日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

抗菌薬の持続あるいは長時間静注  (2026/05/12 更新)

持続あるいは長時間静注

個々の薬物用量

薬物
長時間静注
持続静注
コメント
アンピシリン/スルバクタム
9g静注(4時間以上かけて)8時間ごと

9g(ABPC 6g+SBT 3g)Acinetobacterによる人工呼吸器関連肺炎患者(CrCl≧30ml/分)に対する推奨用量.観察研究では高用量は安全かつ有効であった(Scand J Infect Dis 39: 38, 2007J Infect 56: 432, 2008).SBT高用量長時間静注の必要性は,健常ボランティアの血清濃度測定を利用した薬力学コンピューターシミュレーション研究で支持されている(Antimicrob Agents Chemother 57: 3441, 2013Eur J Pharm Sci 136: 104940, 2019).
セファゾリン

初期用量:30mg/kg静注(1時間以上かけて)
維持用量:80~100mg/kg(24時間以上かけて)1日

初期用量の直後に維持用量を開始する.通常用量:初期2g静注,その後6g静注(24時間かけて)1日1回.推定糸球体濾過率に基づく目標定常状態血漿濃度40,60,80μg/mLの場合の投与ノモグラムが,菌血症または心内膜炎に対しセファゾリン持続静注治療が行われた162例でのデータに基づき作成された(Antimicrob Agents Chemother 63: e00806, 2019).
セフェピム
2g静注(3時間以上かけて)8時間ごと
初期用量:2g静注(30分以上かけて)
維持用量:6g静注(24時間以上かけて)1日1回
持続静注では,初期用量の直後に維持用量を開始.推奨用量はCrCl>60mL/分の患者に対するもの.長時間静注の文献:Clin Infect Dis 2024年8月7日.持続静注の文献:Pharmacy 12: 185, 2024
セフィデロコル
2g静注(3時間以上かけて)8時間ごと

カルバペネム耐性グラム陰性菌を含む院内肺炎(HAP)/人工呼吸器関連肺炎(VAP)に対して(Lancet Infect Dis 21: 213, 2021;Lancet Infect Dis 21: 226, 2021).推奨用量はCrCl>60の患者に対するもの.
セフタジジム
2g静注(4時間以上かけて)8時間ごと
初期用量:2g静注(30分以上かけて)
維持用量:6g静注(24時間以上かけて)1日1回
持続静注では,初期用量静注の直後に維持用量を開始.推奨用量はCrCl>50mL/分の患者に対するもの.長時間静注の文献:J Crit Care 69: 154011, 2022.持続静注の文献:Pharmacy 12: 185, 2024.
PKモデル研究によると,持続静注処方では初期用量2gは,重症患者では不十分なことがある;臨床データが必要(Antibiotics 13: 756, 2024).CAZの副産物であるピリジンは,理論的には持続静注を受ける患者で毒性となる懸念がある.1日用量を6gに制限すること,希釈に生食をもちいて(可能なら)CAZ濃度を≦3g/100mLに保つこと,静注器具の温度を15~22℃に保つことなどによって毒性を最小化する(Am J Health Syst Pharm 76: 200, 2019).
セフトロザン/タゾバクタム
3g静注(3時間以上かけて)8時間ごと
初期用量:3g静注(1時間以上かけて)
維持用量:9g静注(24時間以上かけて)1日1回
持続静注では,初期用量の直後に維持用量を開始する.3g=CTLZ 2g+TAZ 1g.推奨用量はCrCl>50mL/分の患者でのもの.長時間静注は単純性膀胱炎以外の感染症で用いる(Clin Infect Dis 2024年8月7日).プロスペクティブコホート研究では,持続静注によりMIC 8μg/mLまでのP. aeruginosaに対して100%fT>MICが達成された(Eur J Clin Microbiol Infect Dis 38: 1457, 2019Drugs 83: 967, 2023Pharmacotherapy 45: 386, 2025
ドリペネム
500mg静注(4時間以上かけて)8時間ごと

推奨用量はCrCl>50mL/分の患者に対するもの.文献:Crit Care Med 36: 1089, 2008
イミペネム/シラスタチン
500mg静注(3時間以上かけて)8時間ごと

推奨用量はCrCl>60mL/分の患者に対するもの.IPM/CSの安定性からすると,長時間静注は困難.文献:Clin Infect Dis 2024年8月7日
メロペネム
2g静注(3時間以上かけて)8時間ごと

推奨用量はCrCl>50mL/分の患者に対するもの.長時間静注の文献:Clin Infect Dis 2024年8月7日.最近のシステマティックレビューおよびメタアナリシスは,MEPM 3~4時間の長時間静注を受けた敗血症患者で,死亡率の低下,臨床的治癒率の上昇,顕微鏡的除記の改善を示唆している(Int J Surg 111: 7213, 2025).
ピペラシリン/タゾバクタム
4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと

推奨用量はCrCl≧20mL/分の患者に対するもの(Clin Infect Dis 44: 357, 2007Antimicrob Agents Chemother 54: 460, 2010).重症の場合には,十分な血中濃度達成を遅らせないために(Int J Antimicrob Agents 45: 461, 2015),初期用量(4.5g静注[30分以上かけて],最初の長時間静注の直前)を考慮.初期用量との関係での最初の長時間静注のタイミングについて見解は分かれている.グラム陰性菌菌血症患者の後ろ向きコホート研究では,初期用量に続いての4時間後長時間静注(CrCl<20mL/分なら8時間後)は,臨床転帰を決定的に改善することはなく,毒性の増大もなかった.しかし,この研究は検出力が低く,患者は重症ではなかった(J Antimicrob Chemother 80: 2635, 2025
Temocillin

初期用量:2g静注(30分以上かけて)
維持用量:6g静注(24時間以上かけて)1日1回
初期用量の直後に維持用量を開始.推奨用量はCrCl>50mL/分の患者に対するもの.重症でない患者では4g/日で十分なことがある.文献:J Antimicrob Chemother 61: 382, 2008J Antimicrob Chemother 70: 891, 2015
バンコマイシン

初期用量 15~20mg/kg静注(速度10~15mg/分)
維持用量 30~40mg/kg静注(24時間以上かけて)1日1回
初期用量の直後に維持用量を開始.投与量はSS(単回投与後の定常状態)濃度が20~25 μg/mLとなるように調整.AUC24はSS濃度に24を乗じることで算出できる.濃度20~25μg/mLは,AUC24 480~600 μg/mL/時間に相当.
VCMの持続静注投与は,治療選択肢として広く受け入れられつつある.目標濃度はより迅速に達成され,変動も少なく,腎毒性リスクは間欠投与と同等かそれ以下であると考えられる.重症患者で使用される他の薬剤との配合禁忌があるため,VCMを持続静注投与する場合は,複数の静脈ラインの使用が必要となることがある(Am J Health Syst Pharm 77: 835, 2020
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2026 Life Science Publishing↑ page top

2026/05/11