false
日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
セファロスポリン系-概説および一覧
(
2024/07/30 更新
)
概説
セファロスポリン系はβラクタム環をもつため,他のβラクタム系薬(ペニシリン系,モノバクタム系,カルバペネム系)と構造的に類似する.
他のβラクタム系と同様に,概して安全である(まれに例外あり).
分類(世代)
セファロスポリンは,予測されるin vitro抗菌活性スペクトラムにより分類(グループ化)される.
抗菌耐性のパターンは非常に多様である.地域の感受性データをチェックすること.
経口セファロスポリンは,高レベル耐性のため
N. gonorrhoeae
感染の治療には推奨されない(
MMWR 61: 590, 2012
).
以下の分類図式は,それぞれの薬剤の元々の抗菌活性パターンに基づくものである.
第1世代
活性スペクトラム:
S. aureus
(MSSA),streptococci,グラム陰性菌に対するカバーは部分的(たとえば,
E. coli
,
Klebsiella
属,
P. mirabillis
の一部の株),嫌気性菌に対するカバーはほとんどない.
注射
セファゾリン
(CEZ)
経口
Cefadroxil
セファレキシン
(CEX)
第2世代
活性スペクトラム:一般にグラム陽性球菌には活性が乏しく,
H. influenzae
に対する活性が向上
経口
セフロキシムアキセチル
(CXM-AX)
セファクロル
(CCL)
Loracarbef
(入手可能な地域で)
Cefprozil
注射
セフメタゾール(CMZ)(入手可能な場合)
Cefuroxime
セファマイシン系:
Bacteroides
属を含む嫌気性菌に活性あり.ESBL産生グラム陰性桿菌に対しin vitroで活性をもつ可能性があるが,臨床上の有効性を示すデータはない.
Cefoxitin
Cefotetan
第3世代
グラム陰性桿菌に対する活性拡大.注射剤で脳脊髄液移行性が改善した.いずれの薬剤も,グラム陰性桿菌が産生するESBLとAmpC βラクタマーゼにより酵素的不活化を受ける.
注射
セフォタキシム
(CTX)(入手可能な地域で)
セフトリアキソン
(CTRX)
セフチゾキシム
(CZX)† 嫌気性菌に活性あり
セフタジジム
(CAZ)
P. aeruginosa
に対して活性あり.細菌性髄膜炎治療には推奨されない.
セフォペラゾン・スルバクタム
(CPZ/SBT)
P. aeruginosa
,
Bacteroides
属を含む嫌気性菌に活性あり.細菌性髄膜炎治療には推奨されない.
経口
セフジニル
(CFDN)
セフジトレンピボキシル
(CDTR-PI)
セフィキシム
(CFIX)
セフポドキシムプロキセチル
(CPDX-PR)
Ceftibuten
新世代
一部の細菌に対する抗菌スペクトラムを増強させたセファロスポリン.グラム陰性嫌気性菌,特に
Bacteroides
には活性が乏しい.注射薬のみ.
セフェピム
(CFPM):第4世代セファロスポリンと呼ばれることもある.
P. aeruginosa
およびAmpC産生菌に対して活性あり.脳脊髄液への移行性が高い.
セフピロム
(CPR)
Ceftaroline fosamil acetate
:メチシリン耐性を媒介するPBP2aに対する結合親和性が高いためMRSAに活性がある.
Ceftobiprole
:メチシリン耐性を媒介するPBP2aに対する結合親和性が高いためMRSAに活性がある.
セフトロザン・タゾバクタム
(CTLZ/TAZ):
P. aeruginosam
,ESBL産生菌,一部のAmpC産生菌に対する活性がある.
セフタジジム/Avibactam
:セフタジジムと同一の活性スペクトラムに,ESBL産生菌,AmpC産生菌,セリン型カルバペネマーゼ産生グラム陰性菌に対する活性が加わった.
セフィデロコル
:ESBL産生菌,AmpC産生菌,カルバペネマーゼ産生グラム陰性菌(
P. aeruginosa
,
Acinetobacter
属,
Stenotrophomonas maltphilia
などの非発酵菌)に対して活性あり.グラム陽性菌または嫌気性菌に対する活性なし.
セフェピム/Enmetazobactam
分布,移行性
セファロスポリンは,心膜内,腹膜内,胸膜内,滑液,尿中で治療濃度に達する.
脳脊髄液移行性:CTX,CZX,CTRXは細菌性髄膜炎治療に承認されている.
胆汁への移行:CEZ,CTRXは胆汁中の濃度が最も高い.
副作用,アレルギー
アレルギー,交差アレルギー反応
もっとも多い副作用はβラクタム薬物アレルギーである
詳細な議論は,
薬物アレルギー-βラクタム
および交差アレルギーについての議論を参照.
ペニシリンアレルギーの病歴の多くは不正確である.詳細な病歴把握とペニシリンアレルギー検査から偽のペニシリンアレルギーを鑑別することが,抗微生物薬適正使用にとって重要である.
βラクタム薬治療の有用性とペニシリンアレルギー検査
(Clin Infect Dis 68: 157, 2019
).
簡潔な総説:
JAMA 321: 188, 2019
;
N Engl J Med 381: 2338, 2019
;
Lancet 393: 183, 2019
.
その他の共通な副作用
セファロスポリン系,特に第3世代を使用した場合は,
C. difficile
毒性関連の腸炎リスクが上昇する.
すべてのβラクタム薬はけいれん発作誘発または増強のリスクを増大させる可能性がある.
特異的な副作用については,各薬剤を参照.
関連項目
薬物アレルギー-βラクタム
ペニシリン-概説
カルバペネム-概説
セフトリアキソンの脱感作
抗菌薬耐性の遺伝子型
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing
↑ page top
2024/07/29