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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
ロッキー山紅斑熱
(
2021/9/28 更新
)
ロッキー山紅斑熱,リケッチア性疾患
臨床状況
ロッキー山紅斑熱(RMSF)はダニが媒介するリケッチア性疾患であり,致命的になるおそれがある.米国で発症率が最も高いのは南東部および中南部の州.
総説:
MMWR Recomm Rep 65: 1, 2016
.
所見および症状
発熱,発疹(95%),点状出血斑(40~50%).発疹は四肢遠位から体幹へ広がる.50%以上の患者では罹患後最初の72時間には発疹がみられないことがある.
アリゾナの部族地域での臨床像はより潜行性であり,多くの患者は発熱,発疹,血小板減少症を示さない:
Clin Infect Dis 60: 1650, 2015
;
Clin Infect Dis 60: 1659, 2015
).イヌダニへの曝露の有無が診断の助けになる.
エールリヒア症に類似する.発疹のパターンが診断上有用.
死亡率が高いため早期治療が必要.RMSFを治療しなかった場合の死亡率は25~70%(
MMWR Recomm Rep 65: 1, 2016
)
死亡のリスク因子:年齢>60歳,治療の遅れ,DOXY使用なし
流行地域でダニへの曝露があれば,DOXYによる経験的治療を早期に始めたほうがよい
発疹がないという理由で治療を遅らせてはならない.発熱,発疹,ダニ咬傷歴(ダニ咬傷は痛みがない)がある患者はわずか3~18%で,短期間で死亡する例の多くは小児.
MMWR 49: 885, 2000
.
RMSFが疑われる小児に対してDOXY使用をためらってはならない(第一選択のコメントを参照).
臨床診断:
流行地域での発熱
ダニ咬傷があった,またはあった可能性がある
発疹あり/なし
診断は皮膚生検での免疫組織学,連続抗体価で確定.
小児11例,成人8例におけるRMSFによる髄膜脳炎(
Clin Infect Dis 71: 188, 2020
).Starry sky徴候(多発性の点状浸潤領域またはT2高信号域)が小児では全例のMRIでみられたが,成人にはみられなかった
病原体
R. rickettsii
(カクマダニ)
イヌカクマダニ(Dermacentor variabilis tick),メス
DS: 背甲板(ornate dorsal shield)
イヌカクマダニ(Dermacentor variabilis tick),A:オス,B:メス
黄色矢印:背甲板,赤矢印:festoons
第一選択
DOXY
100mg経口または静注†1日2回・7日,または体温が正常化してから2日(妊婦には使用しない):
特に重症例では,初期用量を200mg静注†または経口12時間ごと・72時間にし,その後100mg静注†または経口1日2回を推奨する専門家もいる.
小児患者に対するテトラサイクリン系薬の使用について,8歳未満の小児では,薬剤とその着色分解物質がエナメル質に沈着することにより,歯の永久的な変色が起こることが報告されていたため,従来は制限されていた.DOXYは,他のテトラサイクリン系薬にくらべカルシウムへの結合力が弱く,最近の比較データからは,8歳未満の小児で目に見える歯の変色やエナメル質形成不全を引き起こす可能性は低いことが示唆されている.
米国小児科学会は現在,
DOXYは短期間(≦21日)ならば,患者の年齢にかかわらず安全に投与できる
と推奨している(
AAP Red Book 2018
;
J Pediatr 166: 1246, 2015
).
妊婦:
CP
50mg/kg/日経口4回に分割・7日.適切な時間内に
CP
が入手できないことがある.そうした場合には,胎児の骨や歯の異常,母親の肝障害というリスクはあるが,DOXYの使用が正当化される.
(†:日本にない剤形)
第二選択
CP
50mg/kg/日経口4回に分割・7日
コメント
流行地域では,発熱,発疹,ダニ咬傷歴のある患者では本症を疑う必要がある.
死亡率が高いため,DOXYの経験的使用が合理的:
MMWR 49: 885, 2000
.
流行地でも
R. rickettsii
を保有するカクマダニは1%未満のため,ダニ咬傷のみの場合は予防投与は適応にならない.
RMFSについての一般的な文献:
MMWR Recomm Rep 65: 1, 2016
.
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2021/09/22