日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

肺炎-市中感染,成人,外来患者  (2025/09/30 更新)


臨床状況

  • 入院していない市中肺炎(CAP)の成人患者.
  • CAPの管理と治療に関する米国胸部医学会(ATS)/米国感染症学会(IDSA)ガイドライン(Am J Respir Crit Care Med 200: e45, 2019)は,CAP患者の入院の必要性を決定する際に,臨床的判断に加えて臨床的予測尺度として肺炎重症度指数(PSI)を用いることを推奨している.PSIは計算がより複雑だが,死亡の予測については以前のCURB-65より優れている(Thorax 58: 377, 2003).
  • CURB-65の計算:CURBスコア=0,外来患者として管理;CURBスコア=1,年齢>65歳で併存疾患がなければ,外来患者としての管理を検討する;CURBスコア=2,入院での管理を行う.
  • 経験的処方は合併症の有無,年齢,直近の抗菌薬治療で異なる.

病原体

  • 合併症なし
  • ウイルス性
  • 合併症あり
  • 脳血管障害後の誤嚥性肺炎:口腔常在菌,S. pneumoniae
  • 気管支閉塞後:S. pneumoniae,嫌気性菌

第一選択

  • 併存疾患なし:65歳未満,その他の点では健康,最近の抗菌薬使用なし
  • AMPC 1g経口1日3回・5~7日,または
  • DOXY 100mg経口1日2回・5~7日
  • 併存疾患あり(たとえば,慢性の心臓,肺,肝臓,腎臓の疾患;糖尿病;アルコール依存症;悪性新生物;喫煙),直近3ヵ月以内の抗菌薬治療
  • [(AMPC/CVA 875mg/125mg経口1日2回,またはCPDX-PR 200mg経口1日2回,またはCXM-AX 500mg経口1日2回)・5~7日+(AZM 500mg経口1回,その後250mg1日1回・4日,またはCAM 500mg経口1日2回・5~7日)]または
  • LVFX 750mg経口24時間ごと・5日

第二選択

  • 併存疾患なし
  • 地域のS. pneumoniaeマクロライド耐性率<25%なら,AZM 500mg経口1回,その後250mg経口24時間ごと・4日,CAM 500mg経口1日2回またはCAM徐放錠†1g経口24時間ごと・7日
  • 併存疾患あり
  • MFLX 400mg経口24時間,またはGemifloxacin 320mg24時間ごと・5~7日
  • [(AMPC/CVA 875mg/125mg経口1日2回,またはCPDX-PR 200mg経口1日2回,またはCXM-AX 500mg経口1日2回)+DOXY 100mg経口1日2回]・5~7日

(†:日本にない剤形)

治療期間

  • 治療期間は臨床的安定性(たとえば,バイタルサインの正常化)に基づいて決まる:5日治療して臨床的安定が得られない場合は,予後が悪くなる可能性が高く,治療の見直しが必要となることがある.
  • 5~7日の抗菌薬治療の効果は,より長期間の治療と同等.
  • 通常最低5日間の治療が必要だが,新たなデータによると,3日目までに臨床的に完全に安定(体温≤37.8℃,心拍数<100bpm,呼吸数<24/分、室内気での動脈血酸素飽和度>90%,収縮期血圧>90 mmHg,精神状態正常と定義)している患者の場合は,3日間の治療で十分である可能性が示唆されている(N Engl J Med 389: 632, 2023およびIDSA CAPクリニカルパスを参照)

コメント

  • AZM/CAM:心臓不整脈薬のリスクがわずかに高いため,心血管疾患が背景にある患者では他の選択肢を考慮すること.
  • βラクタム薬は非定型病原体に対しては活性がない.
  • Mycoplasmaのマクロライド耐性が増加しているために,Mycoplasma感染に対してはDOXYが選択薬となる(J Infect 69: S42, 2014).
  • LVFXまたはMFLX
  • 非定型病原体およびPRSP(ペニシリン耐性S. pneumoniae)を含む定型細菌に対し,活性があり臨床的に有効.
  • 低/高血糖症,QTc延長,FQ使用に関連した大動脈瘤,解離または破裂,C. difficile腸炎の可能性あり
  • Lefamulin,Omadacycline,Delafloxacinは最近FDAによりCABPに対して承認されたが,これらの薬価の高い薬が他の薬剤以上の有用性があるかは不明.
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2025/09/29