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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
Mycoplasma pneumoniae
(
2023/03/07 更新
)
臨床状況
若年者または高齢者(60歳以上)で咳は喀痰をほとんど伴わず(非定型),肺浸潤を伴うことも伴わないこともある.
診断:臨床症状+喀痰または咽頭スワブによる
Mycoplasma
のPCR検査(現在のゴールドスタンダード):
Ped Infect Dis J 37: 1192, 2018
.
特異的抗体力価の4倍上昇はかつてのゴールドスタンダードであった
臨床症状
ほとんど喀痰を伴わない咳が2週間以上持続する.
激しい咳は失神,尿失禁,肋骨骨折まで引き起こすことがある.
発熱患者では胸部X線で浸潤を認めることが多い.肺炎は通常軽症で自然治癒するが,重症化して急性呼吸促迫症候群(ARDS)となることもある.
肺外病変:
皮膚症状が25%:じんま疹,結節性紅斑,多形性紅斑,Steven-Johnson症候群
重症中枢神経症状:髄膜脳炎,横断脊髄炎,Guillain-Barre症候群
その他:寒冷凝集素反応陽性溶血性貧血,関節炎,糸球体腎炎,脳炎(まれ)
非定型肺炎の鑑別診断:
人獣共通でない:レジオネラ症
,Chlamydophila pneumoniae
一部の人獣共通感染症:
Chlamydophila psittace
(オウム病),野兎病,
Coxiella burnetti
(Q熱)
重度の咳が14日以上持続する場合は,
Bordetella pertussis
(百日咳)を考慮すること.
気管支炎,幼児/小児(<5歳)
,
気管支炎-急性,年齢>5歳
を参照
Mycoplasma
は細胞壁をもたないため,グラム染色陰性であり,βラクタム薬は無効.
病原体
Mycoplasma
(
Mycoplasmoides
)
pneumoiae
第一選択
DOXY
100mg静注†または経口1日2回・7日
(†:日本にない剤形)
第二選択
AZM
初日500mg経口,その後250mg経口1日1回・4日(耐性に関するコメントを参照)
LVFX
750mg経口/静注・5日.16歳未満の小児では未承認
コメント
小児患者に対するテトラサイクリン系薬の使用について,8歳未満の小児では,薬剤とその着色分解物質がエナメル質に沈着することにより,歯の永久的な変色が起こることが報告されていたため,従来は制限されていた.
DOXYは短期間(≦21日)ならば,患者の年齢にかかわらず安全に投与できる(AAP Red Book 2018;
J Pediatr 166: 1246, 2015
).DOXYは,他のテトラサイクリン系薬にくらべカルシウムへの結合力が弱く,最近の比較データからは,8歳未満の小児で目に見える歯の変色やエナメル質形成不全を引き起こす可能性は低いことが示唆されている..
マクロライド耐性
Mycoplasma
の報告が増加しており,テトラサイクリン系薬のほうがアウトカムがよいため,AZM(または現在利用できる他のマクロライド)よりもDOXYが好ましい
マクロライド耐性:当初東南アジア諸国で把握されたが,現在では米国でも報告されている.ある程度の地域差はあるが,2018年の全米での耐性率は7.5%(地域差1.9~21.7%).
少なくとも中国では,耐性菌による臨床症状が本質的により重症になる.感染者がおもに小児であるため,テトラサイクリン系薬,フルオロキノロン系薬による治療は選択肢とならない.
市中肺炎での耐性:
Infect Dis Clin No Amer 33: 1087, 2019
.
注:βラクタム薬およびCLDMは無効.
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2023/03/09