Telavancin (2024/11/12 更新)
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Contents
1. 用法および用量
1. 使用
2. 成人用量
3. 小児用量
4. 腎障害時の用量調整
5. その他の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
5. 主要な薬物相互作用
6. コメント
1. 用法および用量
1. 使用
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Telavancinはリポグリコペプチド系注射剤で,S. aureus(MSSA,MRSA),VCM感受性E. faecalis,S. pyogenes,S. agalactiae,S. anginosusグループによる複雑性皮膚/皮膚組織感染症の治療に承認されている.薬剤のレビューを参照(Clin Infect Dis 60: 787, 2015;Med Lett Drugs Ther 52: 1, 2010;Clin Infect Dis 61: S35, 2015).
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Telavancinは,S. aureus(MRSA,MSSA)による成人の院内肺炎および人工呼吸器関連肺炎(VAP)治療にも適応がある.院内肺炎(MRSA肺炎を含む)に関して公表された研究で,TelavancinはVCMに対し非劣性であった(Clin Infect Dis 52: 31, 2011).
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抗菌薬の他の選択肢については,抗菌薬耐性の遺伝子型参照
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Telavancinは濃度依存的な殺菌活性をもち,その機序は二重である:細胞壁の合成阻害と細菌の細胞膜バリアの分解.
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動物実験で催奇形性の可能性.妊娠の可能性のある女性は治療前に血清妊娠検査を行うこと.有用性が胎児のリスクを上回らないかぎり妊娠中は使用を避ける(FDAカテゴリーC).
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皮膚感染症を対象とした試験で,Telavancin投与患者の3.4%,VCM投与患者の1.2%に血清クレアチニン値上昇がみられた.他の腎毒性の薬剤/造影剤などへの同時暴露が交絡している.Telavancinの中止で回復した.サルベージ療法を受けた21人の患者を対象にした小規模レトロスペクティブ研究において,急性腎障害が7人(33%)に生じた.合併症をもつ患者にはさらにデータが必要(J Antimicrob Chemother 67: 723, 2012).
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警告【Black box warning】:
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中等度~重度の腎障害がある患者(CrCl≦50mL/分)の院内肺炎/人工呼吸器肺炎(VAP)に対する治療では,TelavansinはVCMに比べて死亡率が高かった.
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腎毒性
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動物実験の結果から,胎児障害を引き起こす可能性がある.治療開始前に妊娠の有無を確認し,有効な避妊法の使用を指導する.
2. 成人用量
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10mg/kg静注(1時間以上かけて)24時間ごと
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推奨される治療期間(重症度,感染部位,臨床的反応に基づく)
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合併症のある皮膚軟部組織感染症:7~14日
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HAP/VAP:7~21日
3. 小児用量
用量(生後>28日)
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安全性・有効性は確立されていない
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最大/日
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4. 腎障害時の用量調整
半減期(時間)(腎機能正常)
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8.1
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半減期(時間)(ESRD)
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17.9
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用量(腎機能正常)
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10mg/kg静注24時間ごと
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CrClまたはeGFR
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CrCl>50:用量調整不要 CrCl 30~50:7.5mg/kg24時間ごと CrCl 10~<30:10mg/kg48時間ごと CrCl<10:データなし
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血液透析
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データなし
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CAPD
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データなし
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CRRT
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データなし
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SLED
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データなし
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5. その他の用量調整
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軽症~中等症の肝障害(Child-Pugh分類A,B):用量調整不要
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重症肝障害(Child-Pugh分類C):データなし
2. 副作用/妊娠時のリスク
副作用
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腎毒性
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アナフィラキシーを含む過敏反応
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QTc延長
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凝固検査干渉:Telavancinはプロトロンビン時間(PT-INR),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)など,いくつかの凝固検査値に干渉する(しかしin vivoでは凝固に影響しない).
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発疹(4%),悪心(27%),嘔吐(14%),下痢(7%),めまい/ふらつき(3.1%).
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第III相試験での副作用(対VCM):
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味覚障害(味覚異常)33% vs 7%
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悪心27% vs 15%
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嘔吐14% vs 7%
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頭痛14% vs 13%
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クレアチニン上昇(3.1% vs 1.1%)
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泡沫尿
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発疹,じんま疹,急速注入で潮紅
妊娠時のリスク
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FDAリスク区分(新):動物実験の結果から,胎児障害リスクあり.有用性が胎児リスクを凌がないかぎり使用は避ける
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授乳中の使用:乳汁中濃度はおそらく低く,吸収は低い.安全だが,乳児では消化器毒性をモニター
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
PK/PD指標
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24時間AUC/MIC
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剤形
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注射剤
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食事に関する推奨(経口薬)1
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経口吸収率(%)
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Tmax(時間)
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最高血清濃度2(μg/mL)
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108(10mg/kg静注24時間ごと,SS)
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最高尿中濃度(μg/mL)
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データなし
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蛋白結合(%)
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90
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分布容積3(Vd)
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0.13 L/kg(Vss)
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平均血清半減期4(T1/2, 時間)
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8.1
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排泄
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腎
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胆汁移行率5(%)
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低い
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脳脊髄液/血液6(%)
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データなし
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治療が可能になるだけの脳脊髄移行性7
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データなし
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AUC8(μg・時間/mL)
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780(10mg/kg静注24時間ごと,0~24時間)
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注記のない場合は成人用経口製剤
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SD:単回投与後,SS:複数回投与後の定常状態
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V/F:(Vd)÷(経口生物学的利用能),Vss:定常状態におけるVd,Vss/F:(定常状態におけるVd)÷(経口生物学的利用能
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CrCl>80 mL/分と想定
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(胆汁中の最高濃度)÷(血清中の最高濃度)×100
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炎症時における脳脊髄液濃度
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薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定.脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
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AUC:血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve.0~inf=AUC0-inf,0~x時間=AUC0-x
5. 主要な薬物相互作用
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相互作用リスクのある患者での使用は避ける.QTc延長作用のある薬剤を使用している患者では慎重に使用する.
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他の腎毒性をもつ薬剤を投与されている患者では,腎毒性が増強される可能性.
6. コメント
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添付文書では,治療開始時のクレアチニンクリアランスが30~50mL/分の患者では臨床反応が低下するという注意がある.しかし,この観察結果に関する明確な説明はない.
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1つの仮説:登録時の上昇した血清クレアチニン値に基づく初回投与量の設定.レトロスペクティブな再検討では,クレアチニン上昇は57%の患者で48時間以内に解消していた(Clin Infect Dis 68: 1596, 2019).
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重症例では,輸液その他の手段で腎機能が改善するか明らかになるまでは,最大用量の使用が示唆される.
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