セフェピム (2024/07/30 更新)
CFPM 主な商品名:セフェピム塩酸塩
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「サンフォード感染症治療ガイド」の中で推奨されている薬剤の適応および用量は,日本で認可されているものとは異なっている場合がありますので,薬剤選択を考慮する場合には,必ず日本での添付文書および最新安全性情報に基づいて行って下さい. →日本の添付文書情報検索サイト
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Contents
1. 用法および用量
1. 使用
2. 成人用量
3. 小児用量
4. 腎障害時の用量調整
5. その他の用量調整
2. 副作用/妊娠時のリスク
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
5. 主要な薬物相互作用
6. コメント
1. 用法および用量
1. 使用
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CFPMは第4世代のセファロスポリンで,好気性グラム陰性桿菌の細胞壁の透過性に優れ,より急速に浸透する構造をもつ.
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いくつかの染色体性βラクタマーゼによる分解を逃れることができる.
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in vitroでMSSA,Neisseria属,H. influenzae,およびP. aeruginosaを含む幅広いグラム陰性桿菌に活性がある(Lancet Infect Dis 7: 338, 2007).
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抗菌薬の選択肢については,抗菌薬耐性の遺伝子型参照.
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高用量で投与した場合,ESBL産生好気性グラム陰性菌に対して活性がある可能性もある:2g静注8時間ごと.ただしESBL産生グラム陰性菌に対する選択薬剤はCFPMではなく,カルバペネムである.
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第3世代のセファロスポリンよりもS. aureus (MSSA)に対する抗菌活性は大きい.
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セファロスポリンに共通する副作用については,セファロスポリン系-概説を参照.
2. 成人用量
3. 小児用量
用量(生後>28日)
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通常:100mg/kg/日(8時間ごとに分割) Pseudomonas:150mg/kg/日(8時間ごとに分割)
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最大/日
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4. 腎障害時の用量調整
半減期(時間)(腎機能正常)
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2
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半減期(時間)(ESRD)
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18
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用量(腎機能正常)
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2g静注8時間ごと
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CrClまたはeGFR
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CrCl>60:用量調整不要 CrCl 30~60:2g12時間ごと CrCl 11~29:2g24時間ごと CrCl<10:1g24時間ごと
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血液透析
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1gg24時間ごと透析後
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CAPD
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2g48時間ごと
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CRRT
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2g12~24時間ごと
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SLED
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データなし
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5. その他の用量調整
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ゆるやかに増量:2g静注8時間ごと(通常の12時間ごとに代えて)
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肥満手術を受ける10例の患者からのデータ(平均BMI 48):MIC 8μg/mLに対し,投与間隔の60%で遊離濃度>MICとなる.文献:Obes Surg 22: 465, 2012.
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薬剤クリアランス低下.用量調整を考慮する.TDMが有用なことがある.
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詳細は,ECMO薬物用量調整を参照
2. 副作用/妊娠時のリスク
副作用
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有害事象による治療中止(1.5%),投与部位の静脈炎(1%),過敏症,発疹(2%),クームス+(14%),好中球減少症(1%),好酸球増加症(1%),血小板減少症,プロトロンビン/部分トロンボプラスチン時間延長,悪心/嘔吐(1%),下痢(1%),C. difficile腸炎,肝機能検査値異常,頭痛(2%).
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CFPMはCTX,CPDX,CPR,CDTR,CZX,CTRXと同一のR-1側鎖をもつ.交差アレルギーが起こることがある.
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発赤反応(VCMヒスタミン遊離症候群と同様)の報告がある:Antimicrob Agents Chemother 56: 6387, 2012.
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セファロスポリン系に共通の副作用については,セファロスポリン系-概説を参照.
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神経毒性:
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FDA安全性警告:非けいれん性てんかん状態のリスク
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CFPMは中枢神経における主要な抑制的神経伝達物質であるGABAを阻害する.
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毒性は濃度依存的
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腎機能障害がリスク因子.
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次のような症状を示す(重複して生じることもある):混迷,注意散漫,見当識障害,奇異行動,興奮,幻覚,ミオクローヌス,無言,意識障害,昏睡
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診断:脳波検査
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文献:J Antimicrob Chemother 77: 2908, 2022
妊娠時のリスク
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FDAリスク区分(新):ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
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授乳中の使用:乳汁中の脳をは低く,副作用あ予測されない.乳児では消化器毒性をモニター
3. 抗微生物スペクトラム
4. 薬理学
PK/PD指標
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Time above MIC
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剤形
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注射剤
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食事に関する推奨(経口薬)1
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経口吸収率(%)
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Tmax(時間)
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-
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最高血清濃度2(μg/mL)
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164(2g静注,SD)
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最高尿中濃度(μg/mL)
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データなし
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蛋白結合(%)
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20
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分布容積8(Vd)
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18 L(Vss)
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平均血清半減期4(T1/2, 時間)
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2
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排泄
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腎
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胆汁移行性5(%)
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10~20
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脳脊髄液/血液6(%)
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10
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治療が可能になるだけの脳脊髄移行性7
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あり
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AUC9(μg・時間/mL)
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284.8(2g静注 0~inf)
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注記のない場合は成人用製剤
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SD:単回投与後,SS:複数回投与後の定常状態
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V/F:(Vd)÷(経口生物学的利用能),Vss:定常状態におけるVd,Vss/F:(定常状態におけるVd)÷(経口生物学的利用能)
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CrCl>80 mL/分と想定
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(胆汁中の最高濃度)÷(血清中の最高濃度)×100
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炎症時における脳脊髄液濃度
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薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定.脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
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AUC:血中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve.0~inf=AUC0-inf,0~x時間=AUC0-x
5. 主要な薬物相互作用
6. コメント
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2012年6月,FDAは安全性情報を改訂し,腎機能低下患者にCFPM治療を行った場合に,非けいれん性てんかん状態が起こるという警告を発した(そうした例の多くは適正に調整した用量での投与を受けていなかった).大多数の患者で,てんかん発作は投薬中止および/または血液透析により消失した.FDAはCrCL≦60mL/分の患者では用量調整を行うことを推奨している.
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