日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Stenotrophomonas maltophilia  (2024/11/19 更新)
Xanthomonas, Pseudomonas


臨床状況

  • Stenotrophomonas maltophiliaは,肺炎,菌血症その他の感染症を引き起こす.
  • 免疫不全患者,全身状態不良患者で感染が起こりやすい.
  • 嚢胞性線維症患者の急性増悪の原因となることがある(P. aeruginosaを伴うことも伴わないこともある)
  • Stenotrophomonasは以下の薬剤に自然耐性
  • βラクタム系薬(ペニシリン系,セファロスポリン系,AZT,カルバペネム系)には,染色体性の次の機序のために耐性
  • 亜鉛依存性メタロβラクタマーゼ
  • 基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生
  • OXA型βラクタマーゼ
  • ST 95.4
  • LVFX 78.0
  • MINO 99.5
  • CAZ 20.9(単剤治療としては推奨されない)
  • Omadacycline,Eravacycline,Cefiderocolはin vitroで活性があるが,臨床データは乏しいかない.
  • 治療はほぼつねに培養陽性を確認してから開始し,in vitroでの感受性試験結果に基づいて行う.

分類

  • グラム陰性桿菌

第一選択

  • 軽症感染およびS. maltophiliaの役割が不明の複数菌感染:ST(トリメトプリム成分)8~12mg/kg/日8時間ごと,または12時間ごとに分割が好ましい処方

第二選択

  • 中等症または重症感染に対して:
  • 次の薬剤から2剤の併用治療:ST(8~12mg/kg/日静注/経口8時間または12時間ごとに分割),LVFX(750mg静注/経口24時間ごと),MINO(200mg静注/経口12時間ごと),またはCFDC(2g3時間以上かけて静注)(Clin Infect Dis 74: 2089, 2022
  • CAZ/Avibactam 2.5g3時間以上かけて静注8時間ごと+AZT 2g2時間以上かけて静注8時間ごと
  • 軽症感染およびS. maltophiliaの役割が不明の複数菌感染:STLVFXMINOCFDCでの単剤治療

抗微生物薬適正使用

  • 重症度,感染巣のコントロール,in vitro感受性,および臨床反応に基づき,ST静注(のぞましい)またはMINO単剤治療へde-escalationしてもよい.

コメント

  • 標準的な治療処方はない.IDSAガイドライン(Clin Infect Dis 74: 2089, 2022)では,上記の薬剤ではよくみられる治療中の急速な耐性発現を防ぐための努力として併用治療を行うことになっている.
  • 観察研究のデータに基づくことだが,S. maltophiliaによる血流および下気道感染の治療においてSTに替えてLVFXを用いるのは理にかなっている(Open Forum Infect Dis 9: ofab644, 2022).
  • Cefiderocol:FDAは,Cefiderocol感性細菌による複雑性尿路感染症患者で,治療選択肢がないか限られている場合に承認した.
  • 敗血症,肺炎,菌血症,複雑性尿路感染症患者を対象にCefiderocolと最適治療(Best Available Therapy:BAT)を比較したオープンラベルランダム化試験では,28日死亡率はCefiderocol群24.8%,BAT群18.4%だった(懸念されるが,統計学的有意差なし)
  • 多くの株はin vitroでポリミキシン(PL-B,コリスチン)に感性だが,これらの薬剤は毒性のため,まれにしか使われない.
  • PL-Bの方が使用が容易である.尿中濃度が低いため尿路感染症には使用しない.
  • コリスチンは尿路感染症のために温存しておく.
  • TGC:FDAは,TGCを投与された患者では他の抗菌薬に比べ死亡リスクが高いことに言及し,TGCは他の選択肢が不適切な場合にのみ使用することを推奨している.
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2024/11/18