日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

せつ,毛包炎,皮膚膿瘍  (2023/12/19 更新)


臨床状況/診断

臨床状況
  • せつ,せつ腫症,よう,膿瘍を含む化膿性皮膚病変.急性の細菌性皮膚/皮膚組織感染(ABSSSI).
  • 切開とドレナージが治療の中心.注意:針吸引では不十分.
診断
  • 診断が不確実および/またはドレナージが十分であるかを評価する場合,超音波検査が有用なこともある.

病原体

  • S. aureus(MSSA,MRSA)

第一選択

経口,外来患者,経験的治療(コメント参照):
  • MRSAの疑いおよび検出率が低い場合
  • 切開とドレナージに加えて
  • MRSAの疑いおよび検出率が中程度~高度の場合
  • 切開とドレナージに加えて
  • ST 800/160(2錠,BMI>40の肥満患者では4錠)経口1日2回
  • CLDM 300~450mg(BMI>40の肥満患者ではより高用量)経口1日3回
  • 2~3日治療して反応が得られなければ,ドレナージされていない膿瘍を検索する.
入院患者:
  • 切開とドレナージ,膿瘍培養および血液の培養.
  • 経験的抗菌薬治療(特異的な培養および感受性のデータがない場合には,MRSAに活性のある薬剤を選択する):
  • VCM 15~20mg/kg8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLを目指す)
  • 培養結果が明らかになった場合の特異的治療
  • MSSA
  • CEZ 1g静注8時間ごと
  • MRSA
  • VCM 15~20mg/kg8~12時間ごと(目標AUC24 400~600μg・h/mL達成が望ましいが[AUC-用量設定の原理と計算を参照],そうでなければトラフ値15~20μg/mLを目指す)

第二選択

  • 中等症~重症感染で注射薬が望ましく,外来での管理が可能な患者に対する処方:Dalbavancin 1.5g静注1回(30分以上かけて静注)
  • 経口薬
  • MSSA
  • ST 2~4錠1日2回
  • CLDM 300~350mg1日2回
  • MRSA
  • LZD 600mg経口12時間ごと
  • DOXY 100mg経口12時間ごと,またはMINO 100mg経口12時間ごと
  • 注射薬
  • MSSA
  • MRSA
  • DAP 4mg/kg静注24時間ごと
  • LZD 600mg静注12時間ごと

抗微生物薬適正使用

  • 最近の研究では,5~7日の短期治療の有効性は10~14日の長期治療と同等であることが示された.
  • MRSAに活性のある薬剤はMSSAにも活性があるが,βラクタム薬使用ができないような重度のアレルギーや毒性がないかぎり,MSSA特異的なβラクタム系薬の方が望ましい.

コメント

  • 小さな膿瘍でも活性のある薬剤(STまたはCLDM)で治療することにより,治癒率が向上,再発は低下し,忍容性が高いという結果が,2つの質の高いランダム化二重盲検プラセボ対照試験で示された(N Engl J Med 374: 823, 2016N Engl J Med 376: 2545, 2017).
  • STやCLDMの低用量(ST 4錠の代わりに2錠,CLDM 450mgの代わりに150~300mg)は肥満患者(BMI>40)では治療失敗につながることが報告されている(J Infect 65: 128, 2012).
  • 他の選択肢:フシジン酸 250~500mg経口†8~12時間ごと+RFP 300mg経口1日2回.フシジン酸はヨーロッパでは入手できるが,米国では入手不可.
  • 分離菌のin vitroでの感受性が明らかにならないかぎり,フルオロキノロンは使用しない.

(†:日本にない剤形)

ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing↑ page top
2023/12/18