日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

敗血症-敗血症性ショック,成人  (2026/01/20 更新)
敗血症,成人の敗血症性ショック


臨床状況/診断

臨床状況
  • 成人患者における細菌感染による敗血症および敗血症性ショックの初期管理と抗菌薬療法:コメントおよびN Engl J Med 391: 2133, 2024参照.
  • 敗血症は,逸脱した宿主反応による,生命を脅かす臓器機能不全を伴う感染症と定義される.
  • 敗血症性ショックは,通常低血圧を伴い組織への酸素供給が不十分となる,生命を脅かす循環不全状態を伴う敗血症と定義される.
  • 敗血症性ショックの現在のSepsis-3基準は,十分な補液にもかかわらず平均血圧≧65mmHg以上および血清乳酸値>2.0mmol/Lを維持するために昇圧薬治療が必要となる持続性低血圧である:JAMA 315: 801, 2016
  • 抗菌薬治療は以下に応じて異なってくる:
  • 臨床状況(たとえば,入院または市中)
  • 疑われる感染源(たとえば,肺炎,尿路,皮膚および軟部組織,腹腔内,中枢神経,感染源不明)
  • 患者の側の要因(たとえば,好中球減少症,免疫抑制療法または他の免疫不全条件,海外渡航,職業的またはその他の理由による曝露歴,多剤耐性微生物のリスク因子の存在)
  • 直近の抗菌薬治療歴
  • 地域での多剤耐性グラム陰性桿菌(MDR GNB)の検出率
  • 病態生理学の議論についてはコメント参照
診断
  • 敗血症/敗血症性ショック症候群の診断は臨床的に行われる.すなわち発熱,頻脈,呼吸数の増加,意識障害,低血圧,低酸素血症,炎症マーカー,末梢好中球数の上昇または低下,血清クレアチニン値上昇,血清乳酸値上昇,凝固障害,血清ビリルビン値の上昇など,一連の臨床所見と検査所見に基づいて行われる(Crit Care Med 49: e1063, 2021).
  • 鑑別診断では,敗血症および敗血症性ショックに類似する可能性のある非感染性疾患を考慮する必要がある.これには,熱傷,重症膵炎,外傷,肺塞栓症,自己免疫性炎症や二次性血球貪食性リンパ組織球症(HLH)などの過剰炎症性疾患が含まれる.

病原体

  • グラム陰性細菌:
  • 混合感染,他の好気性および/または嫌気性グラム陰性細菌
  • まれに,Mycobacterium,真菌,ウイルス,寄生虫など他の微生物

治療

初期治療
  • 血液培養を行う(もし可能であり適応があるならば,他の培養も行う)
  • 抗菌薬投与(ショックが認められれば理想的には1時間以内)
  • 治療開始時の血清乳酸値を測定
  • 低血圧または乳酸値が4mmol/Lを超える場合は,蘇生後3時間以内に晶質液30mL/kg(生理食塩水よりもバランス型が望ましい)を投与.
  • 輸液蘇生を行っても低血圧が持続する場合は,平均血圧>65mmHgを維持するために昇圧薬(ノルエピネフリンを第一選択薬とし,その後バソプレシン)を投与.
  • 感染源管理:適切な培養検査,微生物学検査,画像検査により感染部位および感染源を特定.感染源のドレナージまたは除去が必要となることがある.
初期経験的治療
  • より一般的に遭遇する感染部位に対する抗菌薬治療
  • 感染源不明の場合
  • 補助的コルチコステロイド
  • 2024年救急医学会ガイドライン(Crit Care Med 52: e219, 2024)は,補液に反応せず昇圧薬の持続的支持が必要な敗血症性ショック患者に対し,ヒドロコルチゾン200mg/日静注(持続点滴または6時間ごとの分割投与)±フルドロコルチゾン50μg/日経腸投与(7日間またはICU退院まで)を推奨している(条件付き推奨、エビデンスの質は低い)
血糖をコントロールするためのインスリン:目標140~180mg/dL

第二選択または標的治療

  • 感染源が不明の場合の感染源標的経験的治療の第二選択:
  • DAP 8~12mg/kg静注24時間ごと+[CFPM 2g静注8時間ごと・3時間以上かけて注入,またはPIPC/TAZ 4.5g静注(4時間以上かけて)8時間ごと
  • VCMまたはDAPをLZD 600mg静注12時間ごとに替えてもよい
  • 特定の病原体が確定された,または疑われる場合の病原体を標的とした経験的治療
病原体
処方
コメント
MRSA
VCM 25mg/kg初回,その後15~20mg/kg8~12時間ごと静注(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLを目標とする)
  
ESBL産生GNB
Ertapenem 1g24時間ごと静注,またはMEPM 2g8時間ごと(髄膜炎ならば4時間以上かけて)静注,またはIPM/CS 500mg静注6時間ごと
多剤,βラクタム耐性グラム陰性菌に対する選択肢は,グラム陰性桿菌,βラクタム薬耐性-概説参照
P. aeruginosa
CAZ 2g8時間ごと静注,またはMEPM 2g8時間ごと静注,またはPIPC/TAZ 4.5g静注(4時間以上かけて注入)8時間ごと,またはCTLZ/TAZ 1.5g静注(3時間以上かけれ注入)8時間ごと
Ertapenemは,P. aeruginosaをカバーしないので,用いない
複数菌の好気性/嫌気性菌の混合感染
CTRX 2g静注24時間ごと+MNZ 500mg静注8時間ごと),またはErtapenem 1g24時間ごと静注,またはMEPM 2g8時間ごと静注
  
リケッチア感染症
DOXY 100mg静注†/経口12時間ごと
  

†:日本にない剤形


抗微生物薬適正使用

  • 抗菌薬処方を変更し,可能であれば培養検査および感受性試験の結果に基づいてde-escalate(段階的に減量)する.
  • 抗菌薬治療の継続の必要性は毎日再評価する必要がある.感染症が除外された場合,または非感染性病因(または抗菌薬治療に反応しない感染症)が同定された場合,あるいは強く疑われた場合は抗菌薬治療を中止する(Crit Care Med 49: e1063, 2021

コメント

  • 病態生理学
  • 敗血症は,細菌,ウイルス,寄生虫,真菌といった病原体による感染に対する,主として宿主の免疫応答の無調節性を反映する不均質な臨床症候群である.
  • サイトカイン活性化は内皮細胞を損傷し,血液分布異常性ショック,血管内液の間質への漏出,血小板・フィブリン血栓の形成を伴う凝固障害を引き起こす
  • この血管損傷は組織や臓器への酸素供給不足につながり,一酸化窒素の放出を促す.一酸化窒素は毛細血管前括約筋を拡張し,末梢血管抵抗を低下させ低血圧を引き起こす.
  • SIRS(全身性炎症反応症候群)は,感染症の特定には役立つかもしれないが,敗血症の定義には含まれず,重症敗血症とは別個のものとはみなされない(JAMA 315: 801, 2016N Engl J Med 391: 2133, 2024).
  • SIRSおよびqSOFA(quick Sequential Organ Failure Assessment)は十分な感度と特異度がなく,敗血症に対する単独のスクリーニングツールとしても用いるべきではない(Crit Care Med 49: e1063, 2021
  • 文献:
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2026/01/19