日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Legionella   (2025/12/09 更新)


臨床状況/診断

臨床状況
  • Legionellaは淡水および土壌中にみられるグラム陰性桿菌である.
  • 市中肺炎または院内肺炎.肺外感染(たとえば心内膜炎)もあるがまれ.
  • 原虫や肺胞マクロファージ内で生存する.
  • 咳があっても,肺炎の患者は非膿性の粘液性痰を少量しか喀出しないことがある.
  • アエロゾル感染
  • リスク因子:慢性肺疾患,喫煙,固形臓器移植など.
  • 肺炎患者での非特異的な関連臨床所見
  • 下痢,その他の胃腸症状
  • 混迷
  • 比較的徐脈
  • 低ナトリウム血症
  • 肝酵素上昇
  • BUNおよびクレアチニン上昇
診断
  • 培養(特定の培地を必要とする)
  • 検出方法:抗原アッセイ,直接蛍光抗体法,血清学的検査.抗原はL. pneumophila 血清型1の株のみ検出:Clin Microbiol Rev 28: 95, 2015
  • PCRは報告されているすべての種に対しtもっとも感度・特異度が高い.

分類

  • グラム陰性桿菌であり,65種以上が同定されており,その約半数が感染を起こす.
  • Legionella pneumophila(症例の60~80%を占める)
  • Ledionella longbeachei(ニュージーランドおよびオーストラリアで汚染された培養土への曝露)
  • Legionella (tatlockia) micdadei
  • Legionella wadsworthii

第一選択

  • 肺炎
  • LVFX 750mg静注/経口24時間ごと,または MFLX 400mg静注/経口24時間ごと
  • AZM 500mg静注/経口24時間ごと
  • RFP併用治療の有用性は証明されていない.
  • 感染性心内膜炎(第二選択参照)

第二選択

  • 肺炎
  • CAM 500mg静注/経口12時間ごと,またはEM 500mg~1g静注/経口6時間ごと(忍容性が低く,第一選択処方よりも効果は劣る可能性がある)
  • DOXY 100mg静注†/経口12時間ごと
  • 心内膜炎(至適治療は確定されておらず,下記にリストされているのが使用される薬剤:コメントも参照)
  • CPFX 400mg静注12時間ごと,または750mg経口1日2回,またはLVFX 750mg静注1日1回
  • AZM 500mg1日1回経口/静注
  • EM 500mg経口/静注6時間ごと+RFP 600~1200mg経口2回に分割

(†:日本にない剤形)

治療期間

  • レジオネラ肺炎で免疫正常な患者では,臨床的反応に応じて静注/経口治療を7~10日が適当.
  • 免疫不全患者では,臨床的反応に応じて静注/経口治療を14~24日が推奨される.
  • 治療期間は確定していないが,最低6週の治療が推奨され,5ヵ月までの治療が行われてきた(Clin Micro Rev 14: 177, 2001)が,このような長期間の治療の必要性を支持するデータはない.

コメント

  • 心内膜炎について
  • 自己弁または人工弁の感染性心内膜炎のまれな病原体である.感染症専門医へのコンサルテーションが推奨される.
  • Legionella属による心内膜炎では,血液培養倍体での特殊な操作により菌の分離が可能であるから,顕微鏡検査を行う担当者に,心内膜炎の想定を知らせておく.
  • 特別な培地でゆっくり増殖
  • 外科的に摘出した組織のPCRまたは16S RNAシークエンシングで検出可能
  • 治療推奨は散発的な症例報告に基づく.
  • 大部分のフルオロキノロン(GemifloxacinMFLX)はin vitroで活性.
  • STも同様に有効だが,有効性を支持するデータが少ない.
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2025/12/08