false
日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
Staphylococcus aureus,
MRSA
(
2023/06/13 更新
)
臨床状況
Nafcillinおよび他の半合成抗
Staphylococcus
ペニシリンに耐性の
S. aureus
を臨床的に分離.
成人および小児におけるMRSA治療のためのIDSAガイドライン:
Clin Infect Dis 52: e18, 2011
.
個別の推奨は以下を参照:
菌血症
感染性心内膜炎
皮膚膿瘍,せつ腫症,せつ
骨髄炎
肺炎
人工関節感染
化膿性関節炎
用語
MRSA
:Methicillin耐性
S. aureus
:Ceftaroineを除く市販のβラクタム薬すべてに耐性.
VISA
:VCM中等度耐性
S. aureus
(MIC 4~8μg/mL).
VRSA
:VCM耐性
S. aureus
(MIC>8μg/mL).
分類
Methicillin耐性(MRSA)
集塊をなすグラム陽性球菌
第一選択
Methicillin耐性 (VCM MIC<4μg/mL).
VCM
15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC
24
400~600μg・h/mL達成が望ましいが[
AUC-用量設定の原理と計算
を参照],そうでなければトラフ値15~20μgを目標とする)
LZD
600mg経口または静注12時間ごと,肺炎または急性細菌性皮膚および軟部組織感染症に対して(コメント参照)
DAP
4~6mg/kg静注1日1回(菌血症には高用量8~12mg/kg 24時間ごとを考慮,コメント参照)
DAPは原発性MRSA肺炎の治療に使用しないこと(ただし,敗血症性肺塞栓を伴う三尖弁心内膜炎には有効)
Methicillin耐性かつVISA(MIC 4~8μg/mL)またはVRSA(MIC>8μg/mL)
治療法は明確ではないが,
LZD
DAP
(感受性を確かめること.サルベージ治療として,またはMRSAでの治療失敗例に使用する場合には
菌血症
参照)
Telavancin
▼
:VISAに対しin vitroおよびin vivoで活性だが,VRSAには活性なし.
Ceftaroline
▼
600mg静注8~12時間ごと(菌血症の治療には8時間ごと)
(▼:FDA未承認)
第二選択
MRSAおよびVCM MIC<4μg/mL:
誘導型MLS
B
耐性(マクロライド耐性)の
Staphylococcus
属はin vitroではCLDMに感受性があるようにみえるが,治療失敗に結びつく.CLDMで治療する前に誘導耐性の検査(Double-disc[D test])を行うこと.
STについては,最近のランダム化比較試験でVCMに対する非劣性が示されなかったことから,第一選択肢ではない(
BMJ 350: h2219, 2015
).
可能な代替薬,in vitroの感受性および感染の重症度に基づく:
TEIC
,
Telavancin
,
ST
,
MINO
,
DOXY
,
Ceftaroline
または
CLDM
FA
,
FOM
,
RFP
は活性の可能性がある:in vivoでの耐性発現を予防するため,併用でのみ使用すること.
Ceftaroline
600mg静注8時間ごとは菌血症に対し,単剤で(
Am J Health Syst Pharm 74: 201, 2017
;
Antimicro Agents Chemother 61: e02015, 2017
)あるいは,VCMまたはDAPとの併用で(
Pharmacotherapy 43: 15, 2023
;
Int J Antimicrob Agents 57: 106310, 2021
)サルベージ治療として有効である可能性がある.
菌血症-
S. aureus
による
を参照.
VISA/VRSA(MIC≧4μg/mL):
VISA:最も感受性が高いのは
DAP
(一部の株は交差耐性があるため感受性を確認すること),LZD,
ST
,
MINO
,
DOXY
,
RFP
,
Ceftaroline
,
Telavancin
.
治療中の耐性発現を予防するため,RFPはつねに別の治療薬と併用して用いること.
VRSA:世界で報告されている真のVCM耐性臨床分離株は20未満である(MIC≧16μg/mL).
ST
,
LZD
,
MINO
,
Quinupristin/Dalfopristin
,
DAP
,
Ceftaroline
に感受性あり.
急性細菌性皮膚および軟部組織感染症のみに対する現在の推奨:
VCM MIC<4μg/mLのMRSA:
Dalbavancin
,
Oritavancin
,
TZD
VISA / VRSA(MIC≧4μg/mL):
明らかではないが
TZD
は活性
コメント
LZDは,静脈カテーテル関連感染による単純性菌血症患者,急性細菌性皮膚/軟部組織感染症または肺炎を合併する菌血症患者で,経口ステップダウン治療の選択肢となることがある.心内膜炎や他の血管内感染症に対する第一・第二選択薬としては推奨されない(
Int J Antimicrob Agents 57: 106329, 2021
,
Clin Infect Dis 69: 381, 2019
;
J Antimicrob Chemother 56: 923, 2005
).
Methicillin耐性は2つの遺伝子,mecAおよびmecCによりコードされており,それぞれ低親和性のペニシリン結合タンパク質,PBP2a,PBP2cをコードする.PBP2aを検出するための検査(たとえばMRSAラテックス凝集検査)では確実にPBP2cを検出することはできず,mecAを検出するための検査(BD MAX MRSAやCepheid Xpert MRSAなどの核酸増幅検査)では,mecCを検出することはできない.Cepheid Xpert MRSA NxGおよびBD MAX MRSA XT(MRSA定着のある患者の鼻腔スワブからMRSA DNAをin vitroで検出)ではmecAとmecCの両方が検出できる.
MRSA菌血症,特にサルベージ治療や治療失敗の場合に,DAPについてFDA承認の6mg/kgよりも高用量(8~12mg/kg/日)を推奨する専門家もいる:効果が増強され毒性の発生率も許容できるためであろう(
Pharmacotherapy 31: 527, 2011
)
初回処方に反応しない,あるいはVCM中等度耐性株または耐性株によるMRSA感染の治療では,感染症専門医にコンサルテーションを求める.
VCM MIC=2μg/mLのMRSA株に対する最良の治療法は明確ではない.
分離菌のVCM MIC=2μg/mLと治療失敗とのあいだに関連がみられたが(
Clin Infect Dis 52: 975, 2011
),38試験のメタアナリシスではこうした関連は認められなかった(
JAMA 312: 1552, 2014
).
VCM治療に対し臨床反応あるいは微生物学的反応が十分でない場合は,MICにかかわらず代替治療を考慮する.
VCM MIC>2μg/mLのMRSA株に対しては,VCMの代替薬をつねに用いる.
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2023/06/12