日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Legionella   (2023/11/21 更新)


臨床状況/診断

臨床状況
  • 市中肺炎または院内肺炎.肺外感染(たとえば心内膜炎)もあるがまれ.
  • 咳があっても,肺炎の患者は非膿性の粘液性痰を少量しか喀出しないことがある.
  • リスク因子:慢性肺疾患,喫煙,固形臓器移植など.
  • 肺炎に伴う臨床所見(非特異的だが):
  • 下痢,その他の胃腸症状
  • 混迷
  • 比較的徐脈
  • 低ナトリウム血症
  • 肝酵素上昇
  • BUNおよびクレアチニン上昇
診断
  • 培養(選択培地)またはPCR:複数の血清型を検出.
  • 抗原アッセイ,直接蛍光抗体法,または血清学的検査(L. pneumophila 血清型1の株のみ検出)(診断についての総説はClin Microbiol Rev 28: 95, 2015参照)

分類

  • グラム陰性桿菌
  • Legionella pneumophila(症例の60~80%を占める)
  • Legionella (tatlockia) micdadei
  • Legionella wadsworthii
  • およそ40種が同定されているが,ヒトの疾患に関与するものはまれである

第一選択

  • 肺炎
  • LVFX 750mg静注/経口24時間ごと,または MFLX 400mg静注/経口24時間ごと
  • AZM 500mg静注/経口24時間ごと
  • RFP併用(多くの患者で薬物相互作用が主要な問題となる)またはAZM+フルオロキノロン系薬併用の有用性は証明されていない.
  • 心内膜炎(コメント参照)

第二選択

  • 肺炎
  • CAM 500mg静注/経口12時間ごと,またはEM 500mg~1g静注/経口6時間ごと(忍容性が低く,第一選択処方よりも効果は劣る可能性がある)
  • DOXY 100mg静注†/経口12時間ごと
  • 心内膜炎(コメント参照)
  • DOXY 200mg1日2回経口/静注†
  • EM 500mg経口/静注6時間ごと+RFP 600~1200mg経口2回以上に分割
  • CPFX 400mg静注12時間ごと,または500mg経口1日2回

(†:日本にない剤形)

抗微生物薬適正使用

  • 治療期間
  • レジオネラ肺炎で免疫正常な患者では,臨床的反応に応じて静注/経口治療を7~10日が適当.
  • 免疫不全患者では,臨床的反応に応じて静注/経口治療を14~24日が推奨される.
  • 治療期間は確定していないが,5ヵ月までの長期治療が行われてきた.

コメント

  • 心内膜炎について
  • Legionella属による心内膜炎では,血液培養倍体での特殊な操作により菌の分離が可能であるから,顕微鏡検査を行う担当者に,心内膜炎の想定を知らせておく.
  • 感染症専門家へのコンサルテーションが推奨される.
  • Legionella属の一部は,心内膜炎の原因として報告されたことがある
  • 文献に報告された患者のほとんどは,薬物治療に加えて弁置換出術も受けている
  • 治療推奨は散発的な症例報告に基づく.
  • 大部分のフルオロキノロン(GemifloxacinMFLX)はin vitroで活性.
  • STも同様に有効だが,有効性を支持するデータが少ない.
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2023/11/20