve.0~inf=AUC0-inf,0~x時間=AUC0-x
5. 主要な薬物相互作用
薬剤
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濃度への影響(その他の影響)
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推奨される対応
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メトクロプラミド
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FOM(血清中濃度)↓
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併用を避ける
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プロベネシド
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FOMの尿中排泄↓
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併用を避ける
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