Telavancin (2024/05/07 更新)
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Contents
1. 用法および用量
1. 使用
2. 成人用量
3. 小児用量
4. 腎障害時の用量調整
5. その他の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
5. 主要な薬物相互作用
6. コメント
1. 用法および用量
1. 使用
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Telavancinはリポグリコペプチド系注射剤で,S. aureus(MSSA,MRSA),VCM感受性E. faecalis,S. pyogenes,S. agalactiae,S. anginosusグループによる複雑性皮膚/皮膚組織感染症の治療に承認されている.薬剤のレビューを参照(Clin Infect Dis 60: 787, 2015;Med Lett Drugs Ther 52: 1, 2010;Clin Infect Dis 61: S35, 2015).
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Telavancinは,S. aureus(MRSA,MSSA)による成人の院内肺炎および人工呼吸器関連肺炎(VAP)治療にも適応がある.院内肺炎(MRSA肺炎を含む)に関して公表された研究で,TelavancinはVCMに対し非劣性であった(Clin Infect Dis 52: 31, 2011).
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抗菌薬の他の選択肢については,抗菌薬耐性の遺伝子型参照
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Telavancinは濃度依存的な殺菌活性をもち,その機序は二重である:細胞壁の合成阻害と細菌の細胞膜バリアの分解.
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動物実験で催奇形性の可能性.妊娠の可能性のある女性は治療前に血清妊娠検査を行うこと.有用性が胎児のリスクを上回らないかぎり妊娠中は使用を避ける(FDAカテゴリーC).
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皮膚感染症を対象とした試験で,Telavancin投与患者の3.4%,VCM投与患者の1.2%に血清クレアチニン値上昇がみられた.他の腎毒性の薬剤/造影剤などへの同時暴露が交絡している.Telavancinの中止で回復した.サルベージ療法を受けた21人の患者を対象にした小規模レトロスペクティブ研究において,急性腎障害が7人(33%)に生じた.合併症をもつ患者にはさらにデータが必要(J Antimicrob Chemother 67: 723, 2012).
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腎毒性と味覚障害が注意すべき副作用.
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添付文書より:中等度~重度の腎障害がある患者(CrCl≦50mL/分)の院内肺炎/人工呼吸器肺炎(VAP)に対する治療では,TelavansinはVCMに比べて死亡率が高かった.
2. 成人用量
通常用量
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10mg/kg静注24時間ごと,1時間以上かけて静注
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肥満患者での投与量:最近のPKモデルおよびモンテカルロ法によるシミュレーションでは,固定用量750mg24時間ごとが,実際の体重に基づく10mg/kg24時間ごとよりも有効で毒性も少ないことが示唆されている.肥満患者でより高用量の全身曝露が望まれる場合は,調整体重(アミノグリコシド系薬と同様)に基づく10mg/kg24時間ごとを考慮するが,1000mg24時間ごとを超えてはならない(Antimicrob Agents Chemother 62: e02475, 2018).
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3. 小児用量
用量(生後>28日)
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安全性・有効性は確立されていない
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最大/日
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4. 腎障害時の用量調整
半減期 (腎機能正常/ESRD, 時間)
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8.1/17.9
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腎機能正常時の用量
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10mg/kg 24時間ごと
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CrCl>50~90(mL/分)
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10mg/kg 24時間ごと
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CrCl 30~50(mL/分)
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7.5mg/kg 24時間ごと
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CrCl<30(mL/分)
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10mg/kg 48時間ごと
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血液透析
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データなし
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CAPD
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データなし
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CRRT
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データなし
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CAPD: 持続的携行型腹膜透析
CRRT: 持続的腎代替療法
5. その他の用量調整
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ほとんどの患者では固定用量750mg静注24時間ごとでおそらくは十分
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最近のPKモデルおよびモンテカルロ法によるシミュレーションでは,固定用量750mg24時間ごとが,実際の体重に基づく10mg/kg24時間ごとよりも有効で毒性も少ないことが示唆されている.肥満患者においてより高用量の全身曝露が望まれる場合は調整体重(アミノグリコシド系薬と同様)に基づく10mg/kg24時間ごとを考慮するが,1000mg24時間ごとを超えないこと(Antimicrob Agents Chemother 62: e02475, 2018).
2. 副作用/妊娠時のリスク
副作用
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QTc延長:リスクのある患者では使用を避ける.QT間隔延長作用が知られている薬剤(QTc延長作用)を投与されている患者では注意して使用.
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凝固検査干渉:Telavancinはプロトロンビン時間(PT-INR),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)など,いくつかの凝固検査値に干渉する(しかしin vivoでは凝固に影響しない).
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発疹(4%),悪心(27%),嘔吐(14%),下痢(7%),めまい/ふらつき(3.1%).
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第III相試験での副作用(対VCM):味覚障害(味覚異常)33% vs 7%,悪心27% vs 15%,嘔吐14% vs 7%,頭痛14% vs 13%;クレアチニン上昇(3.1% vs 1.1%).泡沫尿,急速注入で潮紅.
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腎毒性は重大.前述の1-1. 使用の項を参照.
妊娠時のリスク
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FDAリスク区分(旧):C
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授乳中の使用:モニターしながらなら,おそらくは安全だが,データはない:可能ならば避ける
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
PK/PD指標
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24時間AUC/MIC
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剤形
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注射剤
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食事に関する推奨(経口薬)1
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経口吸収率(%)
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Tmax(時間)
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最高血清濃度2(μg/mL)
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108(10mg/kg静注24時間ごと,SS)
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最高尿中濃度(μg/mL)
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データなし
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蛋白結合(%)
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90
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分布容積3(Vd)
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0.13 L/kg(Vss)
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平均血清半減期4(T1/2, 時間)
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8.1
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排泄
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腎
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胆汁移行率5(%)
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低い
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脳脊髄液/血液6(%)
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データなし
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治療が可能になるだけの脳脊髄移行性7
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データなし
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AUC8(μg・時間/mL)
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780(10mg/kg静注24時間ごと,0~24時間)
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注記のない場合は成人用経口製剤
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SD:単回投与後,SS:複数回投与後の定常状態
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V/F:(Vd)÷(経口生物学的利用能),Vss:定常状態におけるVd,Vss/F:(定常状態におけるVd)÷(経口生物学的利用能
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CrCl>80 mL/分と想定
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(胆汁中の最高濃度)÷(血清中の最高濃度)×100
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炎症時における脳脊髄液濃度
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薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定.脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
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AUC:血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve.0~inf=AUC0-inf,0~x時間=AUC0-x
5. 主要な薬物相互作用
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QTc延長作用のある薬剤(例えばフルオロキノロン系,Lumefantrine,ピモジドなど)を投与されている患者では避ける.
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他の腎毒性をもつ薬剤を投与されている患者では,腎毒性が増強される可能性.
6. コメント
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添付文書では,治療開始時のクレアチニンクリアランスが30~50mL/分の患者では臨床反応が低下するという注意がある.しかし,この観察結果に関する明確な説明はない.
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1つの仮説:登録時の上昇した血清クレアチニン値に基づく初回投与量の設定.レトロスペクティブな再検討では,クレアチニン上昇は57%の患者で48時間以内に解消していた(Clin Infect Dis 68: 1596, 2019).
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重症例では,輸液その他の手段で腎機能が改善するか明らかになるまでは,最大用量の使用が示唆される.
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