日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

せつ,せつ腫症,再発  (2023/05/30 更新)
Staphylococcusによる再発性膿瘍,せつ腫症の除菌


臨床状況

  • 他の点では健康で,活動性皮膚病変のない患者での,Staphylococcus aureus感染による再発性せつ腫症(膿瘍,せつ)予防のための除菌(decolonization).
  • 複数の部位-たとえば,鼻腔,咽頭,鼡径部の皮膚の培養が必要である.外鼻孔のみではコロニー形成のある患者の48%が見逃されていた(Clin Infect Dis 54: 1523, 2012).

病原体

第一選択

  • MRSA定着の入院患者で,0.12%クロルヘキシジンによる口腔洗浄1日2回,クロルヘキシジン4%入浴またはシャワーを毎日,2%ムピロシン軟膏の鼻腔投与毎日の併用処方・5日を1ヵ月に1回・6ヵ月で,退院後のMRSA感染率が有意に低下した(N Engl J Med 380: 638, 2019

第二選択

  • 5日間の4%クロルヘキシジン体洗浄+2%ムピロシン鼻腔内投与1日2回について,定着S. aureusによる最初の皮膚軟部組織感染小児に対する除菌と,家庭内接触者全員に対する除菌が比較され,除菌率に有意差はみられなかった(Clin Infect Dis 54: 743, 2012).ただし,皮膚軟部組織感染の再発率は,最初の感染小児にくらべ家庭内接触者の除菌群のほうが低かった.
  • 5日間の漂白剤浴(タブに湯を入れ,1/4カップの6%次亜塩素酸ナトリウム[家庭用漂白剤]を溶かして15分つかる)+2%ムピロシン軟膏の鼻腔内投与1日2回と,5日間のムピロシン鼻腔投与1日1回+4%クロルヘキシジン体洗浄とを比較すると,1ヵ月後のS. aureus除菌率は,前者で63%,後者で55%であり,未治療の対照では38%だった.皮膚感染再発は漂白剤浴群で22%,クロルヘキシジン群で11%,未治療対照群で26%に起こった(Infect Control Hosp Epidemiol 32: 872, 2011).

コメント

  • 「ゴールドスタンダード」の処方はない:最適な処方と治療期間は不明.
  • 除菌後でも再定着率および感染再発率は高い.
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2023/05/29