日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Staphylococcus aureus, MRSA  (2023/06/13 更新)


臨床状況

  • Nafcillinおよび他の半合成抗Staphylococcusペニシリンに耐性のS. aureusを臨床的に分離.
  • 個別の推奨は以下を参照:
  • 用語
  • MRSA:Methicillin耐性S. aureus:Ceftaroineを除く市販のβラクタム薬すべてに耐性.
  • VISA:VCM中等度耐性S. aureus(MIC 4~8μg/mL).
  • VRSA:VCM耐性S. aureus(MIC>8μg/mL).

分類

  • Methicillin耐性(MRSA)
  • 集塊をなすグラム陽性球菌

第一選択

Methicillin耐性 (VCM MIC<4μg/mL).
  • VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μgを目標とする)
  • LZD 600mg経口または静注12時間ごと,肺炎または急性細菌性皮膚および軟部組織感染症に対して(コメント参照)
  • DAP 4~6mg/kg静注1日1回(菌血症には高用量8~12mg/kg 24時間ごとを考慮,コメント参照)
  • DAPは原発性MRSA肺炎の治療に使用しないこと(ただし,敗血症性肺塞栓を伴う三尖弁心内膜炎には有効)
Methicillin耐性かつVISA(MIC 4~8μg/mL)またはVRSA(MIC>8μg/mL)
  • 治療法は明確ではないが,
  • DAP(感受性を確かめること.サルベージ治療として,またはMRSAでの治療失敗例に使用する場合には菌血症参照)
  • Telavancin:VISAに対しin vitroおよびin vivoで活性だが,VRSAには活性なし.
  • Ceftaroline 600mg静注8~12時間ごと(菌血症の治療には8時間ごと)

(▼:FDA未承認)

第二選択

MRSAおよびVCM MIC<4μg/mL:
  • 誘導型MLSB耐性(マクロライド耐性)のStaphylococcus属はin vitroではCLDMに感受性があるようにみえるが,治療失敗に結びつく.CLDMで治療する前に誘導耐性の検査(Double-disc[D test])を行うこと.
  • STについては,最近のランダム化比較試験でVCMに対する非劣性が示されなかったことから,第一選択肢ではない(BMJ 350: h2219, 2015).
  • FAFOMRFPは活性の可能性がある:in vivoでの耐性発現を予防するため,併用でのみ使用すること.
VISA/VRSA(MIC≧4μg/mL):
  • 治療中の耐性発現を予防するため,RFPはつねに別の治療薬と併用して用いること.
急性細菌性皮膚および軟部組織感染症のみに対する現在の推奨:
  • VCM MIC<4μg/mLのMRSA:
  • VISA / VRSA(MIC≧4μg/mL):
  • 明らかではないがTZDは活性

コメント

  • Methicillin耐性は2つの遺伝子,mecAおよびmecCによりコードされており,それぞれ低親和性のペニシリン結合タンパク質,PBP2a,PBP2cをコードする.PBP2aを検出するための検査(たとえばMRSAラテックス凝集検査)では確実にPBP2cを検出することはできず,mecAを検出するための検査(BD MAX MRSAやCepheid Xpert MRSAなどの核酸増幅検査)では,mecCを検出することはできない.Cepheid Xpert MRSA NxGおよびBD MAX MRSA XT(MRSA定着のある患者の鼻腔スワブからMRSA DNAをin vitroで検出)ではmecAとmecCの両方が検出できる.
  • MRSA菌血症,特にサルベージ治療や治療失敗の場合に,DAPについてFDA承認の6mg/kgよりも高用量(8~12mg/kg/日)を推奨する専門家もいる:効果が増強され毒性の発生率も許容できるためであろう(Pharmacotherapy 31: 527, 2011
  • 初回処方に反応しない,あるいはVCM中等度耐性株または耐性株によるMRSA感染の治療では,感染症専門医にコンサルテーションを求める.
  • VCM MIC=2μg/mLのMRSA株に対する最良の治療法は明確ではない.
  • VCM治療に対し臨床反応あるいは微生物学的反応が十分でない場合は,MICにかかわらず代替治療を考慮する.
  • VCM MIC>2μg/mLのMRSA株に対しては,VCMの代替薬をつねに用いる.
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2023/06/12