日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

胃腸炎-Salmonella S. typhi 以外)  (2024/03/26 更新)
特異的治療,Salmonella (non-typhi)胃腸炎


臨床状況

  • 腸チフス以外のSalmonella胃腸炎.
  • 食物または水を媒介.
  • 発熱71~91%,血便の病歴34%.
  • 下痢,悪心,嘔吐,発熱,腹部の痙攣,体質性の症状.臨床症状は他の病因による胃腸炎と区別できない.
  • 菌血症/侵襲性疾患は5%以下.

病原体

  • Salmonella Enteritidis
  • Salmonella Newport
  • Salmonella Typhimurium

第一選択

  • 細胞内移行性のよい薬剤を用いること:たとえば,ST,フルオロキノロン系薬,第3世代セファロスポリン薬
  • アミノグリコシド系薬はマクロファージ内には移行しないため使用してはならない.
  • 初期治療は輸液と電解質補給.抗菌薬ではない.
  • 海外旅行後の感染ではない場合:
  • CPFX 500mg経口1日2回,または
  • LVFX 500mg経口1日1回
  • 治療期間:7~10日(免疫不全患者では14日)
  • 海外旅行後の感染の場合:
  • AZM 500mg経口1日1回,または
  • CTRX 2g静注24時間ごと
  • 治療期間7日(免疫不全患者では14日)

第二選択

  • AZM 500mg経口1日1回・7日(免疫不全患者では14日)
  • ST 2錠経口1日2回.治療期間は不明だが,10~14日とするのが合理的.ST耐性についてはコメント参照.
  • CTX 2g静注8時間ごと(可能な場合)
  • MEPM 1~2g静注8時間ごと(あるいはIPM/CSErtapenemなどの他のカルバペネム系薬剤)

抗微生物薬適正使用

  • 地域の感受性パターンと直接抗菌薬検査の結果に従って治療を行う.
  • 診断検査とは別に培養によって診断した場合には,抗菌薬感受性を検査するためにフォローアップの培養リフレックス検査を行うべきである.
  • 免疫正常者では自然治癒するため,重症疾患でなければ一般的には治療は不要
  • 以下のような条件のいずれかに当てはまれば治療の適応:
  • 年齢<1歳,または>50歳
  • 免疫不全状態(HIV,移植,ステロイド,がん,肝硬変,リンパ増殖)
  • 血液透析
  • 動静脈瘤,血管移植,人工関節
  • 菌血症
  • 異常ヘモグロビン症
  • 発熱と重度の下痢(9~10回/日)で入院中

コメント

  • 抗菌薬治療により急性サルモネラ症後のSalmonella便中排泄が長引くことがある.
  • 現在までの調査結果はCDCの全米薬剤耐性監視システム(NARMS)でみられる.
  • 耐性
  • 地域によっては,STおよびCP耐性が増加している.
  • CDC多剤耐性Salmonella Newport感染についての旅行注意およびメキシコでの症例多発(ほとんどはCTRX感性,全般的にはAZM,CPFX,ST耐性)(MMWR 68: 713, 2019).
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing↑ page top
2024/03/25