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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
菌血症-
S. aureus
による
(
2026/02/17 更新
)
S. aureus
菌血症治療の一般原則
臨床状況
血液培養で
S. aureus
陽性
菌血症の原因として最も多いもの
皮膚および軟部組織の感染症
血管内カテーテル
骨および関節の感染症
肺炎
心内膜炎
1/4の症例で原発感染巣不明
敗血症症候群および敗血症性ショックが多くみられ,致死率は10~20%
推奨は初期静注治療についてのもの.
経口ステップダウン治療の役割について明確には定義されていないが,現在では発展しつつある(
Open Forum Infect Dis 7: ofaa151, 2020
,および下記 抗微生物薬適正使用を参照)
静注薬使用者(PWID)で標準的な静注治療を完了できない人に対する経口治療の可能な役割についての議論については,コメント参照.
診断/病原体
診断
除菌を確認するために治療終了後に血液培養を行う.適切な治療の3~4日後に血液培養が陽性ならば,複雑性菌血症の可能性が大きい.
菌血症の持続は血管内感染あるいは感染源の制御不十分を示唆する.早急に他の感染部位のドレナージまたはデブリドマンを試みなければならない.
一次的または二次的な感染病巣を同定・除去して,治療失敗あるいは再発の可能性を低下させる.
心内膜炎を除外するために心エコー検査が推奨される(
JAMA 312: 1330, 2024
).
隠れた感染病巣を検出するためのF48フルオログルコースPET/CT使用への関心が高まっている:
Clin Infect Dis 73: e3859, 2021
;
Eur J Clin Microbiol Infect Dis 44: 895, 2025
.
病原体
MSSA
MRSA
第一選択
MSSA(コメント参照)
(
Nafcillin
または
Oxacillin
または抗
Staphylococcus
作用のあるペニシリン)2g静注4時間ごと
CEZ
2g静注8時間ごと
MRSA
VCM
15~20mg/kg静注8~12時間ごと.目標AUC
24
400~600μg・h/mL達成が望ましいが[
AUC-用量設定の原理と計算
を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLを目標とする
DAP
8~12mg/kg静注24時間ごと(FDAの承認用量6mg/kg24時間ごとよりも高用量)
上記処方での治療が失敗した患者でのサルベージ処方についてはコメント参照.
安定した患者でのstep-down経口治療またはDalbavanxin使用についてはコメント参照.
第二選択
MRSA
Ceftobiprole
(活性のある薬剤として)第1~8日目に500mgを2時間以上かけて静注6時間ごと,それ以降は8時間ごと(コメント参照)
ランダム化二重盲検,二重ダミー試験でDAPに対して非劣性:
N Engl J Med 389: 1390, 2023
MSSA(βラクタム薬で治療できない患者)
VCM
15~20mg/kg静注8~12時間ごと.目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[
AUC-用量設定の原理と計算
を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLを目標とする.
DAP
8~12mg/kg静注24時間ごと
抗微生物薬適正使用
治療期間
単純性菌血症には通常2週(
Antimicrob Agents Chemother 57: 1150, 2013
),複雑性菌血症には4~6週
単純性または低リスク菌血症
,コンセンサスはないが,以下の基準は合理的
抗菌薬治療開始2~3日以内に血液培養で無菌(複雑性感染症の最強の予測因子)
感染巣が特定可能で除去できる
原発感染巣が迅速に除去できる
心エコー上も臨床上も心内膜炎の徴候なし
骨髄炎なし
血流感染に伴う二次性感染巣がない
心内膜炎のリスクとなる心臓弁膜異常の既往がない (例:人工弁,リウマチ性心疾患,大動脈二尖弁)
注:市中感染菌血症は心内膜炎と高率に関連するため,院内感染菌血症よりも複雑性感染症の高リスクと関連する
複雑性菌血症:上記すべてに該当しない場合
心内膜炎,難治または転移性感染巣を伴った菌血症の治療には4~6週が推奨される
骨髄炎の治療には最低6~8週必要
抗微生物薬適正使用
感染症専門医へのコンサルテーションにより予後が改善する.
感受性検査結果が出るまでの経験的治療としてはVCMが適切(
Clin Infect Dis 61: 361, 2015
).
STは,ランダム化対照比較試験でVCMに対する非劣性を示すことに失敗したため,推奨されない(
BMJ: 350: h2219, 2015
)
CTRXは第一選択でも第二選択でもなく,心内膜炎,より重症な感染症,合併症のある/S. aureus高リスクの菌血症などの患者では避けなければならない.
レトロスペクティブコホート研究では,CTRXはCEZよりも治療失敗が多かった(
Open Forum Infect Dis 5: ofy089,2018
).
12のレトロスペクティブコホート研究のメタアナリシスでは,標準的治療との比較で治療結果には差がなかったが,標準的治療を受けたのは,より重症で血管内感染の患者だった(
Antibiotics 11: 375, 2022
).
併用治療のルーチン使用は有用性なし
RFP併用(
Lancet 391: 668, 2018
)
MSSAまたはMRSAに対するβラクタム薬併用治療(
JAMA 323: 527, 2020
;
JAMA 334: 798, 2025
).
コメント
MSSA菌血症の特異的治療としてのNafcillin(または抗Staphylococcus作用のある他の薬剤)対CEZ
観察研究においてCEZは,特異的治療で抗Staphylococcusペニシリンと同等であることが示された(
Clin Infect Dis 65: 100, 2017
および
BMC Infect Dis 18: 508, 2018
参照).
MSSA菌血症を対象としたフランスでの多施設ランダム化対照比較試験においてCEZはCloxacillinに非劣性であった(
Lancet 406: 2349, 2025
).
中枢神経系感染および埋め込み器具関連感染は除外された.
CEZ群146例中75%,Cloxzcillin群146例中74%が複合アウトカム(3~5日での無菌血液培養,無再発,生存,90日での臨床的奏功)を達成した.
Cloxacillinを投与された被験者は,CEZを投与された被験者と比較して重篤な有害事象(27%対15%,p=0.01)および急性腎障害(12%対1%,p=0.0002)の発生率が高かった.
臨床分離株にA型β-ラクタマーゼ遺伝子(CEZ inoculum effectと関連付けられている対立遺伝子)が含まれていた被験者では,非劣性は認められなかった(下記参照).
CEZに対しinoculum effectを示すMSSA株(標準的な107CFU/mLでMIC≧16μg/mL)による菌血症に対するCEZ治療では,CEZの加水分解がアウトカム不良と関連する可能性がある(Open Forum Infect Dis 5: ofy123, 2018).
菌量の多い感染症(たとえば,心内膜炎;排膿されていない大きな膿瘍の存在)での初期治療では,CEZよりも抗Staphylococcus作用のあるペニシリンの方が望ましいことがある.
治療失敗に対するサルベージ治療
治療失敗は,適切な治療をしても菌血症が遷延することと定義される(たとえば>4日の治療,ただしカットオフ値は確立されていない)
VCM使用例(心内膜炎では血液培養陽性の中央値は約7日),MRSA感染,心内膜炎または他の血管内感染,コントロール不良の病巣などが多い.
MRSAに対して
併用療法を考慮する(
Am J Health Syst Pharm 82: 150, 2025
)
(DAP 8~12mg/kg静注24時間ごと+Ceftaroline 600mg静注8時間ごと)は,DAPに感受性のない株でも持続性MRSA菌血症に対するMRSA株のサルベージ療法として有効のようだ(
Clin Ther 36: 1303, 2014
;
J Clin Pharm Ther 43: 614, 2018
).
その他の選択肢
Ceftaroline
600mg静注8時間ごとはサルベージ療法として有効のようだ(
Antimicrob Agents Chemother 61: e02015, 2017
).
VCMへの反応が乏しい場合には,
DAP
8~12mg/kg静注24時間ごと(in vitroでの感受性を確認すること.一部のVISA株は
DAP
への感受性なし(MIC>1μg/mL)).
Telavancin
10mg/kg静注24時間ごと(
Infect Dis (Lond) 47: 379, 2015
)
MSSAに対して
初期治療をCEZで行った場合は,抗Staphylococcus作用のあるペニシリンに代えてよい.
CEZにErtapenem 1g静注24時間ごと追加が,遷延したMSSA菌血症の患者のサルベージ処方として有効であることを示唆する症例報告データがある(
Antimicrob Agents Chemother 66: e0216621, 2022
).
安定した患者での経口step-down治療
この治療アプローチを支持するエビデンスは,質の低い観察研究とひとつのオープンラベル小規模ランダム化非劣性試験である.
抗
Staphylococcus
注射薬による初期治療後の経口step-down治療は,合併症のない菌血症(例:良好な感染源管理,血液培養の迅速な陰性化[すなわち、初期治療開始後24~48時間以内],転移性感染巣なし,血管内感染なし)の患者の一部においては,標準的な注射治療と同等の効果がある可能性がある
多く使われる薬剤としては,以下のものがある:
LZD
(
Int J Antimicrob Agents 57: 106329, 2021
;
Clin Infect Dis 69: 381, 2019
;
J Antimicrob Chemother 56: 923, 2005
)
ST(
Int J Infect Dis 102: 554, 2021
;
J Antimicrob Chemother 74: 489, 2019
)
フルオロキノロン
+
RFP
(
Open Forum Infect Dis 7: ofaa151, 2020
)
抗Staphyococcus作用のある経口βラクタム薬(MSSAのみ:
Antimicrob Agents Chemother 64: e02345, 2020
)
SABATO(
Lancet Infect Dis 24: 523, 2024
)は,単純性菌血症(中心ラインまたは末梢ライン関連の感染または皮膚・軟部組織感染が88%)に対して部分的経口治療(静注7日,その後経口7日:n=108)と静注14日治療(n=105)を比較したオープンラベル・ランダム化試験である.
経口切り替え治療はすべての静注治療に対して,複合一次エンドポイント(90日以内のS. aureus血流感染関連の合併症,S. aureus血流感染再発,S. aureus深部感染,S. aureus血流感染関連の死亡と定義される)で非劣性であった(13%対12%).
この試験について注意すべきなのは,対象患者の登録に時間がかかったため予定された登録数の50%に達したところで研究が終了してしまったこと,非劣性の境界が当初予定の5%から10%に拡大したこと,MRSAの症例が少ないこと(213例中16例)である.
経口薬のプロトコールは,MRSAまたはMSSAに対してST 800/160mg経口12時間ごと(患者の58%),MSSAに対してCLDM 600mg8時間ごと(患者の32%),MRSAに対してLZD 600mg12時間ごと(患者の9%)であった.
合併症のあるMSSAまたはMRSA菌血症に対する地固め治療としてのDalbavancinについては以下のとおり.
初期療法またはサルベージ療法,不安定な患者,または血液培養が陰性化していない患者では推奨されない.
MSSAに対するDarbavancin 1500mg静注・1週間ごとと標準的な4~8週間の静注治療(CEZまたは抗Staphylococcus作用のあるペニシリン)またはMRSAに対するVCMまたはDAPを比較したランダム化対照比較試験において,標準治療と同等の結果が示された(
JAMA 334: 866, 2025
).
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2026/02/16