日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

肺炎-S. aureus  (2024/09/10 更新)
S. aureus (MSSA,MRSA)肺炎の特異的治療


臨床状況

  • Staphylococcus属による肺炎:医療関連肺炎(HCAP),院内肺炎,人工呼吸器関連肺炎(VAP),市中肺炎.
  • インフルエンザ関連肺炎.
  • 静注薬物使用者(三尖弁心内膜炎も疑われる).
  • 血液または喀痰培養,グラム染色でS. aureus陽性.

病原体

  • MSSA
  • MRSA

第一選択

  • MRSA:VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値10~15μg/mLを目指す),またはLZD 600mg経口または静注12時間ごと

第二選択

  • MSSA
  • CEZ 2g静注8時間ごと
  • VCM 15~20mg/kg静注8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値10~15μg/mLを目指す),またはLZD 600mg経口または静注12時間ごと(患者がβラクタム薬に不耐または重大なアレルギーがある場合のみ考慮)
  • MRSA
  • Telavancin 10mg/kg静注24時間ごと(コメント参照)

(▼:FDA未承認)

抗微生物薬適正使用

  • 治療期間は,菌血症を伴う場合は7~14日.菌血症を伴う場合は4週間の治療が推奨される

コメント

  • 静注薬物を使用しているS. aureus肺炎患者で血液培養陽性ならば,三尖弁の心内膜炎を疑う.
  • DAPは一次性肺炎に対する選択肢ではない(Clin Infect Dis 49: 1286, 2009).FDAは,敗血症性塞栓症に由来する血行性肺炎を伴う右心系心内膜炎に対し承認している.
  • Ceftobiprole 500mg(活性薬剤として)2時間以上かけて静注6時間ごと1~8日目,それ以降8時間ごとをFDAは,敗血症性肺塞栓症を含む右心系感染性心内膜炎による菌血症治療として承認.原発性肺炎治療での役割は確立されていない.
  • 人工呼吸器関連肺炎を含むMRSA肺炎を対象にLZDとVCMを比較したプロスペクティブ試験では,治癒率はLZD(95/165,57.6%)のほうがVCM(81/174 ,46.6%)より高かった(p=0.042)が,60日全原因死亡率には差がなかった(LZD 15.7%,VCM 17%)(Clin Infect Dis 54: 621, 2012).
  • Telavancinは,他の治療選択薬が適切でない症例のために温存しておくこと.
  • 院内肺炎/人工呼吸器関連肺炎の患者で,中等症~重症腎疾患(CrCl≦50mL/分)がある場合は死亡率が高くなる:予測される利益がリスクを上回る場合のみTelavancinの使用を考慮する.
  • TZDは,薬物相互作用によりLZDが使用できない場合の選択肢になりうる.グラム陽性菌による人工呼吸器院内細菌性肺炎/人工呼吸器関連肺炎に関する第III相ランダム化二重盲検試験において,試験者が評価した臨床的治癒についてはLZDに対し非劣性ではなかったが,28日全原因死亡率については非劣性であった(Clin Infect Dis 73: e710, 2021).
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2024/09/09