日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

アメーバ症,Entamoeba histolytica  (2025/04/15 更新)
Entamoeba histolytica,下痢,アメーバ性赤痢,無症候性,肝膿瘍,アメーバ症


臨床状況

  • 糞口感染であり,性交渉中に糞便に曝露することで感染することもある.
  • 多様な臨床症状
  • 無症候性嚢子(シスト)排出者.シストは侵襲性ではなく,症状を引きおこすことはない.
  • ■未知のシスト外の刺激により腸に侵入する栄養型となる.
  • 発症
  • ■下痢または赤痢,軽症~中等症の疾患
  • ■重症の腸疾患,肝膿瘍あるいは他の腸外疾患.腸管外の疾患では血清学的に陽性
  • ■侵襲的なアメーバ性腸炎(赤痢,腸炎,虫垂炎,中毒性巨大結腸症,アメーバ腫)
  • ■腸管外の侵襲性アメーバ症(肝膿瘍,腹膜炎,肺膿瘍,皮膚および性器のアメーバ性病変)
  • ■大腸炎は潰瘍性大腸炎に類似する.アメーバ症は大腸の腺癌に類似する.

診断/病原体

診断
  • E. histolyticaの嚢子(シスト)は,E. histolyticaが貪食された赤血球(赤血球貪食)とともに観察されないかぎり,便の顕微鏡検査では,非病原性の E. disparE. bangladeshiE. moshkovskii(下痢に関連)との鑑別ができない.
  • E. histolyticaは便抗原検査でも他のアメーバから鑑別できるが,できれば便PCRのほうがよい.
  • 血清学検査(EIA)でのコンバージョンは7~10日遅れるため,症状発症直後の最初の検査で陰性であっても再検査を行う.
  • 血清学検査は無期限に陽性となることがあり,蔓延地域出身者では,無症候が過去の感染を示している場合もある.
  • 侵襲性の腸または肝病変がなければ血清学は陰性になる.
  • 肝膿瘍:吸引した病変に対する抗原検査および/またはPCRが有用である(もし可能であれば).PCRは抗原検査にくらべ,感度がより高い.
  • アメーバ性膿瘍が臨床的にうたがわれ,他の病因は可能性が低いか除外される場合には,診断のための吸引よりも経験的治療を行う方が望ましい
病原体
  • Entamoeba histolytica

第一選択

  • 無症候性シスト排出者
  • 下痢/軽度の赤痢
  • その後,パロモマイシン 25~35mg/kg/日経口3回に分割・7日,またはIodoquinol 650mg経口1日3回・20日.腸内シストを除去.
  • 重症の腸疾患,肝膿瘍または他の腸外疾患
  • その後,パロモマイシン 25~35mg/kg/日経口3回に分割・7日,またはIodoquinol 650mg経口1日3回・20日.腸内シストを除去.
  • 経口薬が投与できない理由がなければ,吸収のよい経口メベンダゾールが望ましい
  • 切迫破裂の徴候がある,5日以内に臨床反応がみられない,あるいは診断が不確実な場合は,経皮的カテーテルによる肝膿瘍ドレナージ(吸引ではない)が妥当かもしれない.
  • 左葉に大きな膿瘍(>10 cm)がある患者は,通常はドレナージを行うよりも治療を試みるべきである.
  • まれな胸水または心嚢液貯留に対する吸引
  • 妊婦
  • 重症疾患の妊婦ではMNZを使用する.
  • ヒトでの研究では,(確実な立証はできないが)リスクがないことを示唆している.動物での毒性に関するエビデンスはない.
  • ACOGは妊婦での使用を認めている.
  • クロロキン(600mg 1日1回・2日,その後300mg1日を3週間)は,肝膿瘍の治療においてMNZの代替薬として許容されるが,有効性は低い.

第二選択

  • 無症候性シスト排出者
  • 多くの場合入手しにくい
  • Nitazoxanide(500mg1日2回・10日),小規模症例シリーズで有効だった

コメント

  • Diloxanide,Iodoquinol,パロモマイシンの供給元は供給元一覧を参照.
  • Secnidazole,Ornidazoleをアメーバ症に使用できる国もあるが,secnidazoleは膣症にのみFDAの認可を受けている.
  • 病変<10cmならシスト吸引は無効.
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2025/04/14