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日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版
旅行者下痢症
(
2022/2/22 更新
)
旅行関連下痢症,胃腸炎
臨床状況
2週間の旅行での旅行者下痢症(TD)の発生率は10〜40%である.ほとんどの症例は腸管内病原菌によって引き起こされる(
J Travel Med 24(suppl_1): S57, 2017
).TDのための抗菌薬による化学的予防は,一般的には推奨されない.
2020年CDCイエローブックの推奨
を参照.
治療の基準はTDの重症度による.重症度は以前は排便の頻度を基準としていたが,現在では機能的カテゴリーに基づく.
軽症TD:活動に影響がなく忍容可能(以前の基準では24時間に1~2回の軟便)
中等症TD:苦痛を伴う,または活動に影響あり(24時間に3~5回の軟便)
重症TD:動けない状態,赤痢(血性下痢)(24時間に6~9回を超える軟便)
治療上の検討事項:
軽症のTD:通常,Bismuthまたはロペラミドが軽症のTD治療に有効である.
中等度から重度TD:AZM,Rifamixin,フルオロキノロン系薬を用いてもよい.
CPFX 500mg経口1日2回・3日,またはLVFX 500mg経口1日1回・3日.
AZMは,とくに
Campylobacter
が多い地域では現在第一選択として推奨されない(
J Travel Med 24(suppl_1): S57, 2017
).
総説として,
JAMA 313: 71, 2015
;
N Engl J Med 370: 1532, 2014
;
Clin Microbiol Infect 21: 744, 2015
;
Am J Gastroenterol 111: 602, 2016
;
J Travel Med 24(suppl_1): S57, 2017
参照.
感染後に重大な後遺症が残る患者の割合は不明だが,実際にそうした例があることは確かであり(
J Travel Med 20: 303, 2013
),より重症で長期の疾患につながる.
病原体
急性:
腸管出血性
E. coli
(ETEC)または
腸管凝集性
E. coli
(EAEC)(60%)
Shigella属
Salmonella属
Campylobacter属
その他:
Aeromonas
,
Plesiomonas
,さらにウイルス(
ノロウイルス
)および寄生虫(
アメーバ症
)
C. difficile
持続性/慢性(>14日と定義される):
サイクロスポーラ属
,
クリプトスポリジウム属
,
Giardia属
,
Cystoisospora属
(主にHIV陽性患者)
感染後過敏性腸症候群
第一選択
成人:
AZM
1000mg・1回(または消化管副作用を軽減するため500mg12時間ごと・2回)または500mg24時間ごと・3日
小児:
AZM
10mg/kg/日1回または3日
CTRX
50mg/kg/日静注1日1回・3日
成人および小児:
ロペラミドを追加:4mg経口1回,その後軟便があるたびに2mg(最大16mg/日まで)
第二選択
耐性パターンは旅行した地域によって異なることを考慮する必要がある.多くの地域で,フルオロキノロン系薬は現在第一選択としては推奨されない.
CPFX
500mg経口1日2回・3日
LVFX
500mg24時間ごと・3日,または
OFLX
300mg経口1日2回・3日,または
MFLX
400mg
▼
(おそらく奏効する)
リファキシミン
200mg経口1日3回・3日(吸収されないため,非侵襲性の出血性
E. coli
に対してのみ)または
Rifamycin SV
2錠1日2回・3日(
E. coli
に対して成人でのみ.発熱や血性下痢がある場合には使用しない)
(▼:FDA未承認)
抗微生物薬適正使用
特に東南アジア,インド,ネパールではフルオロキノロン系薬耐性の
Campylobacter
が増加しているため(
JAMA 313: 71, 2015
),AZMが一般に推奨される.
インドでは,ETECやEAECを含む腸内細菌のフルオロキノロン系耐性が増加している.フルオロキノロン系薬による自己治療は,多剤耐性の獲得につながることが報告されている(
Clin Infect Dis 60: 837, 2015
;
Clin Infect Dis 60: 847, 2015
).
多剤耐性微生物の増加ため,単剤処方を用いること,およびフルオロキノロン系薬は避けることが推奨されている.
コメント
AZMは妊婦または妊娠の可能性がある女性での第一選択である.
多くの抗マラリア薬もQTを延長させるため,心疾患のある旅行者では注意を要する.
小児用懸濁液は,調製後は要冷蔵で使用期限が短いため,旅行には不向きである.調製できるのは薬剤師のみ.
ロペラミドは発熱・血便があるとき(たとえば赤痢)には使用しない.
CPFXおよびリファキシミンは非侵襲性の病原体に対し同等の有効性がある(
Am J Trop Med Hyg 74: 1060, 2006
).
リファキシミンは>12歳の小児に対して承認されている.副作用はプラセボと同等.妊娠時危険区分C(妊婦での十分な研究は行われていない).
小児および妊婦ではフルオロキノロンは避ける.
旅行者下痢症の予防的治療はルーチンには適応されない.
2020年CDCイエローブックの推奨
を参照.
現在の推奨は,軟便が始まったときにCPFX 500mg経口1回+ロペラミド.
中断できない重要な短期旅行の場合や,免疫不全患者,CD4<200のHIV患者に対しては,CPFX 500mg経口1日1回を考慮.
最初の3週間の別の選択肢として(現地での活動が必須なら):リファキシミン 200mg経口1日2回(
Ann Intern Med 142: 805, 2005
;
Ann Intern Med 142: 861, 2005
).ただし,こうした予防的使用をFDAは承認していない.
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2022/02/17