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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
グラム陰性桿菌,βラクタム薬耐性-概説
(
2026/09/08 更新
)
耐性グラム陰性桿菌,基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL),KPC,カルバペネム耐性
概説
グラム陰性細菌性病原体および薬剤耐性に関する概説.抗菌薬耐性に対する追加的なカバーについては,
抗菌薬耐性の遺伝子型
参照
ESBL,AmpC,カルバペネマーゼ産生菌の治療に関するIDSAガイドライン:
2026 IDSAガイドライン
および
2024 IDSAガイドライン
参照
注:下記の治療選択肢は,全身治療が必要な中等症~重症患者,または重症感染症患者の治療のためのもの
βラクタム系薬-すなわち,ペニシリン系薬,セファロスポリン系薬,モノバクタム系薬(AZT),カルバペネム系薬-への耐性は,いくつかの耐性機序によって起こり,複数の機序が組み合わされていることも多い.
βラクタム環を加水分解するβラクタマーゼの産生
細菌細胞壁(例 ポリン変異体)の透過性の減少
薬物排出ポンプの存在
標的(ペニシリン結合タンパク)の変異
βラクタム薬に耐性のグラム陰性桿菌の多くは,同時にフルオロキノロン系,テトラサイクリン系,ST,アミノグリコシド系に耐性である.
治療選択肢は分離株がin vitroで感性の場合のもの
βラクタマーゼは,そのアミノ酸配列の相同性に基づいて4種類のAmbler classesに分けられる.(
抗菌薬耐性の遺伝子型
)(
Cold Spring Harb Perspect Med 7: a025239, 2017
).
薬剤耐性
クラスA βラクタマーゼ
クラスA βラクタマーゼ:狭域スペクトラムのペニシリナーゼに加え,基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL),セリン型カルバペネマーゼ(たとえばKPC,Klabsiella pneumoniaeカルバペネマーゼ)は,それぞれ新世代セファロスポリン系およびカルバペネム系を加水分解する
ESBL
基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)(文献:
Curr Opin Infect Dis 33: 78, 2020
)
新世代のセファロスポリン系薬(たとえばCTRX,CAZ,CFPM),およびAZTに耐性となる.
カルバペネム系薬,
MEPM
,
IPM/CS
,
Ertapenem
(抗緑膿菌活性がない)はESBLの影響を受けず,治療選択肢となる.
Tebipenem pivoxil
は経口カルバペネム系薬であり,
E. coli
,
K. pneumoniae
,
Enterobacter cloacae
complex,
K. oxytoca
による成人の複雑性尿路感染症で,他の経口治療選択肢が限られている,またはない場合の治療に,2026年FDAが承認した.
CTLZ/TAZ
,
CFPM/Enmetazobactam
,
CFPM/Zidebactam
はカルバペネム温存のための選択肢
セリン型カルバペネマーゼ
すべてのβラクタム系薬への耐性を引き起こす.
治療選択肢
CAZ/Avibactam
,
MEPM/Vaborbactam
,
IPM/CS/REL
,
AZT/Avibactam
,
CFPM/Zidebactam
(これらは,それぞれのβラクタマーゼ阻害薬がKPCやESBLを阻害するため活性).
非βラクタムの選択肢
FOM(静注)
または
FOM(経口)
Eravacycline
(in vitroで活性があるが,臨床データは乏しい)
PL-B
(または尿路感染症に対してのみ
ポリミキシンE
[コリスチン]);Proteus属,Providencia属,Serratia marcecsensには活性がない.
感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される.
クラスB:メタロβラクタマーゼ
クラスB:メタロβラクタマーゼ,亜鉛メタロ酵素,たとえば,ニューデリーメタロ,VIM-1,IMP-1
全ペニシリン系薬,セファロスポリン系薬,カルバペネム系薬を加水分解するが,AZTだけは例外.
ほとんどのメタロβラクタマーゼ産生株はESBLも産生するため,ESBLによって不活化されるAZTはこうした株の多くに無効.しかし,AvibactamがESBLおよび他のセリン型カルバペネマーゼを不活化するので,CAZ/AvibactamおよびAZT/Avibactamは活性があり,また,AZTの抗菌活性を保護する.
治療選択肢
AZT
+
CAZ/Avibactam
343例を対象とした前向き観察研究では,AZT+CAZ/Avibactam併用治療は,コリスチンとの比較で,メタロβラクタマーゼ産生腸内細菌科感染患者の30日死亡率を低下させた:
Clin Infect Dis 78: 1111, 2024
.
AZT/Avibactam
(
Drugs 86: 79, 2026
参照)
CFDC
(
Clin Infect Dis 69: S519, 2019
;
Clin Infect Dis 75: 1081, 2022
;
Clin Infect Dis 75: 1085(Editorial), 2022
)
下記汎薬剤耐性を参照
CFPM/Zidebactam(複雑性尿路感染症治療にFDA承認)は,in vitroで感受性があるが,臨床的有効性を支持するデータはきわめて限られている.
他の選択肢としては,感受性があれば,アミノグリコシド系薬またはFOM
腸内細菌目細菌は
Eravacycline
に感受性があることが多いが,臨床データは少ない.
感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される
クラスC:AmpC βラクタマーゼ
クラスC:AmpC βラクタマーゼ(
Clin Infect Dis 69: 1446, 2019
).発現している場合には,特に
Enterobacter cloacae
,
Klebsiella aerogenes
,
Citrobacter freundii
においてCTRX,CAZへの耐性を引き起こす.たとえ最初のin vitro感受性検査結果が感受性であろうとも,上記の3菌に対する経験的なセファロスポリン治療(CTRX/CTX/CAZ)は避ける.
治療選択肢
MEPM
,
IPM/CS
または
Ertapenem
または
CFPM
(用量依存性),
CFPM
/Enmetazobactam,
CFPM
/Zidebactam
Tebipenem pivoxil
は経口カルバペネム系薬であり,
E. coli
,
K. pneumoniae
,
Enterobacter cloacae
complex,
K. oxytoca
による成人の複雑性尿路感染症で,他の経口治療選択肢が限られている,またはない場合の治療に,2026年FDAが承認した.
フルオロキノロン系薬
または
ST
(感受性があれば)
クラスD:オキサシリナーゼ
(たとえば,OXA-23様,OXA-48,OXA-48様,OXA-58,その他)
多様なβラクタマーゼのグループであり,他のクラスのβラクタマーゼ(たとえばESBL,AmpC)を同時に発現することが多い.
もっとも懸念されるのが,プラスミドを介した腸内細菌科,主に
Klebsiella
属での広がりである.トルコおよび中東で流行しており,米国内からも散発的な報告がある
OXA-48およびOXA-48様
ペニシリン系薬を迅速に,カルバペネム系薬をゆっくりと加水分解する.基質拡張型セファロスポリン系薬はほとんど分解されない.
OXA-48およびOXA-48様は一般にAvibactamおよびEnmetazobactamにより不活化される:
CAZ/Avibactam
,
AZT/Avibactam
,
CFPM/Enmetazobactam
,CFPM/Zidebactam(Zidebactamは阻害および増強の両方の活性をもつ)はこれらのβラクタマーゼを産生する株に対して活性がある.
これに対して,Vaborbactam,レレバクタムはOXA-48やその他のOXA酵素をほとんど阻害せず,MEPM/Vaborbactam,IPM/CS/レレバクタムの活性は不確実(
Antimictob Agents Chemother 61: e01443, 2017
;
Antimicrob Agents Chemother 63: e00029, 2019
).
その他の治療選択肢
CFDC
FOM
および
Eravacycline
はin vitroで活性があることが多い
PL-B
(または尿路感染症の場合のみ
ポリミキシンE
)
感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される
汎薬剤耐性
βラクタム系薬に加え複数のクラスの抗菌薬に耐性の汎薬剤耐性腸内細菌科,
P. aeruginosa
,
Acinetobacter
属
治療選択肢は限られる:感染症専門医へのコンサルテーションが必要
CFDC
はin vitroでカルバペネマーゼ産生株を含む広い抗菌活性を示し,他の治療選択肢がないか限られている複雑性尿路感染症患者に対し,FDAにより承認された.
しかし,カルバペネマーゼ産生菌による肺炎,血流感染/敗血症,複雑性尿路感染患者を対象として,CFDCと最適治療(Best Available Therapy:BAT)を比較したランダム化オープンラベル研究(CREDIBLE-CR)では,試験終了時の全原因死亡率はCFDC治療群で34/101(33.7%),BAT群で9/49(18.4%)とCFDC群の方が高かったが,統計的に有意な差ではなく,主に
Acinetobacter
感染での死亡率が高いことから来たものであった(
Lancet Infect Dis 21: 226, 2021
).
CFDC群の患者は主に単剤治療を受けていたが,BAT群では主に併用治療であった.
メタロβラクタマーゼ酸性菌に対する治癒率は,CFDCの方が数値的には高かった.
医療関連グラム陰性菌血流感染の504例の患者で,CFDCと標準的医療を比較したランダム化対照比較試験(GAME CHANGER)では,標準的医療に対してCFDCは非劣性だったが,より優れてはいなかった:14日死亡率は,それぞれ8%,7%.
カルバペネム耐性菌感染(n=127)に対しては,14日死亡率は14%,10%であり,非劣性を除外するには不十分な差であった.
Acinetobacter
血流感染に対して,CRECIBLE-CRで標準的医療と比較してCFDCは9%,21%と死亡率超過を示さなかった.これに対して,メタロβラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌では,30日死亡率はCFDCで50%,標準的医療で18%と,CRECIBLE-CRでの結果とは対照的であった.
CFDCは現在では最後の手段とみなされるべきであり,可能なら他の活性ある薬剤と併用で使用されるべきである.
開発中の薬剤
開発の後期段階にある研究中の薬剤
CFPMをEnmetazobactam,Taniborbactam,Zidebactaと併用した場合の活性についての総説:
Expert Opin Pharmacother 26: 1451, 2025
参照.
カルバペネマーゼ産生菌の表現型からの検出方法についての概説は,
J Clin Microbiol 56: e01140, 2018
参照.
グラム陰性桿菌
Acinetobacter属
Citrobacter属
Enterobacter属
Escherichia coli
Klebsiella属
Morganella moroganii
Proteus属
Providencia属
Pseudomonas aeruginosa
Serratia marcescens
Stenotrophomonas maltophilia
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