日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

CAPDによる腹膜炎での腹腔内投与法  (2024/06/18 更新)


臨床状況

経験的治療

  • 培養のために腹水と血液を採取後,ただちに抗菌薬治療を開始する.
  • 治療は腹腔内(IP)投与でも全身静注治療でもよいが,ガイドラインではIP治療が好ましいとされている.
  • 特定の処方が他の処方より優れているという証明はない.
  • 経験的処方は,地域の抗菌薬感受性状況に基づき,グラム陽性菌,グラム陰性菌の双方をカバーするものでなければならない.
  • (VCMまたはCEZ)+(第3世代セファロスポリンまたはアミノグリコシド系薬)が推奨される.
  • CFPM単独治療は第二選択として妥当なことがある
  • 第3世代セファロスポリン(たとえばCAZ)での治療無効は,ESBL産生菌による可能性が大きい.
  • フルオロキノロン系薬単独治療は推奨されない
  • アミノグリコシド系薬による長期のIP治療は避けるべきである.Nアセチルシステイン(600mg経口12時間ごと)の補助治療により聴器毒性が予防できることがある.
  • 残存腎機能が著しく低下している患者での最適抗菌薬処方は知られていない.残存機能と関わりなく固定された用量の処方は,特に時間依存性の殺菌効果を示す抗菌薬(たとえばセファロスポリン系)では問題である.

腹腔内(IP)治療

  • 持続的(透析バッグ交換ごとに投与)または間欠的(1日1回)に行う.
  • 間欠的治療の場合には,抗菌薬を含んだ透析液を最低6時間は設置する.
  • 同一の透析バッグで混合してもよい薬剤
  • ペニシリン系薬とアミノグリコシド系薬は同一の透析バッグで混合してはならない.
  • IP抗菌薬処方についてのほとんどの研究は,自動腹膜透析(APD)ではなく連続携行式腹膜透析(CAPD)の患者を対象としたものである.CAPDからAPDへの抗菌薬用量の外挿は推奨されない.

個々の推奨

薬剤
間欠的投与
(1日1回バッグ交換時に)
持続的投与(バッグ交換ごとに)
LD=初期用量,MD=維持用量
アミノグリコシド系薬
 AMK
2mg/kg1日1回
推奨されない
 GM
0.6mg/kg1日1回
推奨されない
 Netilmicin
0.6mg/kg1日1回
推奨されない
 TOB
0.6mg/kg1日1回
推奨されない
セファロスポリン系薬
 CEZ
15mg/kg1日1回(長時間滞留)
20mg/kg1日1回(短時間滞留)
LD 500mg/L,MD 125mg/L1
 CFPM
1g1日1回
LD 500mg/L,MD 125mg/L1
 CPZ
データなし
LD 500mg/L,MD 62.5~125mg/L
 CTX(入手可能なら)
0.5~1g1日1回
データなし
 CAZ
1~1.5g1日1回(長時間滞留)
20mg/kg1日1回(短時間滞留),
LD 500mg/L,MD 125mg/L1
 CTRX
1g1日1回
データなし
ペニシリン系薬
 PCG
データなし
LD 5万単位/L,MD 2万5千単位/L
 AMPC
データなし
MD 150mg/L
 ABPC
4g1日1回2
MD 125mg/L
 ABPC/SBT
データなし
LD 1.5g,MD 200mg/バッグ
 PIPC/TAZ
データなし
LD 4.5g,MD 1.125g/バッグ
その他の抗菌薬
 AZT
2g1日1回
LD 500mg/L,MD 250mg/L
 CPFX
データなし
MD 50mg/L
 CLDM
データなし
MD 600mg/バッグ
 DAP
300mg1日1回
LD 100mg/L,MD 20mg/L
 FOM
4g1日1回
データなし
 IPM/CS
500mgバッグ交換時に
LD 250mg/L,MD 50mg/L
 OFLX
データなし
LD 200mg/L,MD 25mg/L
 PL-B
データなし
MD 30万単位(30mg)/バッグ
Quinupristin/Dalfopristin
25mg/Lバッグ交換時に3
データなし
 MEPM
500mg1日1回(APDでの長時間滞留)
1g1日1回(CAPDの短時間滞留)
MD 125mg/L
 TEIC(入手可能なら)
15mg/kg5日に1回
LD 400mg/バッグ,MD 20mg/L
 VCM
CAPD:15~30mg5~7日ごと4
APD:15mg/kg4日ごと4
LD 20~25mg/kg,MD 25mg/L
抗真菌薬
 FLCZ
150~200mg24~48時間ごと5
データなし
 VRCZ
2.5mg/kg1日1回5
データなし
  1. 残存腎機能が著しく低下している患者では25%増量が必要になることがある
  2. Enterococcusによる腹膜炎ではABPC腹腔内投与は推奨されない
  3. 同時に500mg静注12時間ごと
  4. APD患者では追加投与が必要になることがあり,少なくとも6時間の滞留が望ましい
  5. 経口が望ましい

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2024/06/17