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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
カルバペネム系-概説および一覧
(
2025/07/08 更新
)
概説
抗菌活性スペクトラム
カルバペネム系はあらゆるβラクタム系抗菌薬の中で最も広域の抗菌スペクトラムをもつ.
重症患者には温存するよう心掛けること.
ESBL産生好気性グラム陰性桿菌に対する第一選択薬.
カルバペネマーゼが主要な耐性機序である
カルバペネマーゼの3つのタイプ
セリン型カルバペネマーゼ:たとえば,
Klebsiella pneumoniae
カルバペネマーゼ(KPC)
メタロβラクタマーゼ
オキサシリナーゼ:たとえば,OXA-48
耐性についての詳細は,
グラム陰性桿菌,βラクタム薬耐性-概説
を参照.
アレルギーの問題
全発症率は0.3~3.7%と報告されている
カルバペネムと他のβラクタム薬の間の臨床的交差耐性は低い(<1%)
ペニシリンまたはセファロスポリンに対するアレルギーの既往のある患者でも,それが重症の遅発性で皮膚または臓器にかかわる反応でないかぎりは,検査または,さらなる警戒を加えることなく,カルバペネムを投与してもよい.
けいれん
どのβラクタム系薬も(ペニシリン系,セファロスポリン系,モノバクタム系,カルバペネム系),高濃度ではけいれん発作を引き起こすおそれがある(
J Antimicrob Chemother 45: 5, 2000
).
カルバペネム系によるけいれんのリスクはカルバペネム系以外のβラクタム薬よりも大きい.
想定されるメカニズム:薬剤がGABA受容体に結合.IPM/CSはMEPMより結合親和性が大きい.IPM/CSとMEPMを直接比較した研究では,けいれんリスクに統計的有意差はなかった(
J Antimicrob Chemother 69: 2043, 2014
).
用量に注意して用いればIPM/CSでのリスクは少なくなる(
Epilepsia 42: 1590, 2001
).
添付文書では,けいれん発作の発症率はErtapenemで0.5%,IPM/CSで0.4%,MEPMで0.7%とされている.しかし,細菌性髄膜炎に対するMEPMの3つの臨床試験では,薬剤関連のけいれん発作は報告されなかった(
Scand J Infect Dis 31: 3, 1999
;
Drug Saf 22: 191, 2000
).
カルバペネムとバルプロ酸
カルバペネムとバルプロ酸(VPA)の薬物相互作用は多く報告されている.カルバペネムと同時に投与するとVPA濃度が50~80%低下する.
VPA濃度を低下させるカルバペネムの使用は,活性炭,カルニチン,血液透析と並んでVPA過剰投与に対する合理的な治療法となりうる(
Br J Clin Pharmacol 91: 648, 2025
).
そのメカニズムは,VPAの腸肝循環を阻害することと考えられている.VPAは肝臓内でグルクロン酸と結合してVPAグルクロニドを形成する.VPAグルクロニドは不活性代謝物であり,胆汁および尿中に排出されるが,一部はアシルペプチドヒドロラーゼ(主に肝細胞質内にある酵素)によって加水分解されて再びVPAとなる.カルバペネムはアシルペプチドヒドロラーゼを阻害し,VPAの再生を妨げる(その結果,グルクロニドとしてより多く排出される).
薬剤
ドリペネム
(DRPM)
Ertapenem
イミペネム・シラスタチン
(IPM/CS)
IPM/CS/レレバクタム
メロペネム
(MEPM)
メロペネム/Vaborbactam
Sulopenem Etzadroxil-Probenecid
(Thiopenem esterのプロドラッグ)
関連項目リンク
薬物アレルギー:ペニシリン,セファロスポリン,概説
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2025/07/07