日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

サイクロスポーラ症  (2025/10/28 更新)
Cyclospora cayetanensis による胃腸感染症


臨床状況

  • 水様下痢(大量で長引いたり,一時弱まったり再発することもある),多くは他の胃腸症状を伴い(たとえば,食欲不振,体重減少,悪心,腹部けいれん,膨満),軽度の発熱を伴うこともある.
  • インフルエンザ様の非特異的な前駆症状が下痢に先立つことがある.
  • 倦怠感が長引くことがある.
  • 再発と寛解を繰り返すことがある
  • HIVおよび免疫不全患者では,まれに腸管外疾患を呈することがある:胆管疾患,Guillan-Barre,反応性関節炎,眼の炎症.
  • 世界中で,特に夏に多くみられ,米国,カナダでも毎年流行している(輸入食品,特にバジル,コリアンダー,サラダの材料,ラズベリーによる).Emerg Infect Dis 31: 256, 2025参照.
  • 流行地域の住民,特に小児では,無症候性感染のこともある.
  • 外部環境でのみ増殖し,ヒト宿主では増殖しない.

病原体/診断

病原体
診断
  • 通常の虫卵および寄生体の検査では検出できないことがある.
  • 診断には,改良された抗酸菌染色,紫外線蛍光顕微鏡による自家蛍光,あるいはPCRが必要となる.
  • サイクロスポーラはPCR(ほとんどの市販のマルチプレックス糞便パネルに含まれている)でのみ検出され,糞便抗酸菌染色では検出できないが,その臨床的意義は不明.

第一選択

  • 免疫正常患者:ST 2錠経口1日2回・7~10日
  • 小児患者,生後≧2ヵ月~18歳:トリメトプリム8~10mg/kg+スルファメトキサゾール40~50mg/kg/日経口2回に分割・7~10日.
  • 免疫不全患者(HIV陽性):ST 2錠経口1日4回・最低3~4週.
  • 高度の免疫不全患者ではST 2錠・週3回による長期の抑制治療が必要とされる場合もある.

第二選択

  • 他の通常の抗原虫薬で有効な第二選択となるものはない.
  • サルファ剤に対するアレルギーがある場合:CPFX 500mg経口1日2回・7日(単一研究に基づく結果は一貫していない)
  • 限られた散発的な症例経験からは,次の薬剤は無効であることが強く示唆される:アルベンダゾール,トリメトプリム(単剤として使われた場合),AZM,ナリジクス酸,チニダゾール,MNZ,Quinacrine,TC,DOXY,Diloxanide furoate.

治療期間

  • 上記処方参照.

コメント

  • 保有宿主動物はない.
  • 塩素やヨウ素では殺虫できない.
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2025/10/28