注:下記の治療選択肢は,全身治療が必要な中等症~重症患者,または重症感染症患者の治療のためのもの
βラクタム系薬-すなわち,ペニシリン系薬,セファロスポリン系薬,モノバクタム系薬(AZT),カルバペネム系薬-への耐性は,いくつかの耐性機序によって起こり,複数の機序が組み合わされていることも多い.
βラクタム薬に耐性のグラム陰性桿菌の多くは,同時にフルオロキノロン系,テトラサイクリン系,ST,アミノグリコシド系に耐性である.
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クラスA βラクタマーゼ:狭域スペクトラムのペニシリナーゼに加え,基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL),セリン型カルバペネマーゼ(たとえばKPC,Klabsiella pneumoniaeカルバペネマーゼ)は,それぞれ新世代セファロスポリン系およびカルバペネム系を加水分解する.
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■新世代のセファロスポリン系薬(たとえばCTRX,CAZ,CFPM),およびAZTに耐性となる.
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■カルバペネム系薬,MEPM,IPM/CS,ErtapenemはESBLの影響を受けず,治療選択肢となる.
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●感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される.
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クラスB:メタロβラクタマーゼ,亜鉛メタロ酵素,たとえば,ニューデリーメタロ,VIM-1,IMP-1
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全ペニシリン系薬,セファロスポリン系薬,カルバペネム系薬を加水分解するが,AZTだけは例外.
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■しかしほとんどのメタロβラクタマーゼ産生株はESBLも産生するため,ESBLによって不活化されるAZTはこうした株の多くに無効.AvibactamはESBLおよび他のセリン型カルバペネマーゼを不活化するので,CAZ/Avibactamは活性があり,また,AZTの抗菌活性を保護する可能性がある.
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クラスC:AmpC βラクタマーゼ(Clin Infect Dis 69: 1446, 2019).発現している場合には,特にEnterobacter cloacae, Klebsiella aerogenes,Citrobacter freundiiにおいてCTRX,CAZへの耐性を引き起こす.たとえ最初のin vitro感受性検査結果が感受性であろうとも,上記の3菌に対する経験的なセファロスポリン治療(CTRX/CTX/CAZ)は避ける.
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クラスD:オキサシリナーゼ(たとえば,OXA-23様,OXA-48,OXA-48様,OXA-58,その他)
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多様なβラクタマーゼ酵素のグループであり,他のクラスのβラクタマーゼ(たとえばESBL,AmpC)を同時に発現することが多い.
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■もっとも懸念されるのが,プラスミドを介した腸内細菌科,主にKlebsiella属での広がりである.トルコおよび中東で流行しており,米国内からも散発的な報告がある
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●ペニシリン系薬を迅速に,カルバペネム系薬をゆっくりと加水分解する.広域セファロスポリン系薬はほとんど分解されない.
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●OXA-48等はAvibactamにより不活化される(たとえば,CAZ/Avibactam)
βラクタム系薬に加え複数のクラスの抗菌薬に耐性の汎薬剤耐性腸内細菌科,P. aeruginosa,Acinetobacter属
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治療選択肢は限られる:感染症専門医へのコンサルテーションが必要
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Cefiderocolはin vitroでカルバペネマーゼ産生株を含む広い抗菌活性を示し,他の治療選択肢がないか限られている複雑性尿路感染症患者に対し,FDAにより承認された.
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■しかし,カルバペネマーゼ産生菌による肺炎,血流感染/敗血症,複雑性尿路感染患者を対象として,CFDCと最適治療(Best Available Therapy:BAT)を比較したランダム化オープンラベル研究では,14日,28日,試験終了時の全原因死亡率はCFDC群で19/101(18.8%),25/101(24.8%),34/101(33.7%)であり,BAT群の6/49(12.2%),9/49(18.4%),9/49(18.4%)に比べ高いことが示された.ただしこれらの差は統計的に有意ではなかった.