日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

ダプトマイシン  (2024/05/28 更新)
DAP
主な商品名:キュビシン

「サンフォード感染症治療ガイド」の中で推奨されている薬剤の適応および用量は,日本で認可されているものとは異なっている場合がありますので,薬剤選択を考慮する場合には,必ず日本での添付文書および最新安全性情報に基づいて行って下さい.
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Contents

1. 用法および用量
  1. 使用
  2. 成人用量
  3. 小児用量
  4. 腎障害時の用量調整
  5. その他の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
5. 主要な薬物相互作用
6. コメント

1. 用法および用量

 1. 使用

 2. 成人用量

皮膚/軟部組織
4~6mg/kg静注2分(急速静注)または30分(静注),24時間ごと:Clin Infect Dis 38: 1673, 2004参照.多くの専門家はすべての患者に6mg/kgを推奨している.
菌血症/右心系心内膜炎
8~12mg/kg静注2分(急速静注)または30分(静注),24時間ごと
■第I相試験では,12mg/kg静注24時間ごとまでの安全性が示されている:Antimicrob Agents Chemother 50: 3245, 2006
■in vitroデータおよび非対照臨床試験では,高用量のほうが効果が大きく,おそらく耐性も抑制されることが示唆されている.詳しくは下記コメントを参照.
■代表的な文献:Curr Infect Dis Rep 16: 429, 2014Antibiotics 24: 309, 2015
■左心系心内膜炎にも有効であると考えられるが,臨床研究データはない.

難治性MRSA菌血症および/または心内膜炎のサルベージ療法:DAPとCeftaroline併用に関して,早期のin vitroおよび臨床データがある.
■DAPとβラクタム薬(Nafcillin,Ceftaroline)またはSTを併用した患者でMRSA菌血症が解消し,臨床的改善が得られたという症例報告と小規模症例シリーズがある(Clin Infect Dis 53: 158, 2011Antimicrob Agents Chemother 56: 5709, 2012Antimicrob Agents Chemother 56: 5990, 2012).
■DAP+CeftarolineとVCMを比較したパイロット研究は,併用治療群の方が死亡率が明らかに低かったため,早期に中断された.研究デザインや実施方法について多くの問題が指摘されており,プロスペクティブ研究が必要である(Antimicrob Agents Chemother 63: e02483, 2019Antimicrob Agents Chemother 63: e00900,2019).
病的な肥満
体重に基づいて投与量を調整(Antimicrob Agents Chemother 51: 2741, 2007).レトロスペクティブ研究のデータからは,実際の体重と補正体重では結果は変わらないことが示唆されている(Ther Adv Infect Dis 6: 1, 2019).さらなるデータについては肥満患者における用量調整を参照.

 3. 小児用量

適応
用量(生後>28日)
最大/日
複雑性皮膚・軟部組織感染症
年齢12~17歳:7mg/kg(30分以上かけて)24時間ごと
年齢7~11歳:7mg/kg(30分以上かけて)24時間ごと
年齢2~6歳:9mg/kg(60分以上かけて)24時間ごと
年齢1~<2歳:10mg/kg(60分以上かけて)24時間ごと
(すべて治療期間≦14日)

S. aureus菌血症
年齢12~17歳:7mg/kg(30分以上かけて)24時間ごと
年齢7~11歳:9mg/kg(30分以上かけて)24時間ごと
年齢1~6歳:12mg/kg(60分以上かけて)24時間ごと
(すべて治療期間≦42日)

 4. 腎障害時の用量調整

半減期(時間)(腎機能正常)
8~9
半減期(時間)(ESRD)
30
用量(腎機能正常)
4~6mg/kg静注24時間ごと
CrClまたはeGFR
CrCl>50~90:4~6mg/kg24時間ごと
CrCl 30~49:4~6mg/kg24時間ごと
CrCl<30:6mg/kg48時間ごと
血液透析
透析後に6mg/kg48時間ごと.透析中にDAP使用なら,7~9mg/kg(Clin J Am Soc Nephrol 4: 1190, 2009).次の透析予定まで72時間の間隔がある場合は9mg/kg(Antimicrob Agents Chemother 57: 864, 2013J Antimicrob Chemother 69: 200, 2014).
CAPD
6mg/kg 48時間ごと
CRRT
6mg/kg 24時間ごと(J Antimicrob Chemother 75: 1559, 2020
SLED
データなし

 5. その他の用量調整

2. 副作用/妊娠時のリスク

副作用

妊娠時のリスク

3. 抗微生物スペクトラム

4. 薬理学

PK/PD指標
24時間AUC/MIC
剤形
注射剤
食事に関する推奨(経口薬)1

経口吸収率(%)

Tmax(時間)

最高血清濃度3(μg/mL)
57.8~183.7
(4~12mg/kg静注24時間ごと,SS)
最高尿中濃度(μg/mL)
データなし
蛋白結合(%)
92
分布容積3(Vd)
0.1 L/kg (Vss)
平均血清半減期4(T1/2, 時間)
8~9
排泄

胆汁移行性5(%)
データなし
脳脊髄液/血液6(%)
0~8
治療が可能になるだけの脳脊髄移行性7
データなし
AUC8(μg・時間/mL)
494~1277
(4~12mg/kg静注24時間ごと, 0~24時間)
  1. 注記のない場合は成人用製剤
  2. SD:単回投与後,SS:複数回投与後の定常状態
  3. V/F:(Vd)÷(経口生物学的利用能),Vss:定常状態におけるVd,Vss/F:(定常状態におけるVd)÷(経口生物学的利用能
  4. CrCl>80 mL/分と想定
  5. (胆汁中の最高濃度)÷(血清中の最高濃度)×100
  6. 炎症時における脳脊髄液濃度
  7. 薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定.脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
  8. AUC:血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the plasma concentration-time curve.0~inf=AUC0-inf,0~x時間=AUC0-x

5. 主要な薬物相互作用

薬剤
効果
推奨
HMG-CoA阻害薬(スタチン類)
ミオパチー
DAP投与中はスタチン類中止を考慮

6. コメント

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2024/05/27