日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Morganella morganii  (2025/03/11 更新)
Morganella morganii


臨床状況

  • Morganella morganiiは,さまざまな感染症の原因となる.尿路および術後創感染の原因菌として同定されることがもっとも多い.
  • 一般に院内病原菌である.
  • 耐性と感受性
  • ポリミキシン(コリスチン,ポリミキシンB),ペニシリン,ABPC,ABPC/SBT,AMPC/CVA,第1,第2世代セファロスポリン系薬,Nitrofurantoin,FOMに自然耐性.
  • 通常はAZM,アミノグリコシド系薬,抗緑膿菌作用をもつペニシリン系薬,広域スペクトラムセファロスポリン系薬(CFPM,CAZ),カルバペネム系薬,フルオロキノロン系薬に感受性,STにも感受性のことがある.
  • カルバペネマーゼを産生する株もある.
  • 酵素変異,薬剤標的の変化,排出ポンプ,細胞壁透過性低下といったプラスミドを介する他の耐性機序により,アミノグリコシド系薬およびフルオロキノロン系薬に耐性を示す株もある.
耐性機序などの諸問題,および治療に関する問題についてのさらなる議論は,グラム陰性桿菌,βラクタム薬耐性-概説参照.IDSAガイドラインの文献についてはコメントを参照

分類

  • 通性嫌気性グラム陰性腸内細菌

第一選択

  • 感受性のある株による合併症のない感染症(たとえば,尿路感染症)または重症度の低い感染症では,下表にあげた薬剤に加えて,フルオロキノロン,第2,第3世代セファロスポリンも治療選択肢である.感受性ある株であれば,STも選択肢となるが,耐性が多いため経験的治療の薬剤としての有用性は限られたものである.Nitrofurantoinに対してM.morganiiは自然耐性であるため,合併症のない尿路感染症には使用してはならない.IPM/CSは他のカルバペネムより活性が低い.
検査結果
関与する状況要因
推奨される処方
コメント
Morganella属培養陽性が報告されたが,in vitro感受性検査結果は得られていない,経験的治療
地域のESBL率が<10~15%
PIPC/TAZ 初回4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと
CTRX 1~2g静注24時間ごと
AZT 2g静注8時間ごと
CPFX 400mg静注12時間ごと,またはLVFX 750mg静注1日1回
CFPM 1~2g静注8~12時間ごと
生命の危険のある病態では,MEPM 1~2g静注8時間ごと
  
 
地域のESBL率が>15%
MEPM 1~2g静注8時間ごと
Ertapenem 1g静注24時間ごと
  
AZT,CTRX,CTX,CAZ,ST,フルオロキノロン系薬に感受性
ESBLや構成型AmpCの産生株でないことが示唆される
CPFX 400mg静注12時間ごと,またはLVFX 750mg静注1日1回
ST(トリメトプリムとして)10mg/kg/日2~3回に分割投与

CTRX 1~2g静注24時間ごと
CFPM 1~2g静注8時間または12時間ごと
Morganella属が臨床培養で検出された場合について,2023年IDSAガイダンスはAST結果に基づき抗菌薬治療を選択することを推奨している.
しかし,AmpCに対する安定性がより高いことから,菌量の多い感染(たとえば,心内膜炎)あるいは感染源のコントロールが難しい場合(たとえば,CNS感染)では,CTRXよりもCFPM使用を考慮するのが合理的である.
AZT,CTRX,CTX,CAZに耐性
ESBLおよび/またはAmpC過剰産生と一致
MEPM 1~2g静注8時間ごと,またはErtapenem 1g静注24時間ごと

感受性があれば,CPFX 400mg静注12時間ごと,またはLVFX 750mg静注1日1回
感受性があれば,ST(トリメトプリムとして)10mg/kg/日2~3回に分割
   
MEPM,IPM/CSに耐性,同時にフルオロキノロン系薬,アミノグリコシド系薬,STに耐性.in vitroでCAZ/Avibactam,MEPM/Vaborbactamに感受性
セリン型カルバペネマーゼ(たとえば,Klebsiella pneumoniae carbapenemaze:KPC)による耐性と一致
in vitroで感受性があれば,CAZ/Avibactam 2.5g3時間以上かけて静注8時間ごと,MEPM/Vaborbactam 4g3時間以上かけて静注8時間ごと
感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される
これらの薬剤に対する耐性変異の出現についての議論は,Clin Infect Dis 68: 519, 2019Antimicrob Agents Chemother 63: e01551, 2018参照
検査したすべてのβラクタム薬(KPCに活性のある薬剤を含む),フルオロキノロン系薬,アミノグリコシド系薬,ST,FOM,ポリミキシン類に汎耐性
メタロカルバペネマーゼを含む複数の耐性機序が想定される
CAZ/Avibactam 2.5g3時間以上かけて静注8時間ごと+AZT 2g3時間以上かけて静注6時間ごと,または
CFDC 2g3時間以上かけて静注8時間ごと
感染症専門医へのコンサルテーションが必要

第二選択

  • IgEを介する重症βラクタム薬アレルギー(たとえばアナフィラキシー,血管神経浮腫,かつin vitroで感受性がある場合)
  • AZT 1g静注8時間ごと~2g静注6時間ごと
  • CPFX 400mg静注12時間ごとまたは750mg経口1日2回
  • LVFX 750mg静注24時間ごとまたは経口1日1回
  • EBSL産生株に対する第二選択肢
  • CTLZ/TAZ 1.5g3時間以上かけて静注8時間ごと
  • Temocillin 2g静注12時間ごと(入手可能なら)
  • カルバペネマーゼ産生の耐性株で,メタロβラクタマーゼ産生が疑われる場合(CAZ/AvibactamおよびMEPM/Vaborbactamに耐性)
  • CAZ/Avibactam 2.5g2時間以上かけて静注8時間ごと+AZT 2g静注8時間ごと
  • メタロカルバペネマーゼによる加水分解に対してAZTが抵抗であることに基づく.CAZ/Avibactamは,同時に存在するESBLによる加水分解からAZTを保護する
  • Cefiderocol:2g3時間以上かけて静注8時間ごと

抗微生物薬適正使用

  • 薬剤選択
  • ESBL産生株に対しては,in vitroで感受性が報告されてもPIPC/TAZは避ける(JAMA 320: 979, 2018).
  • すべてのカルバペネム系薬の感受性をチェックすること.臨床検査でIPMに対して耐性でも,MEPMにも耐性とは推定できない(J Glob Antimicrob Resist 21: 223, 2020).
  • MDRおよび超薬剤耐性(XDR)株に対して,
  • TGCはin vitroでは活性がある場合もあるが,血清中濃度が低いため臨床的な有効性には疑問がある.
  • 臨床検査で,メタロβラクタマーゼ産生のエビデンスがある:
  • 感受性があれば,フルオロキノロン系薬またはアミノグリコシド系薬
  • メタロβラクタマーゼはAZTのβラクタム環を加水分解しないが,同時にセリン型βラクタマーゼ(KPC,ESBLまたはAmpC)産生株であることが多く,これらによってAZTは加水分解される.CAZ/Avibactam(さもなければAZTを加水分解するであろうセリン型βラクタマーゼを阻害)との併用が奏効したという症例報告がある(Antimicrob Agents Chemother 63: e02463, 2019).

コメント

  • CFDC:FDAは,CFDC感性細菌による複雑性尿路感染症患者で,治療選択肢が限られているかない場合に承認した.敗血症,肺炎,菌血症,複雑性尿路感染症患者を対象にCFDCと最適治療(Best Available Therapy:BAT)を比較したオープンラベルランダム化比較試験では,28日死亡率はCFDC群24.8%,BAT群18.4%だった(統計的有意差なし).
  • 尿路感染症
  • 可能なら,留置Foleyカテーテルを抜去し,尿路閉塞がないことを確認する.
  • NirtofurantoinおよびFOMは活性がないことに注意.
  • 文献:
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2025/03/10