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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
急性単純性尿路感染症-成人,女性
(
2024/11/19 更新
)
成人女性の膀胱炎,尿道炎
臨床状況
下部尿路感染症の所見・症状のない成人女性での急性単純性尿路感染症(膀胱炎,尿道炎).
最近の尿路感染症がある場合や耐性菌の検出率が高い地域では尿培養を考慮する.
性感染症のリスクが高く,尿道炎の症状がある場合は,
Chlamydia
の治療を検討する.
病原体
E. coli
(75%~95%)
Klebsiella 属
S. saprophyticus
中間尿培養では,
Enterococcus 属
/
Streptococcus agalactiae
(B群
Streptococcus
)は偽陽性であることが多い:
N Engl J Med 369: 1883, 2013
;
N Engl J Med 369: 1959, 2013
.
第一選択
ST
2錠1日2回・3日(地域での
ST
耐性率が<20%の場合)
Nitrofurantoin
100mg経口1日2回・5日
第二選択
FOM
3g経口1回 【注】
FOM
経口は米国ではFosfomycin tromethamineであり,日本のホスホマイシンカルシウムとは異なる.
2011年IDSAガイドラインの第一推奨だが,ランダム化比較試験ではNitrofurantoinよりも有効性は低かった:
JAMA 319: 1781, 2018
CPFX
250mg1日2回,または
CPFX
徐放剤†500mg24時間ごと・3日
LVFX
250mg24時間ごと・3日
AMPC/CVA
875/125mg1日2回・5~7日
CEX
500mg1日4回・5~7日
CFDN
300mg1日2回・3~7日
Pivmecillinam
400mg1日2回・3~7日
(†:日本にない剤形)
抗微生物薬適正使用
ほとんどの患者では
無症候性細菌尿
(ASB)を治療する必要はない.ASBでは無症候でも膿尿や尿中に白血球がみられることが多いが,治療は必要ない.ASBのスクリーニングと治療は,妊婦および侵襲的泌尿器科処置を受けている患者でのみ推奨される.
重要なことは,推奨された処方で適正な期間患者を治療することである.2011年のIDSAガイドラインで明記されたにもかかわらず,医療者は不適切な処方で長期間患者を治療し続けている(
Open Forum Infect Dis 2015 Oct 26
)
STおよびフルオロキノロン系両方に対する
E.coli
の耐性が増加している.多剤耐性(MDR)尿路感染細菌の治療に関する総説:
Clin Infect Dis 63: 960, 2016
.
基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌はしばしばFOM,Ertapenemに感受性あり.
ESBL産生
E. coli
および
Klebsiella
属は多剤耐性のため,治療は難しい.
3日治療で治癒しない場合は,培養を行い,さらに2週間治療.
耐性機序および治療選択に関するさらなる議論は,
Escherichia coli
および
グラム陰性桿菌,薬剤耐性-概説
を参照.
コメント
妊婦(ACOGガイドライン:
Obstet Gynecol 142: 235, 2023
)
5~7日の治療が推奨される.
NitrofurantoinおよびSTは,妊娠第2期,第3期でも使用可能であり,第1期および分娩中では他の選択肢を考慮すべきだが,他の選択肢がない場合には考慮してもよい.
全妊娠期間を通じてフルオロキノロン系薬は避けること.
Phenazopyridine(Pyridium)200mg経口1日3回・2日を上記処方に加えると,症状が軽減される.
急性,単純性の膀胱炎および腎盂腎炎に関するIDSAのガイドライン:
Clin Infect Dis 52: e103, 2011
.
総説:
N Engl J Med 366: 1028, 2012
;
Clin Infect Dis 57: 719, 2013
.
単純性膀胱炎に対し,CPDX-PRはCPFXに劣る(
JAMA 307: 583, 2012
).
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2024/11/18