• PivmecillinamはMecillinamのピバル酸エステルプロドラッグである．
  
• 2024年4月24日FDAは感受性のあるE. coli，P. mirabilis，S. saprophyticusによる合併症のない尿路感染への適応を承認した，
  
• S. saprophyticusのMICはやや高いが，治癒率73～93％と報告されているのは，おそらく尿中濃度が高いためだろう．
  
• ESBL産生腸内細菌目細菌には感受性があるが，P. aeruginosa，E. faecalis，S. aureusは耐性
  
• ピバル酸エステルはバイオアベイラビリティを向上させる．吸収後，Pivmecillinamは血中，消化管その他の場所での非特異的エステラーゼに加水分解されて，Mecillinamとピバル酸となる．ピバル酸はpivaloyl-CoAによってpivaloylcarnitineに変換され尿中に排泄される，したがって，長期の使用はカルニチン欠乏症，脂肪酸酸化障害を引き起こすことがある．
  
• ほとんどのβラクタム系薬と異なり，Mecillinamは主として細菌細胞壁のPBP-2を標的とする．
  
• 耐性率が低く，副作用による障害が少ないことが利点であるが，単純性尿路感染症に対する効果は他薬よりも劣る．
  
• 腎盂腎炎には無効（腎組織中の濃度が不十分）．
  
• 米国での製剤：Pivmecillinam 185mgはPivmecillinam hydrochloride 200mgと等価
  

• 合併症のない膀胱炎
  

• 米国での用量：185mg経口8時間ごと・3～7日（Pivmecillinamとして）
  
• 米国外では推奨用量はさまざまである．たとえば，カナダでは400mg経口8時間ごと・3～7日(Pivmecillinam hydrochlorideとして）
  

• 体重およびクレアチニンクリアランス（CrCl）推定値の計算法
  
• CrCl（mL/分），CAPD: 持続的携行型腹膜透析， CRRT: 持続的腎代替療法，SLED: 長時間低効率血液透析
  

• 軽症肝障害（Child-Pugh分類A）：用量調整不要
  
• 中等症肝障害（Child-Pugh分類B）：用量調整不要
  
• 重症肝障害（Child-Pugh分類C）：用量調整不要
  

副作用

• 胃腸（悪心，嘔吐，下痢，C. difficile腸炎）
  
• 発疹，じんま疹，アナフィラキシー，重症皮膚副作用
  
• 頭痛，めまい
  
• カルニチン欠乏症
  
• 急性ポルフィリン症
  
• 40年以上の臨床経験を収集したシステマティック・レビューは，Pivmecillinamの安全性・忍容性が良好であることを確立した：Clin Infect Dis 80: 280, 2025．
  

妊娠時のリスク

• FDAリスク区分（新）：ヒトまたは動物で毒性のエビデンスなし
  
• 授乳中の使用：乳汁中濃度は低く，副作用は予想されない．乳児では胃腸毒性をモニター
  

抗菌スペクトラム（全表）

1. 注記のない場合は成人用経口製剤
   
2. SD：単回投与後，SS：複数回投与後の定常状態
   
3. V/F：（Vd）÷（経口生物学的利用能），Vss：定常状態におけるVd，Vss/F：（定常状態におけるVd）÷（経口生物学的利用能）
   
4. CrCl＞80 mL/分と想定
   
5. （胆汁中の最高濃度）÷（血清中の最高濃度）×100
   
6. 炎症時における脳脊髄液濃度
   
7. 薬剤投与量と微生物の感受性に基づく判定．脳脊髄液濃度は理想ではMICの10倍以上必要
   
8. AUC：血漿中濃度-時間曲線下面積 area under the drug concentration-time curve．
   0～inf＝AUC0-inf，0～x時間＝AUC0-x
   

血清中薬物濃度への影響とは，当該抗微生物薬により影響を受ける併用薬の血清中濃度のことをいう．↑：上昇，↓：低下

• 有用な文献：J Infect Public Health 12: 843, 2019；Int J Clin Prac 73: 1, 2019