日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

急性単純性尿路感染症-成人,女性  (2020/11/4 更新)
成人女性の膀胱炎,尿道炎


臨床状況

  • 下部尿路感染症の所見・症状のない成人女性での急性単純性尿路感染症(膀胱炎,尿道炎).
  • 最近の尿路感染症がある場合や耐性菌の検出率が高い地域では尿培養を考慮する.
  • 性感染症のリスクが高く,尿道炎の症状がある場合は,Chlamydiaの治療を検討する.

病原体

第一選択

  • ST 2錠1日2回・3日(地域でのST耐性率が<20%の場合)

第二選択

  • FOM 3g経口1回(2011年IDSAガイドラインの第一推奨だが,ランダム化比較試験ではNitrofurantoinよりも有効性は低かった:JAMA 319: 1781, 2018
    【注】FOM経口は米国ではFosfomycin tromethamineであり,日本のホスホマイシンカルシウムとは異なる.
  • CPFX 250mg1日2回,またはCPFX徐放剤†500mg24時間ごと・3日
  • LVFX 250mg24時間ごと・3日
  • CEX 500mg1日4回・5~7日
  • CFDN 300mg1日2回・3~7日

(†:日本にない剤形)

抗微生物薬適正使用

  • ほとんどの患者では無症候性細菌尿(ASB)を治療する必要はない.ASBでは無症候でも膿尿や尿中に白血球がみられることが多いが,治療は必要ない.ASBのスクリーニングと治療は,妊婦および侵襲的泌尿器科処置を受けている患者でのみ推奨される.
  • 重要なことは,推奨された処方で適正な期間患者を治療することである.2011年のIDSAガイドラインで明記されたにもかかわらず,医療者は不適切な処方で長期間患者を治療し続けている(Open Forum Infect Dis 2015 Oct 26
  • STおよびフルオロキノロン系両方に対するE.coliの耐性が増加している.多剤耐性(MDR)尿路感染細菌の治療に関する総説:Clin Infect Dis 63: 960, 2016
  • 基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌はしばしばFOM,Ertapenemに感受性あり.
  • ESBL産生E. coliおよびKlebsiella属は多剤耐性のため,治療は難しい.
  • 3日治療で治癒しない場合は,培養を行い,さらに2週間治療.

コメント

  • 妊婦
  • 7日の治療が推奨される.
  • 核黄疸の可能性が増すため,出産予定日近く(分娩予定日2週前)にはサルファ剤(ST)は中止するか使用しないこと.
  • 新生児に溶血性貧血を起こす危険性があるため,妊娠最終期あるいは分娩中にNitrofurantoinは使用しないこと.
  • 全妊娠期間を通じてフルオロキノロン系薬は避けること.
  • Phenazopyridine(Pyridium)200mg経口1日3回・2日を上記処方に加えると,症状が軽減される.
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2020/10/29