日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

腹膜炎-透析(CAPD)関連  (2023/03/14 更新)


臨床状況

  • CAPD(持続的携行型腹膜透析)に合併する感染症.
  • 腹痛,混濁した排液,排液中の白血球数>100cells/μL(50%超が好中球)を呈する.半数の患者で発熱がある.
  • 診断には,使用後の透析液数百mLを遠心分離で濃縮.分離濃縮されたものをグラム染色し,(残った透析液を)好気用/嫌気用血液培養ボトルに注入.
  • グラム染色陽性であれば初期治療を行う.
  • 米国外では透析液流の迅速POC(point of care)検査が使用できる
  • Mologic社のPeriflexラテラルフロー抗原検出器
  • 好中球マトリックスメタロプロテイナーゼ-8の検出および数分以内のIL-6量の増加
  • 血液培養でS. epidermidisが示されれば透析カテーテルを“残せる"可能性が十分ある.カテーテル抜去が適応となるのは以下の場合
  • 多数のグラム陰性桿菌が培養されれば,カテーテルによる消化管穿孔を考え,透析カテーテルの抜去の必要性を検討.
  • 同一の病原体での1カ月以内の再発
  • 5日以内に臨床的に反応がない
  • 真菌性腹膜炎
  • カテーテル出口部および/または皮下トンネルの感染
  • 感染はほとんどの場合腹腔内にとどまり,菌血症の合併はまれである.

病原体

  • グラム陽性球菌(45%)
  • グラム陰性桿菌(15%)
  • 混合感染(1%)
  • 真菌(2%)
  • Mycobacterium tuberculosis(0.1%)

第一選択

  • 通常は透析液に薬剤を加えて治療を行う.菌血症が確認された,あるいは疑いがある場合は,静注治療を行う.
  • グラム陽性球菌:VCMを透析液中に加える.
  • グラム染色で酵母がみられた場合のみ抗真菌薬を追加.
  • 培養結果が得られるまで,持続的透析で治療を開始する(すべての薬剤を透析バックに入れる).その後特異的治療をβラクタム薬で行う場合は持続的透析,アミノグリコシドで行う場合は間欠的透析.間欠的透析と持続的透析の2つの治療戦略がある.
  • 同一薬剤で腹腔内投与と全身投与(経口または静注)を同時に行わないこと.
  • 予防的抗真菌薬治療についてはコメント参照.

第二選択

  • なし

コメント

  • 多数のグラム陰性菌叢が培養された場合は,カテーテルによる消化管穿孔の可能性,および/または背景に消化管疾患(たとえば,腸壊死)が存在する可能性を考える.
  • 治療ガイドライン(Perit Dial Int 36: 481, 2016)では,CAPDカテーテル関連腹膜炎に対してだけでなくあらゆる目的で処方される抗菌薬と併用して,NYS経口またはFLCZ(静注/経口)を用いて抗真菌薬予防を行うことが示唆されている.
  • これを支持するデータは限られている.
  • 耐性Candida属選択の懸念と同時に,FLCZが用いられれば薬物相互作用の問題もあり,さらに腸内細菌叢への影響は不明である.ガイドラインでは,CAPD患者への抗微生物薬投与ごとにルーチンで抗真菌予防を行うことには消極的である.
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2023/03/13