日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Providencia 属-P. stuartii, P. rettgeri, P. alcalificiens  (2024/11/12 更新)
P. stuartiiP. rettgeriP. alcalifaciens


臨床状況

  • 尿,血液,創部培養から分離される
  • Providencia stuartii
  • Providencia rettgeri
  • Providencia alcalifaciens
  • 一般に複数の耐性機構をもつ院内病原菌である.
  • 耐性は種によって異なる
  • P. stuartiiは一般にもっとも耐性が強く,基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)を産生することが多い.さらに分離株の50%以上は,アミノグリコシド系薬,フルオロキノロン系薬にも耐性である
  • P. alcalifaciensおよびP. rustigianiiは,ペニシリン系薬および旧世代のセファロスポリン系薬に感受性のことが多い
  • P. rettgeriの感受性は,P. stuartiiP. alcalifaciensの中間である
  • Providencia属は,ポリミキシンに自然耐性
  • 特異的治療は,感染部位や重症度,患者の衰弱度,in vitroの抗菌薬感受性試験結果に従って行う

分類

  • 通性嫌気性グラム陰性桿菌

第一選択

  • 治療
  • 中等症~重症患者,または重症感染症に対する全身治療の推奨.さらなる詳細は抗菌薬耐性グラム陰性菌感染の治療に関する2023年IDSAガイダンスを参照.
検査結果
関与する状況要因
推奨される処方
コメント
培養でProvidencia属が陽性だったが,感受性試験結果が出ていない場合,経験的治療
施設のESBL率<10~15%
PIPC/TAZ 3.375g静注6時間ごと,または4.5g静注8時間ごと(重症感染症の場合)

BMI≧30なら,維持用量を4.5g4時間以上かけて静注8時間ごとまで増量

CFPM 1~2g静注8時間または12時間ごと
CPFX 400mg静注12時間ごと,または750mg経口12時間ごと
生命の危険がある感染症:MEPM 2g3時間以上かけて静注を考慮
施設のESBL率>15%
MEPM 1~2g静注8時間ごと
生命の危険がある感染症:MEPM 2g3時間以上かけて静注を考
in vitroでAZT,CTRX,CAZ,CFPM,PIPC/TAZに感性
菌量が多く感染源コントロールがうまくいっていない患者:心内膜炎,CNS感染
PIPC/TAZ 3.375g静注6時間ごと,または4.5g静注8時間ごと(重症感染)
BMI≧30なら,維持用量を4.5g4時間以上かけて静注8時間ごとまで増量
CTRX 1~2g静注24時間ごと

CFPM 1~2g静注8時間ごと
CPFX 400mg静注12時間ごと,または750mg経口12時間ごと

ペニシリンアレルギーの場合:AZT 2g静注6~8時間ごとがひとつの選択肢
Providencia属が臨床的培養で検出された場合について,2023年IDSAガイダンスはAST結果に基づいて抗菌薬治療を選択することを推奨している.

しかし,AmpCに対する安定性がより大きいことから,菌量の大きい感染(たとえば,心内膜炎)または感染源コントロールが難しい場合(たとえば,CNS感染)ではCTRXよりもCFPMの使用を考慮する方が合理的.
AZT,CTRX,CTX,CAZ,またはCFPM(ESBL)に耐性,カルバペネム系に感性
ESBL産生の可能性
MEPM 1~2g静注8時間ごと,またはErtapenem 1g静注24時間ごと
感性であれば:CPFX 400mg静注1日2回または750mg経口1日2回,またはLVFX 750mg静注1日1回
  
カルバペネム系薬,フルオロキノロン系薬,アミノグリコシド系薬にin vitroで耐性
セリン型カルバペネマーゼ(たとえば,KPC)産生が示唆される
CAZ/Avibactam 2.5g3時間以上かけて静注8時間ごと,または
MEPM/Vaborbactam 4g3時間以上かけて静注8時間ごと
代表薬1剤のみでなく,すべてのカルバペネム系薬の感受性をin vitroで確認すること

感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される

これらの薬剤の耐性株出現に関する議論:Clin Infect Dis 68: 519, 2019Antimicrob Agents Chemother 63: e01551, 2019
上記の薬剤およびCAZ/Avibactam,フルオロキノロン系,アミノグリコシド系,STに耐性
メタロ・カルバペネマーゼ産生と同様のパターン
CAZ/Avibactam 2.5g3時間以上かけて静注8時間ごと+AZT 2g3時間以上かけて静注8時間ごと,または
CFDC 2g3時間以上かけて静注8時間ごと
感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される
in vitro感受性に基づき,MEPM/Vaborbactam+AZTが選択肢となることがあるが,有効性は証明されていない.

第二選択

  • βラクタム薬に対する重症IgE反応(たとえばアナフィラキシー,血管神経浮腫)がある場合,in vitroで感受性があれば,
  • AZT 2g静注6~8時間ごと
  • CPFX 400mg静注12時間ごとまたは750mg経口1日2回
  • LVFX 750mg静注または経口1日1回
  • ESBLおよび/またはAmpC産生株に対して:CTLZ/TAZ 1.5g3時間以上かけて静注8時間ごと,またはTemocillin 2g静注12時間ごと(入手可能な場合)
  • in vitroでProvidencia属がMEPM/Vaborbactamを含むすべてのカルバペネム系薬に耐性で,同時にCAZ/Avibactam,フルオロキノロン系藥,ST,アミノグリコシド系藥に耐性の場合
  • 感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される
  • 可能なサルベージ処方
  • 【米国の事情】FOM静注の緊急使用は,個々の患者に対する治験薬の例外的使用を通じて可能:電話:1-888-6332,または+1-301-796-1400.緊急連絡:+1-301-796-8240または1-866-300-4374
  • Plazomicin 15mg/kg静注24時間ごと(複雑性尿路感染症)

抗微生物薬適正使用

抗菌薬選択において考慮すべきこと
  • ESBL
  • in vitroで感受性であっても臨床的治療失敗の報告があるため,PIPC/TAZは避ける(JAMA 320: 979, 2018
  • in vitroでフルオロキノロン系薬とアミノグリコシド系薬に同時に耐性のことが多い.アミノグリコシド系薬は毒性リスクがあるため,他に選択肢のない場合以外は避ける
  • Providencia属はポリミキシン(コリスチン,PL-B)に自然耐性.
  • Providencia属は通常Nitrofurantoinに耐性.
  • TGCはin vitroでは活性の場合もあるが,血清中濃度が低いため臨床的な有効性には疑問がある.
  • EravacyclineとOmadacyclineはin vitroではKPCおよびメタロカルバペネマーゼ産生株に活性があるが,公表された臨床データはない.
  • 尿路感染症では,Providencia属は通常多剤耐性である.

コメント

  • CFDC:FDAはCFDC感受性細菌による複雑性尿路感染症に対し,他の治療選択がないか限られる場合にのみ承認.CFDCと最適治療(Best Available Therapy:BAT)を比較したオープンラベルランダム化試験では,28日死亡率はCFDC群24.8%,BAT群18.4%だった(統計学的有意差なし).
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing↑ page top
2024/11/11