日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

ピペラシリン・タゾバクタム  (2024/04/23 更新)
PIPC/TAZ
主な商品名:ゾシン

「サンフォード感染症治療ガイド」の中で推奨されている薬剤の適応および用量は,日本で認可されているものとは異なっている場合がありますので,薬剤選択を考慮する場合には,必ず日本での添付文書および最新安全性情報に基づいて行って下さい.
日本の添付文書情報検索サイト

Contents

1. 用法および用量
  1. 使用
  2. 成人用量
  3. 小児用量
  4. 腎障害時の用量調整
  5. その他の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
5. 主要な薬物相互作用
6. コメント

1. 用法および用量

 1. 使用

†:日本にない剤形

 2. 成人用量

通常投与
腹膜炎,腹腔内膿瘍
3.375g静注6時間ごとまたは4.5g静注8時間ごと(重症感染症)
緑膿菌性肺炎
3.375g静注4時間ごとまたは4.5g静注6時間ごと
抗緑膿菌作用のあるAGまたはFQと併用.
長時間静注
動物および臨床試験におけるin vitroのPK/PDデータより,長時間静注で有効性が増すことが示されている.1つのin vitro研究では,菌量が多い(107)場合は長時間静注の効果は弱まることが示された:Antimicrob Agents Chemother 57: 5811, 2013
持続静注の推奨処方:初回4.5gを30分かけて静注.次いで4時間後に3.375g4時間以上かけて静注8時間ごと
腎障害時の用量調整:下の用量調整表を参照

長時間静注についての参考文献:Nat Rev Microbiol 2: 289, 2004Antimicrob Agents Chemother 48: 4718, 2004Clin Infect Dis 44: 357, 2007Antimicrob Agents Chemother 54: 460, 2010

 3. 小児用量

用量(生後>28日)
用量はPIPC成分に基づく
300~400mg/kg/日(6時間ごとに分割)
2022年12月時点の製薬会社の推奨(体重≦40kg)
虫垂炎/腹膜炎,生後2~9ヵ月:80mg/kg8時間ごと
虫垂炎/腹膜炎,>9ヵ月:100mg/kg8時間ごと
院内肺炎,2~9ヵ月:80mg/kg6時間ごと
院内肺炎,>9ヵ月:100mg/kg6時間ごと
最大/日

 4. 腎障害時の用量調整

  
Pseudomonas以外に対する用量
Pseudomonas用量
長時間静注
半減期(時間)
(腎機能正常
PIPC:1,TAZ:1
PIPC:1,TAZ:1
PIPC:1,TAZ:1
半減期(時間)
(ESRD)
PIPC:3~5,TAZ:2.8
PIPC:3~5,TAZ:2.8
PIPC:3~5,TAZ:2.8
用量
(腎機能正常)
3.375g静注6時間ごと(30分以上かけて)
4.5g静注6時間ごと(30分以上かけて)
4.5g静注(30分以上かけて),その後3.375g静注8時間ごと(4時間以上かけて)
CrClまたは
eGFR
CrCl>40:3.375g6時間ごと
CrCl 20~40:2.25g6時間ごと
CrCl<20:2.25g8時間ごと
CrC<l0:2.25g8時間ごと
CrCl>40:4.5g6時間ごと
CrCl 20~40:3.375g6時間ごと
CrCl <20:2.25g6時間ごと
CrCl<10:2.25g6時間ごと
CrCl>50~90:4.5g静注(30分以上かけて),その後3.375 g (4時間以上かけて)8時間ごと
CrCl<20:3.375g (4時間以上かけて)12時間ごと
CrCl<10:3.375g (4時間以上かけて) 12時間ごと
血液透析
2.25g12時間ごと(+透析後は0.75g追加)
2.25g8時間ごと(+透析後は0.75g追加)
3.375g(4時間以上かけて)12時間ごと
CAPD
2.25g12時間ごと
2.25g8時間ごと
データなし
CRRT
2.25g6時間ごと
MIC≦16:3.375g(30分以上かけて)6時間ごと
Clin J Am Soc Nephrol 7: 452, 2012
MIC>16~64:4.5g(4時間以上かけて)8時間ごと(Pharmacotherapy 35: 600, 2015
4.5g(4時間以上かけて)8時間(Pharmacotherapy 35: 600, 2015
SLED



 5. その他の用量調整

2. 副作用/妊娠時のリスク

副作用

妊娠時のリスク

3. 抗微生物スペクトラム

4. 薬理学

PK/PD指標
Time above MIC
剤形
注射剤
食事関する推奨(経口薬)1

経口吸収率(%)

Tmax(時間)

最高血清濃度2(μg/mL)
PIPC:242,TAZ :24.2
(3.375g 静注,SD)
蛋白結合(%)
PIPC:16,TAZ:48
分布容積3(Vd)
PIPC:0.24 L/kg,TAZ:0.40 L/kg
平均血清半減期4(T1/2, 時間)
PIPC:1,TAZ:1
排泄

胆汁移行性5(%)
>100
脳脊髄液/血液6(%)
データなし
治療が可能になるだけの脳脊髄移行性7
データなし
AUC8(μg・時間/mL)
PIPC :242,TAZ :25
(3.375g静注,0~∝)
チトクロームP450相互作用
なし
  1. 注記のない場合は成人用製剤
  2. SD:単回投与後,SS:複数回投与後の定常状態
  3. V/F:(Vd)÷(経口生物学的利用能),Vss:定常状態におけるVd,Vss/F:(定常状態におけるVd)÷(経口生物学的利用能)
  4. CrCl>80 mL/分と想定
  5. (胆汁中の最高濃度)÷(血清中の最高濃度)×100
  6. 炎症時における脳脊髄液濃度
  7. 薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定.脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
  8. AUC:血漿中濃度−時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve.
    0~inf=AUC
    0-inf,0~x時間=AUC0-x

5. 主要な薬物相互作用

薬剤
濃度への影響(その他
推奨される対応
アミノグリコシド
アミノグリコシド不活化の可能性
モニターまたは避ける
抗凝固薬
出血リスク↑
モニター
メトトレキサート
メトトレキサート↑
モニターまたは避ける
プロベネシド
PIPC↑,TAZ↑
併用を避ける
バンコマイシン
急性腎障害のリスク↑
モニター
ベクロニウム
神経筋ブロック↑
モニター

6. コメント

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2024/04/22