日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

複雑性尿路感染症-ESBL産生E. coli  (2025/12/02 更新)
複雑性尿路感染症,耐性E. coli,管理


臨床状況

  • 複雑性尿路感染症で,以下のようなESBLグラム陰性感染のリスクがある場合:
  • ESBLグラム陰性細菌に以前に罹患したことがある,あるいは定着があった.
  • 最近の抗菌薬曝露,特にセファロスポリン系,キノロン系
  • 医療施設での曝露
  • アジア,アフリカ,中東など,定着率が高い地域への渡航

診断/病原体

診断
  • ほんんどの臨床検査施設は,抗菌薬耐性を確認するための感受性検査を行っているが,FOMに関する感受性検査を行っている施設はほとんどない.
病原体
  • 基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生グラム陰性桿菌,もっとも多いのは:

第一選択

経験的治療
  • ESBL産生E.coli分離株のリスクが高いが,抗菌薬感受性は不明な場合
  • 膀胱炎(下部尿路感染症,無熱,臨床的に安定)
  • FOM 3g経口*1日おき・3回(E. coliに対してのみ確実に活性がある)
  • 腎盂腎炎(上部尿路感染症)
特異的治療
  • 薬剤に対する感受性が明らかになっているか,または可能性が高い
  • 膀胱炎:
  • ST 2錠1日2回・3日
  • CPFX 250mg1日2回,または徐放錠†500mg24時間ごと・3日
  • LVFX 250mg24時間ごと・3日
  • FOM 3g経口*1日おき・3回(E. coliに対してのみ確実に活性がある)
  • 腎盂腎炎(上部尿路感染症)
  • ST 2錠経口1日2回・7~10日
  • CPFX 500mg経口/400mg静注1日2回・7日
  • LVFX 750mg経口/静注24時間ごと・7日
  • *:FOM 経口は米国ではFosfomycin tromethamineであり,日本のホスホマイシンカルシウムとは異なる.

(†:日本にない剤形)

第二選択

経験的治療
  • ESBL産生E. coli分離株の高リスク
  • 膀胱炎(下部尿路感染症,無熱,臨床的に安定):
  • AMK 15mg/kg静注1回
  • GM 5mg/kg静注1回
  • TOB 5mg/kg静注1回
  • 腎盂腎炎(上部尿路感染症)または重症化リスクの高い膀胱炎:
  • MEPM 1~2g静注8時間ごと
  • CAZ/Avibactam 2.5g静注(2時間以上かけて)8時間ごと
  • FOM 6g静注8時間ごと
  • GM 5mg/kg静注1日1回
  • TOB 5mg/kg静注1日1回
  • Temocillin 2g静注12時間ごと(ベルギーや英国では入手可能だが,米国では入手できない)

治療期間

  • 上記処方参照
  • 上部尿路感染症では,菌血症がある場合でも,7日の抗菌薬治療を行うことが多い.
  • 一部のガイドラインでは,STを使用する場合には14日治療が推奨されているが,16歳以上の女性を対象とした1つの研究では,7日治療も同様に有効である可能性があった(Am J Med 130: 842, 2017参照).
  • 発熱した尿路感染症男性患者では14日治療を考慮する:尿培養陰性,治療終了から1日目から6週間後まで発熱およびその後の抗菌薬治療がないこと,尿培養陰性を複合エンドポイントとした1つの試験において,14日間の治療は7日間の治療よりも優れていることが示された.14日間群における有用性の大部分は,治療終了時の陽性培養数の減少によるものだったが,臨床転帰にも有意な差がみられた(Clin Infect Dis 76: 2154, 2023).

コメント

  • FOMFOMの抗菌感受性検査はルーチンには行われていない.患者が以前にFOMの多大な曝露を受けているようなことがない限りは,ほとんどのE. coli分離株はFOMに感性である.KlebsiellaまたはProteusに対しては,FOMは確実な活性はない.
  • Sulopenem Etzadroxil-Probenecid,PivmecillinamおよびGeptocidanは民間の薬局では入手が困難である.
  • AMPC/CVA+CFIXは,in vitroでESBL産生E. coli分離株に相乗効果があるようだが,治療有効性を確認する臨床研究は行われていない:Chemotherapy 67: 261, 2022.
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2025/12/01