日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

Salmonella  (2024/04/16 更新)
S. typhi,S. paratyphi,S. choleraesuis, S. enterica, S. enterica serovers


臨床状況

  • 食物(または飲料水)が原因となり,しばしば集団発生を起こす.
  • 免疫正常患者での軽症~中等症の胃腸炎では,感染は自然治癒するため,治療は推奨されない.
  • 下記の推奨は,重症患者,免疫不全患者,合併症や侵襲性感染のリスクのある患者(低年齢の小児,高齢者)に対するものである.
  • 臨床検査標準協会(CLSI)は,CPFXの感受性に関する新たな解釈上のブレイクポイントを設定した(Clin Infect Dis 55: 1107, 2012).
  • 感受性株:MIC<0.06μg/mL
  • より高いMIC(0.12~1.0:中等度耐性,>2.0:耐性)はgyrA,gyrBの変異か,プラスミドを介するフルオロキノロン耐性と関連している.
  • 市販の抗菌薬感受性検査は微量液体希釈法をテストパネルに組みこんでいないため,CPFX感受性低下と高レベル耐性を検出するためには,CPFX Eテストか,CPFX(領域直径>31mmなら感受性)とナリジクス酸の両方によるディスク拡散法が推奨される.
  • 治療が必要な場合は,分離株が検出された地域に従った治療を行うこと.
  • とくに南アジアでは,多剤耐性(MDR)あるいは超多剤耐性(XDR)分離株が出現している.
  • 臨床症候群:
  • Salmonella Typhi
  • Salmonella Parathyphi

病原体

  • Salmonella enterica serovars
  • Salmonella Typhi
  • Salmonella Parathyphi
  • Salmonella Choleraesuis
  • Salmonella Typhimurium

第一選択

  • CPFX 400mg静注または500mg経口1日2回,またはLVFX 750mg静注または経口1日1回・7~14日(広範囲XDRのSalmonella Typhi あるいは腸チフスが疑われる場合は不可)
  • CTRX 2g静注1日1回・7~14日(フルオロキノロン耐性が多いアジアやその他地域への旅行歴がある場合は,こちらが推奨される)
  • 重篤の場合,またはXDRが疑われる場合:MEPM 1~2g静注8時間ごと(または他のカルバペネム系)

第二選択

  • AZM 1g静注または経口1回,その後500mg静注または経口1日1回・5~7日
  • 上記が利用できない場合は,CP 2~3g静注または経口4回に分割・14日
  • CFIX 20~30mg/kg/日経口2回に分割・7~14日(臨床検査での経験はさまざまであり,他の薬剤と同様な有効性はないかもしれない)
  • in vitroで感受性が確認できれば,ST(トリメトプリムとして)8~10mg/kg静注/経口2~3回に分割
  • 重症:デキサメタゾンを加える.

抗微生物薬適正使用

  • 合併症のない胃腸炎に対する抗菌薬治療は保菌を長期化させることがある.

コメント

  • S. typhiによる重症疾患(たとえば腸熱)では,デキサメタゾン初回3mg/kg静注,その後1mg/kg静注6時間ごと・48時間の併用を考慮する(N Engl J Med 310: 82, 1984).
  • 免疫不全患者には,より長期の治療(たとえば,14日以上)が推奨される.
  • 再発の可能性:CPでは10~20%,フルオロキノロン系やCTRXでは1~6%と推定される.
  • 慢性の保菌は1~6%でみられ,とくに胆石患者にみられる.
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2024/04/15