日本語版サンフォード感染症治療ガイド-アップデート版

ジアルジア症  (2024/02/06 更新)
ジアルジア胃腸感染症


臨床状況

  • Giardia duodenalisは,現在CDCとASM(米国微生物学会)が命名した種名として知られているが,G. lambliaおよびG. intestinalisと同意である.
  • ジアルジア症は,食物および水を汚染するディプロモナス鞭毛原虫により引き起こされる.
  • 遅発性に発症する急性下痢や長期にわたる腹痛,軟便,膨満,体重減少を伴う消化不良を引き起こすことがある.
  • 潜伏期間は多くの場合>1週間.発症が遅発性である点で,細菌性の旅行者下痢症とは異なる.
  • 患者が難治性の場合,背景疾患として低γグロブリン血症,IgA欠損やHIVを考慮する.

診断/病原体

診断
  • 診断は通常糞便中の抗原検出検査,糞便蛍光抗体検査,IF検査(直接蛍光アッセイ[DFA])によるが,市販の糞便マルチプレックスPCRパネルが最も感度が良い:BMJ 355: i5369, 2016
  • 十二指腸検体からも検出されることがある
  • 血清学検査は不要
  • 研究施設での無菌培養が可能
  • 耐性についての特異的な遺伝子マーカーはなく,in vitro感受性検査もない.
病原体
  • Giardia duodenalis
  • Giardia lamblia および Giardia intestinalis としても知られている

第一選択

  • 小児:年齢≧3歳なら,50mg/kg経口1回(最大2g)

第二選択

  • MNZ 250mg経口1日3回・5~7日(消化管副作用は多い)
  • 小児:15mg/kg経口1日3回に分割・5~7日(最大250mg/日).1歳未満の小児でのデータがある唯一の薬剤のため,望ましい.
  • 小児:
  • 年齢1~3歳:100mg懸濁液経口1日2回・3日
  • 年齢4~11歳:200mg懸濁液経口1日2回・3日
  • 小児:2mg/kg経口1日3回・5日(最大100mg/回)
  • Furazolidone 100mg経口1日4回・7日
  • 免疫不全患者あるいは難治例では,まずQuinacrine 100mg経口1日3回・5日を試みてもよい.併用治療の検討が必要な場合もある(J Travel Med 29: taab120, 2021
  • 支持するデータは少ない.
  • ニトロイミダゾールで再治療

コメント

  • 再燃が確認された場合(3回の糞便検査で病原体が検出できなくなった後でも症状は持続することがある),別の系統の薬剤で再治療を行う.おそらくQuinacrineがもっとも良い:J Infect Dis 215: 946, 2017Emerg Infect Dis 20: 1742, 2014.あるいはチニダゾールとアルベンダゾールの併用.
  • 症状の再燃は,再感染,寄生虫の耐性,乳糖不耐によることがある。
  • 治療失敗と乳糖不耐による持続性の下痢とを区別するために,乳糖フリー食を考慮する.
  • 治療完了後2週間をおいて,なおも病原体が存在し続けているか再検査を行う.
  • 重ねて治療が失敗する場合には,免疫不全に対する精密検査を行う(血清免疫グロブリンを含む).
  • MNZには催奇形性がないとするメタアナリシスもある.重症ジアルジア症の妊婦でパロモマイシンに反応しない場合は考慮する(Obstet Gynecol Surv 60: 386, 2005).
ライフサイエンス出版株式会社 © 2011-2024 Life Science Publishing↑ page top
2024/02/06