日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Klebsiella 属-K. oxytoca, K. pneumoniae, K. variicola  (2026/03/10 更新)
Klebsiella pneumoniaeKlebsiella oxytoca,感受性株および耐性株


臨床状況

  • Klebsiella属は,健常者,免疫不全者を問わず,単純性尿路感染症から腹腔内,皮膚・軟部組織,肺,中枢神経などの生命を脅かす感染症まで,さまざまな感染症を引き起こす.Klebsiella pneumoniae complexは,K. pneumoniaeおよびK. variicolaを含む細菌群である.
  • 推奨される治療処方は病原菌の検出とin vitroでの感受性検査結果に基づく.臨床状況としては,
  • 病原体が検出されたが,in vitro感受性結果が得られていない場合の経験的治療
  • 病原体が検出され,in vitro感受性結果が得られている場合の特異的/標的治療
  • 特異的治療は,抗菌薬耐性の機序に関する手がかりとなるin vitro感受性のパターンに基づく.
  • 強毒性で,粘液状(過粘稠性)の株の分離が増加しつつある.他の点では健康な宿主に対し,感染症や,多くの場合転移(たとえば,肝膿瘍)を引き起こすことがある.Clin Infect Dis 58: 225, 2014参照.
  • 一部の薬剤についての詳細,最新のデータ,文献引用などについては,コメントを参照.

分類

  • 通性嫌気性発酵性グラム陰性桿菌
  • Klebsiella oxytoca
  • Klebsiella pneumoniae
  • Klebsiella variicola

第一選択

  • 感受性のある株による合併症のない感染症(たとえば,尿路感染症)または重症度の低い感染症では,下表にあげた薬剤に加えて,以下の治療選択肢がある
  • 感受性ある株であれば,STも選択肢となるが,耐性が多いため経験的治療の薬剤としての有用性は限られたものである.NitrofurantoinおよびFOM経口は合併症のない尿路感染症での選択肢である.(訳注:FOM 経口は米国ではFosfomycin tromethamineであり,日本のホスホマイシンカルシウムとは異なる)
検査結果
関与する状況要因
推奨される処方
コメント
検査でKlebsiella属が確認されたが,感受性結果が出ていない場合,経験的治療
地域の基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)耐性率が<10%
CTRX 2g静注24時間ごと
PIPC/TAZ 4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと
CPFX 400mg静注1日2回,またはLVFX 750mg静注24時間ごと
  

地域のESBL耐性率が>10%
MEPM 1~2g静注8時間ごと,またはErtapenem 1g静注24時間ごと
  
AZT,CTRX,CTX,CAZ,CFPMに感受性
ESBL産生ではなく,確認された感受性に基づいて薬剤を選択する
CTRX 2g静注24時間ごと
PIPC/TAZ 4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと
CPFX 400mg静注1日2回,またはLVFX 750mg静注24時間ごと
  
AZT,CTRX,CTX,CAZ,CFPMに対して耐性(ESBL),カルバペネムに感受性
おそらくESBL産生株
MEPM 1~2g静注8時間ごと
IPM/CS 500mg静注6時間ごと
Ertapenem 1g静注24時間ごと
カルバペネム温存のための代替薬としてCTLZ/TAZ 1.5g静注8時間ごとの使用を考慮する
注:
Klebsiella属はin vitroでPIPC/TAZに感受性を示すことがあるが,臨床的には無効なことがあり,推奨されない
より重症の感染症に対してはMEPM 2g3時間以上かけて静注8時間ごとを考慮する
上記の薬剤,およびMEPMまたはIPM/CS,または両方に対して耐性だが,CAZ/Avibactam,MEPM/Vaborbactamに感受性
このパターンはKPC(Klebsiella pneumoniaeカルバペネマーゼ)の産生に一致する
CAZ/Avibactam 2.5g3時間以上かけて静注8時間ごと(下記コメント参照)
MEPM/Vaborbactam 4g3時間以上かけて静注8時間ごと
IPM/CS/REL 1.25g30分以上かけて静注6時間ごと(CrCl>90mL/分)
感染症専門医へのコンサルテーションが強く推奨される
Ertapenem耐性株の分離は必ずしもMEPMまたはIPM/CS交差耐性を意味しないので,分離株がこれらの両方に感性ならどちらかを用いてもよい
AZT/Avibactamも選択肢となる(用量は下記参照)
以上の薬剤に対する耐性変異出現についての議論は,Clin Infect Dis 68: 519, 2019Antimicrob Agents Chemother 63: e01551, 2018参照
上記の薬剤,およびCAZ/Avibactam,MEPM/Vaborbactam,フルオロキノロン系薬,アミノグリコシド系薬,STに耐性
このin vitroのパターンはメタロβラクタマーゼ産生に一致
フルオロキノロン系薬およびアミノグリコシド系薬にも耐性のことが多い
CAZ/Avibactam 2.5g3時間以上かけて静注8時間ごと+AZT 2g2時間以上かけて静注6時間ごと,または
AZT/Avibactam 2.67g(AZT 2g/Avibactam 0.67g)初回3時間以上かけて注入,次の投与間隔をおいて2g(AZT 1.5g/Avibactam 500mg)3時間以上かけて注入

CFDC 2g3時間以上かけて静注8時間ごと
感染症専門医へのコンサルテーションが強く推奨される
in vitroでの感受性検査結果に基づけば,MEPM/VaborbactamAZTが有効である可能性がある.
ポリミキシン類および検査した他の抗菌薬すべてに耐性
  
CFDC 2g3時間以上かけて静注8時間ごと
可能なら,感染症専門医へのコンサルテーションが強く推奨される

第二選択

検査の結果,ESBL非産生株であり,一部の薬剤に対する感受性が確認された場合
  • CEZ 1g静注8時間ごと
  • ST(トリメトプリムとして)10mg/kg/日2~3回に分割
  • AMPC/CVA 1.2~2.4g静注8時間ごと(入手可能ならば)
ESBL産生株
  • 尿路以外の感染
  • CTLZ/TAZ 1.5g3時間以上かけて静注8時間ごと
  • 尿路感染-腎盂腎炎および他の複雑性尿路感染症
  • Temocillin 2g静注12時間ごと(入手可能ならば)
  • FOM静注 6g60分以上かけて静注8時間ごと
  • CFPM/Enmetazobactam 2.5g2時間以上かけて静注8時間ごとが,最近FDAによりESBL産生菌を含む複雑性尿路感染症治療に承認された.
  • 欧州医薬品庁(EMA)は,複雑性尿路感染症,院内肺炎,人工呼吸器関連肺炎に承認

抗微生物薬適正使用

  • カルバペネム系薬は,ESBL産生株による感染の治療や嫌気性菌/好気性菌の複合感染の治療のために温存しておくこと.
  • CAZ/Avibactam,IPM/CS/REL,MEMP/Vaborbactamは,ESBLおよび関連するβラクタマーゼに対して活性があるが,カルバペネマーゼの耐性メカニズムが確認された患者のために温存しておくこと.

コメント

メタロβラクタマーゼ(MBL)
  • AZTはMBLによって加水分解されないが,CAZは加水分解される.しかし,MBL産生菌は通常ESBLまたはセリン型カルバペネマーゼを産生し,AZTはこれらにより不活性化される.Avibactamはセリン型βラクタマーゼ(すなわち,ESBL,AmpC,セリン型カルバペネマーゼ)を阻害するので,この併用処方が非活性化されることなく活性を保つ(Antimicrob Agents Chemother 61: e02243, 2017).
  • MBL産生株を含むカルバペネマーゼ産生株に対して活性がある.18歳以上の複雑性腹腔内感染症患者で治療選択肢が限られているか,代替選択肢がない場合でのMNZとの併用をFDAは承認している.複雑性腹腔内感染,院内肺炎/人工呼吸器関連肺炎,腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症,好気性グラム陰性菌によるその他の感染症の患者で治療選択肢が限られている場合についてはEUでも承認されている(Lancet Infect Dis 25: 218, 2025Drugs 86: 79, 2026参照)
  • FDAは以下の適応を承認した:腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症,院内細菌性肺炎,人工呼吸器関連細菌性肺炎
ESBL産生株に対して
  • 感受性があればフルオロキノロン系またはアミノグリコシド系が有効な場合もあるが,ESBL産生菌はフルオロキノロン系およびアミノグリコシド系にも同時に耐性のことが多い.
  • Klebsiella pneumoniaeカルバペネマーゼ(KPC)に対して
  • MEPMとポリミキシン類(PL-Bまたはコリスチン)の併用は,ランダム化比較試験で有効性が示されなかったため推奨されない(Lancet Infect Dis 18: 391, 2018
  • 登録患者のほとんど,すなわち77%はA. baumanniiによる感染であった.
  • この試験は他のカルバペネマーゼ産生菌(たとえば,腸内細菌科およびP. aeruginosa)に対する効果を評価するだけの検出力はなかった.
  • 現在進行中の比較臨床試験の結果が明らかになるまでは,ポリミキシンとカルバペネム系薬の併用は避けたほうがよい.
  • カルバペネム耐性腸内細菌目細菌に対する有効性を比較した観察研究では,CAZ/Avibactamはコリスチンより優れていた(Clin Infect Dis 66: 163, 2018).
  • レトロスペクティブ研究ではKPC産生K.pneumoniaeによる尿路感染,下気道感染,腹腔内感染に有効性を示した(Clin Infect Dis 73: 1664, 2021
  • 強毒性で,粘液状(過粘稠性)の株の分離が増加しつつある.他の点では健康な宿主に対し,感染や,多くの場合転移(たとえば,肝膿瘍)を引き起こすことがある.Clin Infect Dis 58: 225, 2014参照.
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2026/03/10