日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Proteus 属,P. mirabilisP. vulgaris  (2025/03/25 更新)
Proteus mirabilisProteus vulgaris


臨床状況

  • Proteus属は,健常者でも免疫不全患者でも,単純性尿路感染症から腹腔内,皮膚および軟部組織,肺,およびその他の部位の生命の危険のある感染症まで,さまざまな感染症を引き起こす.
  • 尿路感染症はもっとも多く,カテーテル関連のことが多い
  • Proteus属はバイオフィルムを形成すること,尿路での結石(ストルバイト)形成を亢進する強力なウレアーゼ酵素を産生することが知られている.
  • ウレアーゼは尿素をCO2とアンモニアに変換する.これによりアルカリ尿が引き起こされ,リン酸アンモニウムマグネシウムの結晶化と結石の形成につながる.
  • 尿路結石の10~15%はリン酸アンモニウムマグネシウムから成る(ストルバイト結石と呼ばれる).
  • 上部尿路または再発感染での結石または閉塞性尿路疾患を評価するために画像検査が推奨される.
  • 特異的治療は,抗菌薬感受性,感染部位および重症度による.
  • Proteus属はポリミキシンに対して自然耐性

分類

  • グラム陰性桿菌,運動性(培養皿上を移動)
  • Proteus mirabilis(インドール陰性)
  • Proteus penneri(インドール陰性)
  • Proteus vulgaris(インドール陽性)

第一選択

  • 感受性のある株による合併症のない感染症(たとえば,尿路感染症)または重症度の低い感染症では,下表にあげた薬剤に加えて,AMPC/CVA,フルオロキノロン,第2,第3世代セファロスポリンも治療選択肢である.AMPCはP. mirabilis株に対して活性がある場合があるが,P. vulgarisには活性がない.感受性ある株であれば,STも選択肢となるが,耐性が多いため経験的治療の薬剤としての有用性は限られたものである.Nitrofurantoinに対してProteus属は自然耐性であるため,合併症のない尿路感染症には使用してはならない.IPM/CSは他のカルバペネムより活性が低い.Proteus属のFOMに対する感受性は多様である.
検査結果
関与する状況
推奨される処方
コメント
Proteus属培養陽性だが,in vitroの感受性試験結果が得られていない場合,経験的治療
地域のESBL率<15%
PIPC/TAZ 4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと
CPFX 400mg静注1日2回,またはLVFX 750mg静注24時間ごと
CEZ 1g静注12時間ごと,またはCTRX 1~2g静注24時間ごと
  

地域のESBL率>15%
MEPM 1~2g静注8時間ごと
他の選択肢についてはコメント参照
インドール陽性Proteus属(通常はP. vulgaris)が検出され,in vitroでAZT,CTRXおよび/またはCTXに耐性
ESBLおよび/またはAmpC過剰産生と一致する
MEPM 1~2g静注8時間ごと
Ertapenem 1g静注24時間ごと
他の選択肢についてはコメント参照
他のカルバペネム系薬に比べIPM/CSのin vitro耐性率は高い.
ESBL産生が疑われる場合にはPIPC/TAZは避ける(in vitroで感受性があっても,臨床的には無効)
すべてのカルバペネム系薬に耐性だが,MEPM/Vaborbactam,CAZ/Avibactamに感性
セリン型Klebsiella pneumoniaeカルバペネマーゼ(KPC)産生が示唆される
MEPM/Vaborbactam 4g3時間以上かけて静注8時間ごと,または
CAZ/Avibactam 2.5g2時間以上かけて静注8時間ごと.
感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される.これらの薬剤への耐性変異の出現についての議論は,Clin Infect Dis 68: 519, 2019Antimicrob Agents Chemother 63: e01551, 2018参照
すべてのカルバペネム系薬,MEPM/Vaborbactam,CAZ/Avibactamに耐性
メタロβラクタマーゼ産生が示唆される
CAZ/Avibactam 2.5g3時間以上かけて静注8時間ごと+AZT 2g3時間以上かけて静注6時間ごと(コメント参照),または
CFDC 2g3時間以上かけて静注8時間ごと
感染症専門医へのコンサルテーションが強く推奨される
in vitro感受性に基づき,MEPM/Vaborbactam+AZTが選択肢となることがあるが,有効性は証明されていない.

第二選択

ESBLまたはプラスミドを介するAmpC産生株による感染のエビデンスがない場合
  • FOM 3g経口1回(尿路感染の場合のみ)
     【注】FOM 経口は米国ではFosfomycin tromethamineであり,日本のホスホマイシンカルシウムとは異なる.
  • 重症のβラクタムアレルギー:AZT
in vitroの感受性試験結果からESBL産生が想定され,カルバペネム系薬を投与できない場合の他の処方
  • 感受性があればアミノグリコシド系薬またはフルオロキノロン系薬
  • CTLZ/TAZ 1.5g3時間以上かけて静注8時間ごと,またはCAZ/Avibactam 2.5g3時間以上かけて静注8時間ごと
  • どちらもESBL存在下で安定であり,複雑性尿路感染症および腹腔内感染に(MNZとの併用で)承認されている
  • CFPM/Enmetazobactamが最近FDAにより,ESBL産生菌を含む複雑性尿路感染症治療に承認された
  • Temocillin 2g静注12時間ごと(入手可能なら)
  • 単純性膀胱炎:FOM(経口) 3g経口1回
     【注】FOM経口は米国ではFosfomycin tromethamineであり,日本のホスホマイシンカルシウムとは異なる.
  • 複雑性尿路感染症:FOM(静注) 6g静注8時間ごと(入手可能なら)
in vitroでProteus属がMEPM/Vaborbactamを含むすべてのカルバペネム系薬に耐性で,同時にCAZ/Avibactam,フルオロキノロン系藥,ST,アミノグリコシド系藥に耐性の場合
  • 感染症専門医へのコンサルテーションが必要
  • 可能なサルベージ処方
  • Plazomicin 15mg/kg1日1回,入手可能なら.

抗微生物薬適正使用

  • カルバペネム系薬は,嫌気性菌/好気性菌による混合感染の治療やESBL産生株による感染症の治療のために温存しておく
  • CAZ/AvibactamやMEPM/Vaborbactamは,カルバペネマーゼ産生が確認された細菌による感染症のために温存しておく
  • 抗菌薬耐性
  • Proteus属はポリミキシン類に自然耐性
  • すべてのカルバペネム系薬の感受性をチェックすること.臨床検査でIPM耐性が報告されても,MEPM耐性と推測することはできない

コメント

  • ESBL産生が疑われる/または確認された場合には,in vitroで感受性があってもPIPC/TAZは使用しないこと.臨床的失敗の報告がある:Antimicrob Agents Chemother 57: 3402, 2013
  • CAZ/Avibactam+AZT併用がメタロβラクタマーゼ(MBL)産生菌に対して用いられる根拠は,AZTはMBLにより加水分解されないが,CAZはされるということである.しかし,MBL産生菌は通常ESBLまたはセリンカルバペネマーゼを産生し,これらはAZTを分解する.AvibactamはMBLを阻害しないが,βラクタマーゼ(すなわち,ESBL,AmpC,セリンカルバペネマーゼ)を阻害するため,これがない場合にはセリンカルバペネマーゼで分解されてしまうAZTが活性を保つのである.Antimicrob Agents Chemother 61: e02243, 2017
  • CFDC:FDAは,CFDC感性細菌による複雑性尿路感染症患者で,治療選択肢がないか限られている場合に承認した.
  • 敗血症,肺炎,菌血症,複雑性尿路感染症患者を対象にCefiderocolと最適治療(Best Available Therapy:BAT)を比較したオープンラベルランダム化試験では,28日死亡率はCefiderocol群24.8%,BAT群18.4%だった(統計学的有意差なし).
  • 試験段階にある抗菌薬
  • AZT/Avibactam
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2025/03/24